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枯れる修験道の山

立ち枯れたシラビソの間を行く修験道の行者たち。大峯奥駈道の姿が変わりつつある

 ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一つ、大峯山系の大峯奥駈道。修験道の行者が登る険しい山道の途中に、弥山(1895メートル)はある。かつて緑に覆われていた山頂付近は、針葉樹のシラビソが立ち枯れ、絶滅の危機にひんしている。

 行者たちのホラ貝が奥駈道に鳴り響く。白い木肌がむき出しになったシラビソの枯れ木が根こそぎ倒れ、地面を覆っている。その傍らには、美しさから「天女花」と呼ばれる国の天然記念物、オオヤマレンゲがシカよけの防護柵に囲まれ、ひっそりと咲いている。

 シラビソの立ち枯れについて、17年前から弥山の山小屋の管理人をしている西岡満さん(57)は「シカの食害が大きな原因」と話す。山頂付近に群生するシラビソは、等高線に沿って規則的に枯れ、新しく生え替わり、うまく「世代交代」が進んできたというが、「もう何年も前から、シカが新芽を食べてしまって世代交代が進まず、枯れていく一方。養分の少ない土壌なので台風にも弱い」と嘆く。

 NPO法人「森林再生支援センター」(京都市)の高田研一・常務理事(58)は「大規模な森林伐採で下草など餌が増えたことや、温暖化による降雪量の減少もあって、シカが増えて食害が進んだ。1万年以上を生き抜いてきたシラビソを何とかして守っていきたい」と語る。同センターは地元の奈良県天川村と協力し、一昨年から針葉樹の芽生え調査などを実施、枯れていく過程の解明に乗り出すなど、これ以上の森林の衰退を食い止めようと懸命だ。

 神々しい自然に包まれた山岳信仰の地。貴重な世界遺産を次世代に残したい。緑豊かな山の再生を願う。

 (写真と文・中原正純 里見 研)

森林の保水能力が低下してがけ崩れが発生する。山肌には何本もの痕跡が引っかき傷のように残っている=読売新聞社ヘリから

シカから守られた柵の中で今年7月に咲いたオオヤマレンゲ

シカよけのネットを設置する森林再生支援センターのメンバー

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シカよけのネットを張るメンバーら(奈良県天川村で)=里見研撮影

シカよけのネットを張るメンバーら(奈良県天川村で)=里見研撮影

植生発芽状況の調査をする森林再生支援センターのメンバー(奈良県天川村で)=里見研撮影

森林再生支援センターによって設置された、温度や雨量など気象状況を調べる装置(奈良県天川村で)=里見研撮影

立ち枯れたシラビソの群落の中を歩く行者。新芽が、シカに食べられ育っていない(奈良県天川村で)=里見研撮影


立ち枯れたシラビソの群落の中を歩く行者。周りの山々と比べても異様な光景だ(奈良県天川村で)=里見研撮影

近畿最高峰の八経ヶ岳(1915メートル)から弥山を望む。立ち枯れたシラビソやトウヒなどが山肌に散らばり、数か所で大規模な土砂崩れが発生している(7月13日、奈良県で)=中原正純撮影

近畿最高峰の八経ヶ岳(1915メートル)から弥山を望む。立ち枯れたシラビソやトウヒなどが山肌に散らばり、数か所で大規模な土砂崩れが発生している(7月13日、奈良県で)=中原正純撮影

弥山の山頂付近から崩れた土砂や倒木で埋め尽くされた谷(7月13日、奈良県天川村で)=中原正純撮影

2009年9月7日  読売新聞)


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