北朝鮮の兵器輸出、カザフの武器商人が黒幕【バンコク=田原徳容】タイ・バンコクの空港に着陸した平壌発の貨物機から大量の北朝鮮製兵器が発見された事件で、カザフスタンの武器商人夫婦を中心とした世界にまたがる武器密売取引の実態が、タイ捜査当局への取材やAP通信の調査報道で明らかになった。 この夫婦が操る複数の企業とペーパーカンパニーが取引の実態を 事件の黒幕と見られるのが、カザフスタンで航空会社「イーストウイング」を経営するアレクサンドル・ズィコフ氏と、輸送に使われた旧ソ連製貨物機を所有するアラブ首長国連邦(UAE)の会社代表を務めるズィコフ氏の妻だ。タイで逮捕された貨物機の乗務員5人はいずれも、イーストウイングに雇用されており、昨年7月下旬、ズィコフ氏の指示でウクライナの首都キエフに集まったと見られる。5人はキエフで5か月間待機。12月初旬に北朝鮮から積み荷を空輸する仕事に出た。 一方、5人がキエフに集まった3日後、ニュージーランドに「SPトレーディング」(以下SP社)という会社が設立された。SP社は、ズィコフ氏の妻の会社から貨物機をリースしたグルジアの航空会社「エア・ウエスト」から貨物機をさらに借り受け、香港の「ユニオントップマネジメント」(以下ユ社)が12月4日、北朝鮮から「石油産業関連部品」を空輸する名目でSP社から貨物機をチャーター。その後、この貨物機が空輸を行った。貨物機の所有を隠し、取引の実態をわかりにくくする偽装工作だったとみられる。 これらの会社の設立や経営には、ズィコフ氏が深く関与している模様だ。会社設立やリース契約はすべて、5人がキエフに集結後に行われ、SP社はズィコフ氏の旧友が設立した。複雑な取引は、実際にはズィコフ夫妻とその仲間による兵器ビジネスだ。 イーストウイングは、旧ソ連製の貨物機を利用し、スーダンなど紛争国でも空輸を展開。2006年には、ソマリアの志願兵をレバノンに送り、イスラム教シーア派組織ヒズボラを支援したという。旧ソ連系の航空乗務員は「ズィコフ軍団」と呼ばれ、鉄条網と厚いコンクリート壁で囲まれた ユ社は実体のないペーパーカンパニーで、北朝鮮から空輸の仕事を受けた経路は不明だ。積み荷の送付先はイランとしか特定できておらず、取引にはウクライナや北朝鮮、イランの会社名が挙がっているが、いずれも確認できていない。 事件の背景には、ソ連崩壊で除隊となった元兵士らが、紛争国や北朝鮮などに絡む軍事ビジネスに積極関与している現実がある。ズィコフ夫妻も不正にかかわる危険と引き換えに、巨額の富を得ていると見られる。だが、5人は捜査協力を拒んでおり、実態解明には時間がかかりそうだ。 (2010年1月26日06時46分 読売新聞)
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