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枯れ葉剤障害 孫の代まで

洗髪は嫌いだが、母親のハインさんに体をぬぐってもらうと満足そうな表情を見せるズィー君。「いつまで抱きかかえることができるか」と心配するハインさんだが、ズィー君の前では決して笑顔を絶やさなかった

ベトナム

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関節が硬くなり変形したソンさんの手を握る息子のズゥ君(1)。ソンさんは足腰にも同じ障害が見られ、歩行にも一苦労する。雨や季節の変わり目には痛みがひどく、寝つけない夜もあるという

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軍人だった父親が浴びた枯れ葉剤の影響で、生まれた時から全身に黒い斑点が出ている北部ゲアン省出身のタイ・ティ・ガーさん(16)。貧しい家族に迷惑をかけられないと故郷を離れ、同じ境遇の入所者と学校に通うことのできる、ここタインスアン平和村に入所した。「ここに勤めるか、故郷に小さい医院を開きたい」と医者になる夢を話す

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主に枯れ葉剤による先天性障害を持つ子供たちが暮らす「タインスアン平和村」で、リハビリ治療を受ける子供たち。現在115人が入所する。約400万人のベトナム国内の枯れ葉剤被害認定者のうち、4分の1が子供だという

 立つことも話をすることもできない。いたずら盛りの年となっても、食事も流動食だけ。「自分で座って食事をしてくれたら」。それが母親の唯一の願いだ。

 ブ・ティ・ハインさん(34)はベトナム・ハノイの自宅で、おけに湯を張り、一人っ子のズィー君(4)の体を支えながら洗っていた。「出産した直後から、おっぱいは飲むが、泣きやまない子でした。体のけいれんが止まらないこともあった」と異変を感じた当時のことを話す。医師からは「ベトナム戦争時、身内に枯れ葉剤を浴びた者がいないか」と尋ねられた。自分や兄弟、いとこたちはみな健康だが、父のベトナム戦争での従軍地を知り、質問の意味が理解できた。

 タインスアン平和村のグエン・ティー・タイン・フォン院長(47)は「ここ数年、枯れ葉剤が体内に入り込んだ世代の孫にあたるズィー君のような3世にも、その影響と見られる障害が出ている」と憂慮の表情を浮かべた。今年6月、85歳で亡くなったハインさんの父親は、猛毒のダイオキシンを含む大量の枯れ葉剤が散布された南北国境地帯で長年従軍した。体調を壊して戻ったハノイでハインさんは健康に誕生したが、戦友には障害をもった子供も生まれたという。

 ダオ・ダン・ソンさん(24)は、7歳の時に突然関節の痛みに襲われ、両手の指が変形した。父親のティエットさん(56)が浴びた枯れ葉剤の影響と診断されたが、2年前に結婚。元気な男の子を授かった。毎日が楽しいというが、「将来、子供に同じ障害が起きないか心配だ」と話す。

 ティエットさんは従軍中、頭上で枯れ葉剤がまかれる様子を目撃した。「においも味もなく、翌日には広大な森の葉が黄色く変色し落ちて、動物や魚は死んだ」

 米軍が撤退し34年。3世代にもわたり影響を与え続ける負の遺産の恐ろしさを実感するとともに、前向きに生きる人々の強さに、救われる思いもした。

 カメラとペン・林陽一(7月7〜18日撮影)

2007年9月5日  読売新聞)


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