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男性介護者に支援の輪

寺本仁さん(85)は、妻の介護が始まった頃は、徘徊などの症状にいらだち、手を上げたこともあるという。「笑って接することであらゆることがうまくいく」。今では笑顔で介護するように努めている(兵庫県宝塚市で)

 川崎市に住む内田順男さん(71)が、妻の好子さん(72)を介護するようになって17年になる。若年性認知症と診断された妻は今、寝た切りの生活を送る。

 「好子、お化粧しようね」

 「はい、晩ご飯終わりました、お疲れさま」

 一日に何度も語りかける内田さんの口調は、やさしく、自然だ。だが、直面する状況を受け入れることは、なかなかできなかった。

 以前の妻からは想像もできないような暴力や徘徊に、病気ではなく妻を憎み、心中を考えたこともある。が、介護の疲れから自身も体調を崩したことをきっかけに、現実をありのままに受け入れることにした。

 介護から離れる時間を作ることで、逆に介護の力を蓄えた。医師、ヘルパー、友人……。そうした人々に支えてもらえる環境を整えていった。介護は妻への恩返し――今では素直にそう思える。

 厚生労働省の調査によると、家族の介護を主に担っている人の28%を男性が占める(2007年)。だが、家事労働の経験が少ないことや地域にネットワークがないなどの事情から、行き詰まっていく男性介護者は少なくないという。

 そんな男たちを支援する動きが広がりを見せ始め、この3月には「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」(京都市)が発足した。事務局長の津止正敏・立命館大教授は「男性介護者は、弱みを見せたくないため、問題を一人で抱え込み、社会から孤立する傾向がある」と指摘。「介護経験者の話を聞いたり、愚痴を言い合ったりする場所が必要」と話している。

 写真と文 三輪洋子

好子さん(左奥)に賛美歌を歌うために集まった教会の仲間をもてなす内田さん(正面右)。「介護は一人でするものではありません。多くの方に助けていただいて、初めて良い介護ができる」と話す(川崎市で)

「介護は臨機応変に。無理をしちゃだめ」と話す大池隆平さん(78)。男性介護者を支援するNPO法人「スマイルウェイ」(兵庫県宝塚市)に参加している。同会は定期的に、同じ境遇の人たちがおしゃべりを楽しんだり、相談をしたりする場を提供している(同市で)

介護が始った頃はどなってばかりいたという太田秀雄さん(70)。ある日、妻が行方不明になり保護され、故郷に帰ろうとしていたと聞いた。心を改め、亭主関白を返上。優しい介護を目指した。「女房が俺の生き方を変えた」(宮城県角田市で)

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※写真は全て三輪洋子撮影

介護をする男性、支援する人、研究者、学生など、男性介護を軸にいろいろな人が参加し、講演を聞いたり、意見を述べたりする男性介護研究会(京都市・立命館大学で)

NPO法人「スマイルウェイ」が行った水族館遠足。久しぶりの外出に笑みが絶えない大池さん夫妻(中央)(大阪市・海遊館で)

認知症が発症した後も、毎日、銭湯の番台に座る妻を介護する内藤博茂さん(兵庫県・伊丹市で)

東京・荒川区で行われている「オヤジの会」。介護中の人、介護を終えた人などが集まり、思い思いの話をする。プライドが高く、なかなか本音が出ない男性のために、お酒も用意し、ざっくばらんな雰囲気を作る。会長の荒川不二夫さんは、「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」の代表も務める(東京・荒川区で)

太田秀雄さんが妻に向けるまなざしは、穏やかで優しい。社団法人「認知症の人と家族の会」の世話人として、男性介護者との会合を持ったり、話を聞きにいったりなどの活動もしている(宮城県・角田市で)

2009年8月3日  読売新聞)


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