(14)「スペース」瞬時に把握
スポーツ視力
今大会は準々決勝で敗退したアルゼンチンだが、3試合に出場して渋い働きを見せたのが、35歳のベテランMFベロン。第1戦のナイジェリア戦では、局面を打開する中距離パスを何度も出し、アシストも記録した。「彼は視野の広さで戦力になってくれる」。かつて所属したマンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督は、ベロン獲得にあたって、そう評価した。
ピッチに入り乱れる選手の位置を瞬時に把握し、的確なプレーにつなげるには、視覚情報の質の高さが求められる。これに深くかかわるのが、「スポーツビジョン」(スポーツに必要な視力)と視野の広さだ。スポーツビジョンには、動く物を的確にとらえる「動体視力」、「瞬間視」など8項目あるが、その中でサッカーで最も重要なのは、わずかなスペースを見つける能力である「深視力」と言われる。
東京メガネと連携し、競技選手の視力を比較研究するスポーツビジョン研究会の真下一策代表は、「選手の位置関係を立体的に認識するのが深視力。日本代表らJリーグのトップ選手と、それ以外の選手を比較すると、深視力だけが、最も開きがあった」と強調。「糸を引くようなパスを次々通す人は、位置関係を俯瞰(ふかん)できる能力にたけている」と話す。
横浜M時代、日本代表MF中村俊輔を指導した池田誠剛・現浦和アカデミーセンターコーチは、「シュンは深視力の数値が良かった。測定した先生に褒められたほど」と証言する。
情報の質を高めるには、視野の広さも欠かせない。視野は両目で180度、片目で170度が限度。物がはっきり見える範囲である「中心視野」と、ぼんやり映る「周辺視野」とがある。
真下さんは「視野が広いとは、この中心視野と周辺視野をうまく使い、周囲の状況から次のプレーを予測できること。ノールックパスはまさにこれ。パス方向を見ていないようで、その直前に周辺をちらっと見て、味方選手の動きを予測している」と指摘する。
視野を広くするには、姿勢を良くすること、足元をなるべく見ないでドリブルする技術も必要だ。前かがみになると、視野が必然的に狭くなるためだ。背筋のスッと伸びたベロンの美しいプレー姿勢は、視野を広げるのに役立っている。
深視力、視野はトレーニングで向上できる。国立スポーツ科学センターの尾崎宏樹研究員は、「南米選手のパスワークがよいのは、小さい頃からフットサルで周辺視野をうまく使い、状況を把握する能力が高いからではないか」と話す。近年フットサル人口が増えている日本。将来はベロン並みの中距離パスの名手が出てくるかもしれない。(この連載は、科学部・長谷川聖治、服部牧夫、運動部W杯取材班が担当しました)
- (14)「スペース」瞬時に把握
(7月10日) - (13)空間先取り 相手の力利用
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(6月22日) - (8)よく走る日本 あとは配分
(6月18日) - (7)重心動かず 高速またぎ
(6月18日) - (6)高速回転 3メートル以上カーブ
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(6月16日) - (4)「酸素摂取」改善 バテ防ぐ
(6月11日) - (3)減速しにくく GK泣かせ
(6月10日) - (2)1/100秒間に強く「押す」
(6月9日) - (1)本田の魔球ブレ 80センチも
(6月2日)

