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    産業技術総合研究所

    未来の紙がコミュニケーションを変える…産総研(前編)

     スマートフォンは私たちの暮らしを大きく変えました。「持ち運びができるコンピューター」とも呼ばれるスマホの普及で、私たちはいつでもどこでも、常にネットにアクセスできるようになりました。スマホの小さな画面に合わせた形で進化したSNSや縦型の動画など、私たちのコミュニケーションもスマホに適合した形で変化しています。では、スマホの次に来る端末はどのような形になるのでしょう。それによって私たちの暮らしやコミュニケーションはまた変わっていくのでしょうか。最先端の研究をしている産業技術総合研究所フレキシブルエレクトロニクス研究センター長の鎌田俊英さんに話をうかがいました。

    産業技術総合研究所(茨城県つくば市)で

    聞き手・読売新聞メディア局編集部長 原田康久

    電子的な機能を持つフィルムを研究

    • 対談する鎌田さん(右)と原田部長
      対談する鎌田さん(右)と原田部長

    ――スマホの急激な普及によって、Web上でジャーナリズムを取り巻く環境が大きく変化しています。ただ、技術の進歩は誰も止められるものではありませんし、スマホに適応して生まれたキュレーションサイトなども、すでにスマホの次の時代を見越した研究を始めていると聞きます。我々としても、スマホの次にどのようなデジタル機器が生まれるのか、大変興味があるところです。スマホが私たちの生活をすっかり変えてしまったように、デバイスの形が変われば、その中で展開される言論空間やジャーナリズムが変わるのだろうか、という問題意識を持っています。そこで、最先端の研究の中にヒントがあるかもしれないということで、デバイスの未来について、先生の研究の一端を教えていただきたいと思います。

     なかなか難しい話ですね。

    ――以前、先生のインタビュー記事を拝読したことがあります。基本的には電子ペーパーの研究をなさっていると理解しています。

     分かりやすいので、電子ペーパーと言い方をしていますが、その言葉の印象がずいぶん変わってきています。実際には、今の研究成果が市場に出てくるときの形を想像すると、色々と使い勝手が良いものができそうだという予感はあるのですが、ではその際に、何のために作るのか、という視点がものづくりの側からなかなか言いづらくなってきたんですよ。

    ――そこは純粋に技術だけを追い求めるという単純なものではないんですか。

     はい。だから我々はそういったカテゴリーだけではなくて、もっと広い、魅力のあるところを展開できますよということを言うようになってきたので、「電子ペーパー」という単独キーワードだけで話をすると、ちょっと狭くなってしまう気がします。

    ――なるほど。そこは広い視野での研究成果を話してください。ただ、基本的には未来のデバイスにつながるものを研究しているという理解でいいですか?

     そうですね。基本的にはフレキシブルな機器、つまり、電子的な機能を持っているフィルムのようなものを広範に開発しています。そういう意味では、そのカテゴリーの中に電子ペーパーも含まれるのでしょう。ディスプレーっていうのは、表示、つまり出力する装置ですが、我々は情報端末全般を扱っているので、入力も出力もやります。

    ――情報を表示するだけではなく、ペラペラの紙のようなデバイスに、情報の出し入れができるということですね?

     そこに色々と便利な機能を載せていこうというものです。たとえば、ラップのようなものを人間の腕にベタっと貼るだけで血圧を測れるものなどです。

    「電子ペーパー」で読む新聞は生まれるか?

    ――新聞社としては、どうしても「次の新聞」に興味があります。そうしたものが開発される可能性はあるんでしょうか?

     「次の新聞」というカテゴリーになるかは分かりませんが、先ほどの腕に貼るだけで血圧が測れるラップに、今度は情報を流すことができると思います。

    ――そこに記事を表示することが可能だということですか?

     ラップみたいなきわめて薄いフィルムに、絵や文字を出したり、タッチパネルにしたりすることはできます。腕に貼ったフィルムを記事の出力媒体として実際に開発するかどうかは別ですが、できることはできますね。

    ――そのラップのようなフィルムがインターネットにつながっているというイメージですか? ラップのようなものに通信機能を持たせるのは難しいような気もします。

     ネットにつなぐのは夢ですね。例えばフィルムは腕にペタンと貼り、それを腕時計につなげる。腕時計に通信機能を持たせれば、ネットとつなぐことはできるでしょう。

    ――なるほど、自分の腕にいろいろな情報が表示されるわけですね。かなり未来的な使い方になりそうですが、確かに電子ペーパーと言われてイメージする姿とはちょっと違う気がしますね。そうすると、今のスマホのように日々持ち歩いているという感覚すらない、自分の体の一部になってしまうようなものになるのでしょうか。

     そんなに簡単ではないんですが、そういうデバイスが出てくるんじゃないかな、と思います。アメリカのベンチャーが開発したものは、フィルムではなくて投影機、小型のプロジェクターのようなものを仕込んだデバイスから光を飛ばして、自分の腕などに映った映像を読むことができます。

    2017年01月24日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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