<速報> 測位衛星「みちびき」3号機打ち上げ
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    ポリタス編集長

    ネット時代に求められる新聞社の役割…津田大介氏(後編)

    前編から続く)

    ローカル報道を誰が担う?

    • 「地方紙がWEBになる可能性もある」
      「地方紙がWEBになる可能性もある」

    ――津田さんは「週刊朝日」のコラムにニューヨーク・タイムズについての話(※)を書いていましたね。これは大変ゆゆしき問題だと思います。その記事で、米国カリフォルニア州ベル市の事例(※)を紹介していました。私もこの話はずっと前に新聞で読んで衝撃を受けていました。「権力とは、これほど腐敗するのか」と、驚くような話です。

     その際の津田さんの文章に、一つだけ反論があるんです。地方紙の地域取材が重要だと書かれていました。私も地方の行政取材をした経験があります。もちろん地元紙は人脈も記者数も豊かですが、それでも全国紙の記者が彼らとは違う視点で記事を書くことはとても重要だと思います。多様な視点で、権力を監視することは必要ではありませんか?

    ※ニューヨーク・タイムズについて=10月7日付コラム「ウェブの見方 紙の味方」で同紙の報道について、「8月28日付日曜版からニューヨーク市中心部以外のレストランや劇場公演、アートギャラリーを紹介する記事がなくなった」と紹介。さらに同紙が、ニューヨーク州など3州の事件事故、裁判など、手間がかかるストレートニュースを減らす方針であるとし、「これは深刻な問題を(はら)む」と指摘している。

    ※ベル市の事例=米国カリフォルニア州ベル市で、地元紙が休刊するなど報道による監視が弱体化したことにより、市の事務方トップの行政官らが自らの報酬を引き上げた巨額公金横領事件。行政官は大統領の2倍近い約78万8000ドル(2010年の事件発覚時のレートで約6700万円)の報酬を受けていた。市警本部長ら行政トップ3人の年収が市の一般会計予算の1割を占める異常事態となり、行政をチェックするはずの市議らも通常の20倍の報酬を受けていた。

     確かにローカル報道においても、全国紙も入った方が良いと思います。ニューヨーク・タイムズについてのコラムは、まさに紙幅がなくて書けなかったんですけども、これからのローカル報道は我々みたいな独立メディアが、紙ではない形で乱立しながらやっていくようになるのではないかと思います。今の地方紙が強い要因のひとつは、お悔やみ欄の存在なんですね。あのお悔やみ欄のために新聞を読んでいるという人も多い。

    ――地方では特に冠婚葬祭の情報を知らないと義理を欠きますからね。

     でも、ある時期から紙ではなくてWEBになる可能性もありますよ。誰かが亡くなった情報がスマホにプッシュ通知で届くようになったら、すごく便利です。だから、地方紙でもうまくやればネット事業が成立するのではないかなと思うんですよね。地方の人口が減っているから、放っておけば購読者は減っていきます。若い人たちが、何か新しいサービスという切り口で起業してほしいです。

    新聞は地方で何ができるか

    • 「新聞空白地帯ができるのは怖いことだ」
      「新聞空白地帯ができるのは怖いことだ」

    ――そういうグループが本当に全国津々浦々でできれば、今の報道体制に代替できるかもしれませんが、ベル市のような空白地帯ができてしまうのが怖いです。

     そこが難しいところなんですよね。全国紙の中には、ストレートニュースは通信社に任せて、自分たちは調査報道に力を入れるというところもありますし。

    ――本当にそれでいいのかな、という疑問があるんです。専門記者が事実を深掘りして、巨悪を暴くのは大事なことです。でも、市政県政レベルの小さなことでも常にチェックすること自体にも価値はあると思います。

     そう考えると、新聞のやれることはまだまだありますよ。たとえば、グルメサイトですが、あれは完全に都市生活者向けのメディアです。地方では利用者が少ないので、情報が足りないんです。例えば、東京から出張で地方に行ったときに良いお店に行きたいけれど、グルメサイトを見ても気の利いたお店が載っていないこともある。そういう情報は、実は新聞社にたまっていると思います。そうした地方のグルメ情報、カルチャー情報、生活情報にニーズはあると思います。全国紙ならそれを全国に展開させてもいい。

    ――なるほど。もっとアイデアを出していくべきですね。その一方で、メディア事業は不採算だからといって、切り捨てられるべきものではないと思います。ただ、今の規模を維持していくのは、本当に大変です。

     そうですね。僕は日米の違いに注目していて、アメリカなら、地方紙が不振で売れなくなると、NPOや大学が担い手として名乗りを上げるんです。非営利の組織が後を継ぐということが起きる。そして、寄付文化が盛んなので、ジャーナリズムに対する寄付で運営するという構図ができるんです。

    ――ただ日本に寄付文化が根づいていませんね。

     そうなんです。もっともそれを言っていても仕方がないので、結果から言うと、不動産収入でジャーナリズムを続けるという方法はやむを得ないし、これはこれで日本式としてすごく良いと思う。利益相反さえなければ、ガンガンやるべきと思います。

    2016年11月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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