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    社会

    「海離れ」の象徴? 都内に続々“海のないビーチ”

    メディア局編集部 内田淑子
    • 白い砂の上で遊ぶ子どもたち。「はだしになると熱いね」と楽しそうだった(タチヒビーチで)
      白い砂の上で遊ぶ子どもたち。「はだしになると熱いね」と楽しそうだった(タチヒビーチで)


     海のない“ビーチ”が都内に相次いで登場している。東京・多摩地区にオープンしたのは、その名も「タチヒビーチ」。南太平洋のタヒチとは似ても似つかぬこの地に、いったい誰が、何のために砂浜を作ったのか。そして来場者は、海のないビーチで何を楽しんでいるのだろう。現地を訪ねた。

    SNSで「完全に騙された」

    • 敷地内には約50のテントが並ぶ
      敷地内には約50のテントが並ぶ

     JR立川駅から多摩都市モノレールに乗り換えて2駅。東京都心から約1時間で、目的の「立飛(たちひ)」に到着した。当然、潮の香りはしない。

     駅名はかつてあった航空機メーカー「立川飛行機」の略。大正時代から当地には軍用飛行場があり、その周辺に飛行機を製造する工場などが多く集まっていたという。ビーチもその跡地を活用して整備された。

     木彫りのクマが「タチヒビーチ こちらです→」と案内してくれているのに従って歩いて行くと、ヤシの木が並んだ一角があった。木々の間を抜けると、白い砂の“ビーチ”が目に飛び込んでくる。敷地面積は約6400平方メートルで、その半分ほどのエリアに人工の砂浜が整備されている。砂浜の向こうに青い海が広がっている……ように見える。実は、大きな看板に描かれたものだ。

     ビーチを開設したのは、各地で自然体験施設などを運営している企画会社「ソトイク」(本社・山梨県富士河口湖町)。広報担当の清水好実さんは、「緑がたくさんある公園もいいですが、海のゆったりとした時間も特別。街なかでそんな時間を過ごしてもらいたい」と狙いを説明する。プロデュースしたタレントの清水国明さんは、「ここにビーチができたら、みんな驚くんじゃないか」と遊び心から企画したという。

     4月末からの大型連休にプレオープンしたところ、近くの学生らがまるで海にいるような写真を撮って、画像共有サービス「インスタグラム」などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に投稿した。インスタグラムには「タヒチじゃないよタチヒだよ」「海外のビーチに来たかのような気分を味わえるところに行ってきました」「完全に(だま)された」などのコメントが並ぶ。「それっぽい」写真をおしゃれに撮って楽しんでいる様子がうかがえる。

    • ビーチの受付
      ビーチの受付
    • 木彫りのクマが、立飛駅からビーチへの道を案内してくれる
      木彫りのクマが、立飛駅からビーチへの道を案内してくれる

    食材を持ち込んでバーベキュー ビーチスポーツも

     このタチヒビーチは、ワンドリンク付きで入場料300円(小学生150円)。バーベキューをする人は、炭など必要な機材がついて1500円(同750円)だ。

     取材時に来ていた女性4人のグループは、「食材を自分たちで持ち込めるのがいい。好きなものだけ食べられるし、コスパ(コストパフォーマンス)がいいと思う」「みんなでスーパーに寄って買い物するのも楽しかった」などとバーベキューを満喫。八王子市から来たという女子大生たちは、「本当は海に行きたかったけど、気分だけでも味わいたいと思って来た」「波の音も聞こえます!」と盛り上がっていた。

     冷房の利いた更衣室やバスケットボールのゴールもあり、砂浜ではビーチフラッグやビーチバレーなどのスポーツも楽しめる。この夏はフラダンスなどのイベントも予定されている。

    新宿駅ビル屋上にもビーチリゾート

    • ビルの屋上とは思えない雰囲気(リクリエーションズ提供)
      ビルの屋上とは思えない雰囲気(リクリエーションズ提供)
    • デザインにこだわった内装で、新宿にいることを忘れてしまいそう(リクリエーションズ提供)
      デザインにこだわった内装で、新宿にいることを忘れてしまいそう(リクリエーションズ提供)

     都内有数の大繁華街・新宿にも“ビーチ”が登場している。

     駅ビル「ルミネエスト新宿」の屋上にある「TOKYO SKY RESORT WILD BEACH SHINJUKU」は、バーベキューを楽しめるビアガーデンで、コンセプトは「スタイリッシュバカンス」だ。白砂のビーチにウッドデッキやパラソルが並ぶ光景はリゾート感いっぱいで、こちらもインスタグラムで店名を検索すると、きれいな写真がたくさん投稿されていた。

     同店を運営する「リクリエーションズ」(東京都渋谷区)の原田康弘さんは、「デザインに力をいれなければ、感度の高い若い女性たちに喜んでもらえない」と話す。「ファッションと同じで、若い人たちは『ビーチテイスト』は楽しみたいけれど、海に入って泳ぎたいわけじゃない。海に行かなくても、青い空と白い砂、デザインの良い空間があればテンションが上がる」と人気の理由を分析している。

     8月20日には、「ナイトプールはもう古い、究極のフォトジェニック」「汚れない『エアープール』初登場!」を売り文句に、女性限定のパーティーを開催するという。

    10代は4割が「海にあまり親しみを感じない」

    • 日本財団「海と日本に関する意識調査結果概要」より
      日本財団「海と日本に関する意識調査結果概要」より

     ビーチの雰囲気は好きでも、海に行こうとは思わない――。日本財団(東京)が今年、10代から60代の男女1万1600人を対象に行ったインターネット調査でも、若者たちの「海離れ」を裏付ける結果が出ている。

     海に親しみを感じるかどうかを尋ねたところ、10代では「あてはまらない」が42.5%にも達した(「あてはまる」は27.5%)。一方、60代では「あてはまらない」は20.1%にとどまった。

     「海に入ることが好きだ(海水浴、サーフィン、ダイビングなど)」という設問にも、10代は約4割が「あてはまらない」と回答。海水浴に行かない理由は「海で泳ぐこと自体が好きではない」「海まで距離があり、時間がかかる」などのほか、男女とも「日焼けが嫌だ」「海水や海風で、身体がベタベタするのが嫌だ」なども目立った。

     日本財団では海への理解を深めてもらおうと、体験を通して学ぶ「海と日本プロジェクト」を推進しているが、“海のないビーチ”の人気も、こうした若者たちが海に足を運ぶことにつながっていくだろうか。

     本当の海はなくても立川や新宿の“ビーチ”が非日常の空間であることは間違いない。この夏休み、予算や時間の都合でリゾート地に行けないという人は、足を運んでみてはいかがだろう。

    <公式サイト>

    タチヒビーチhttp://www.tachihi-beach.com/
    TOKYO SKY RESORT WILD BEACH SHINJUKUhttp://wildbeach.jp/shinjuku/

    2017年08月10日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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