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大統領よりでっかい像…アメリカ・サウスダコタ州ブラックヒルズ


米大統領4人の石像があるラシュモア山は、クレージー・ホース像の北東14キロに位置する

先住民の英雄 「顔」だけでビル8階分

 米大統領4人の顔を岩山に刻んだ観光名所、ラシュモア山。その近くで、大統領像をはるかに上回る、世界最大級の先住民の像の制作が進んでいる。現場を訪れると、ある使命のもと、もう60年も彫刻に携わっている家族に出会った。(サウスダコタ州ブラックヒルズで 飯田達人、写真も)

一家で彫って60年 完成は数十年先?


クレージー・ホースの「顔」を指さすキャスさん

 間近で見て、その大きさに圧倒された。「顔」の高さだけで、8階建てビルに相当する27メートルもある。

 「目の部分だけでおれの身長ぐらいあるし、鼻の下で雨宿りもできるさ」

 現場監督のキャス・ジオルコウスキーさん(54)が自慢げに話す。

 像のモデルは先住民スー族の英雄クレージー・ホース。馬上で前方を指さしている姿は、完成すると高さ172メートル、全長195メートルになる。大統領像(縦約18メートル、全長56メートル)より格段に大きい。

 「顔は10年前にできあがったけど、まだ全体の半分も終わっていない。完成まであと何十年かかるのか、おれにも分からないよ」とキャスさんは話す。

 巨大彫刻を彫り始めたのは、キャスさんの父親コーチャックさんだ。ポーランド移民で著名な彫刻家だったコーチャックさんは、14年がかりで1941年に完成した大統領像の彫刻にも一時期携わった。

 しかし、先住民たちは観光客誘致のため岩に刻まれた大統領像を苦々しく見ていた。もともとブラックヒルズ一帯はスー族の聖地だったのだ。ある日、コーチャックさんはスー族の族長から「我々の英雄も岩山に彫ってほしい」と頼まれた。


クレージー・ホースの全体像。一番上が顔の部分。硬い岩の爆破作業で砂煙が上がっている

 クレージー・ホースは、ジョージ・カスター将軍率いる白人の部隊を撃破したことで知られる。だが結局は白人に捕らえられ、1877年、非業の死を遂げた。

 コーチャックさんの夫人ルースさん(82)は、「白人にだまされて次々に土地を奪われた先住民たちに夫は深く同情し、彼らのために何年かかってもいいから世界一の彫刻を造ろうと決めたのよ」と語る。

 1948年に工事に着手し、82年にコーチャックさんが死去した後は、三男のキャスさんら7人の子供たちが作業を引き継いだ。

 「彫る」といっても、まずは硬い岩を爆破して砕いていく作業の繰り返しだ。徐々に火薬の量を減らして形を整え、最後に細部を電動ドリルで仕上げる。

 約1キロ離れた場所から爆破場面を見せてもらった。「ズドーン」という爆音とともに足元が揺れた。一瞬にして約500立方メートルの岩ががれきになったが、山全体から見ると、崩れたのはごくわずかだ。爆破作業は1週間に2回の割合で、さらに数年間続く。その後、腕と馬のたてがみ部分の細部に取りかかる計画だ。

 大統領像の費用は、ほとんどが連邦政府の援助だったが、ジオルコウスキー一家は、先住民の要望もあって政府の援助を拒否。観光客の入場料収入と寄付だけで工費を賄っている。

 サウスダコタ州の人口の1割近くは先住民だ。今夏行われた事業60周年記念式典には多くの先住民が出席し、一家に謝辞を述べた。

 まだ先は長いが、測量担当の五女モニークさん(48)は、「ここが先住民の新たな希望の地になる。こんなにやりがいのある仕事はない」ときっぱりと語る。

 次女の息子オースティンさん(22)も作業を手伝っており、キャスさんの引退後は、3代目の現場監督になる予定だ。コーチャックさんの壮大な夢は、一歩一歩実現に近づいている。

2008年12月12日  読売新聞)

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