大役演じ終え充実感
「あんな長ぜりふを言えるのか、声は持つのか。大きな挑戦だったけれど、今しかできないハムレットを見せることが出来ました」
大役を演じ終えた充実感が満面に広がる。
四方を金網のフェンスと客席に囲まれた殺風景な舞台。そこを縦横無尽に駆け抜け、長髪を振り乱し、声を限りに叫んだ。叔父に父を毒殺され、母を奪われた王子の狂気にも似た激情が場内にほとばしった。
5度目となる「蜷川=ハムレット」の中で、最も若い21歳。「若さを見せなければ、今やる意味がない。舞台を走り回り金網に体をぶつけて、5年後、10年後に同じ芝居はできないというくらい、いいタイミングで出来た」と胸を張る。
だが、けいこ中は不安でいっぱいだった。オーディションで主役に選ばれた「身毒丸(しんとくまる)」以来、蜷川幸雄演出作品は4作目。けいこの厳しさでは有名だが、今回課された“ハードル”はこれまで以上に高かった。
「周りは『うまい』と言うかもしれないが、おれはだまされない」。長い独白の場面では必ず叱責(しつせき)が飛び、けいこの進まない日が続いた。有名な「生きるべきか死ぬべきか」のせりふも、「迷っているように見えない」と一喝された。
「家に帰り、違う感情表現や動きを考える毎日で、けいこの1か月半があっという間でした」
15歳で英国の舞台に立つという鮮烈なデビューから6年。「演劇では初めて」の賞をこの役で手にした今、多くの演劇人をとりこにするシェークスピアの魅力を改めてかみしめている。
「何百年も前に書かれたのに、今に通じるせりふがたくさんある。本当に難しい。だからこそ、みんなやりたがるんでしょうね」
若さあふれる才能が古典に新たな息吹を吹き込み、見事な花を咲かせた。
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