(5)中国、ネット…広がる市場
W杯と国際サッカー連盟(FIFA)を支える巨額のテレビ放送権料。その取引の最前線に、電通の高橋治之顧問(66)は30年以上、立ち続けている。
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W杯のテレビ放送権を巡っては2001年5月、FIFAと各国放送局の権利料取引を仲介していた電通出資のISL社(本社・スイス)が倒産。当時は、テレビ放送権バブルの崩壊とも指摘された。
高橋氏は「あれは経営の失敗。W杯放送権が無理に高騰して起こった倒産ではない」と反論する。当時のISL社長は、同社の上場計画を進め、W杯や五輪、陸上競技以外の事業にまで手を広げて失敗したという。電通はこの方針に反対し、ISLへの出資比率を49%から10%まで減らしていたため、打撃は小さかった。
ただ、FIFAの放送権料収入には穴が開いた。「その時、一肌脱いだのが電通だった」と高橋氏。役員会を説き伏せ、FIFAへの出資手続きを行った。「FIFAのブラッター会長とは、長く苦楽を共にしてきた。彼を助けるのは、理屈を超えた行動」。窮地をしのいだFIFAは、後に自ら放送権を売りさばける体制を築いて取引コストを削減するなどし、経営を持ち直した。
電通は現在もW杯放送権ビジネスに携わっている。06年、スイス企業と50%ずつの出資で、フットボール・メディア・サービス(FMS)社を設立。FIFAに現場交渉のノウハウがないアジアでは、10年と14年W杯などのテレビ放送権をFMSが独占仲介することになったと発表した。
高橋氏によると、FMSの設立は「僕が来日したブラッター会長と話し込み、2人で基本線を決めた」。FMSは、日本と中東諸国を除くアジアの28の国と地域のテレビ局を相手に、早くも総額300億円以上を売り上げた。
各国市場のうち、成長が著しいのは中国。中国中央電視台との契約額は、上海の放送局との競合の末、100億円を超えたという。今、アジア最大額の放送権市場は日本だが、「日本はもう伸ばせない。中国の人口とテレビ普及率の伸びを見れば、次の2大会分で中国がアジア最大市場になるかも」。
高橋氏は「世界全体のW杯放送権料はまだ上がる」と言い切る。テレビだけでなく、今後は携帯電話や有料ネット動画などの放送権が高額になるとも予測。“伝説の電通マン”は、W杯マネーがさらに巨大化する可能性を見いだしている。(この連載は、畔川吉永、込山駿が担当しました)(5月22日掲載)
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