アフリカ理解の好機に
アナン前国連事務総長(ガーナ出身)
国連前事務総長で、ノーベル平和賞受賞者のコフィ・アナン氏(72)(ガーナ出身)が、サッカーW杯南アフリカ大会開幕を前に読売新聞社に寄稿した。
私は大のサッカーファンだ。W杯は、各国国内で、また国境を超えて、ほかのどんなイベントにも不可能な方法で人々を結びつけ、一つにするという点でパワーを持つ。今大会はアフリカ初という点で特別だ。我々はスポーツが国々や大陸間の格差を埋め、相違を克服する手助けとなる歴史的な瞬間を目撃することになる。
欧州と南米の伝統国は今回も強いだろうが、多くの番狂わせも起こるはずだ。ブラジル、ドイツ、イタリア、アルゼンチンという毎回好成績を挙げるチームと、それ以外との差は縮まっている。アフリカの人々は今大会を南アのみならず、自分たちのW杯だと感じ、開催を誇りに思っている。本大会に進めなかった国でも、アフリカのチームを応援する無数のファンがいる。
私はアフリカ勢の活躍について、非常に楽観的だ。今や1人2人ではなく、どのポジションでも世界的な選手がいる。例えばコートジボワールには、ディディエ・ドログバだけでなく、いいFW、DF、MFがいる。難しい組に入ったが、彼らを軽視するべきでない。
ガーナも実力をフルに出せれば、決勝トーナメントに行けるだろう。マイケル・エシエンが故障で出られないのは非常に残念だ。
サッカーにおける成功は、さらに大きな教訓を与えてくれる。世界トップのリーグでプレーする多くのスターの台頭は、アフリカにはまだ多くの豊かな才能が埋もれていることを示している。
幸運を得て、自らの可能性を実現する機会を与えられれば、人々が成功できることは、サッカー界を見れば分かるはずだ。アフリカ諸国の若い人々が、自らの志を達成し、技能を発揮するのを手助けする施策がもっと必要だ。そうすれば誰もが勝者になれる。
もう一つ、サッカーから学べる教訓は、自由と交流の価値だろう。アフリカと南米のスターは、欧州でプレーすることで進歩したし、欧州のレベルも彼らによって上がった。アフリカやアジアの国々は、外国人指導者によって強くなってきた。開かれた心を持っていれば、誰もが利益を得るのだ。
サッカーだけでなく、お互いがより深く理解し合い、異なった視点から物事を考える体験をすれば、世界が、移民問題や天候の変動、貿易といった困難な問題に対処するのに役立つはずだ。
この1か月間、世界の目はサッカーにくぎ付けになる。国際サッカー連盟の加盟協会数は、国連の加盟国より多い。我々が同じように協力する精神を持てば、飢餓との戦いや、女性の社会的な役割の確立に、どれほど役立てることだろう。
今大会は大成功すると思っている。南アの人々が、大会をスムーズに運営し、誰もが素晴らしい時を過ごせるように、どれだけ頑張ってきたかを私は知っている。アフリカに先入観を持つ人々は驚くはずだ。
今大会が、アフリカの多様性、才能、可能性を世界に示す手助けになってくれることを期待する。サッカーを取り巻くエネルギーの一部が、アフリカを共に援助しようという努力――特に、気候変動、貧困、飢餓といった世界的問題への取り組みにも向けられたら最高だ。(6月11日掲載)
| コフィ・アナン氏 |
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| 1938年、ガーナのクマシ出身。62年に世界保健機関(WHO)の行政・予算担当官として国連入り。97年に第7代事務総長に就任、2006年まで務める。01年に国連と共にノーベル平和賞受賞。 |
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(6月14日)
