【特集】生徒も探究者の一人として学び合う「グローバルウィーク」…順天

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 順天中学校・高等学校(東京都北区)は昨年11月15~19日の5日間、中3から高2を中心とした学習行事「グローバルウィーク」を実施した。大学教授や企業・団体の職員、同校の卒業生や現役高校生など、さまざまな顔ぶれが「話題提供者」を務め、多様なテーマでレクチャーやワークショップを行う。生徒だけでなく教員や保護者の参加も可能で、「教える側」「教わる側」の立場を超えた「探究者同士の交流」を目指す行事となっている。

聴講するだけでなく立場を超えて学びあう時間へ

「生徒も話題提供者も『探究者同士』の対等な立場で議論します」と話す中原教諭
「生徒も話題提供者も『探究者同士』の対等な立場で議論します」と話す中原教諭

 同校は、2014年に文部科学省の「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定されたのを受け、月に1、2度、国際的な課題に取り組む機関・団体の職員、研究者を招いての「スクールワーク・ワークショップ」を開催していた。「SGH活動の対象は初年度、高1の1クラスだけでしたが、次年度から順次広げ、2016年から高校全学年、全クラスを対象としました。それに伴いワークショップの講座数も増やすことになったため、日程をある1週間の午後に集中させることにしたのです。これが『グローバルウィーク』です」と、国際部長の中原晴彦教諭は説明する。

 リニューアルに伴って「立場を超えて、互いに学びあう1週間」というスローガンを掲げた。行事の性格も「高校生と共有したい話題(トピック)を持っている人が、生徒に向けてプレゼンし、交流を行う場」と新たに位置付け、レクチャーしてくれる人は「講師」でなく「話題提供者」と呼ぶようにした。生徒自身も話題提供者になることができ、教員や保護者も聴講や議論に参加できるようなっている。

 「従来の授業では、生徒は教わる人、先生は教える人という役割が固定されていますが、この場では、参加生徒と話題提供者は『探究者同士』の対等な立場で、質問や議論をしてもらいたいという考えです」。こうした交流を続けられるように、生徒と話題提供者が連絡先を交換する時間も設けている。

 当初、中3生は自由参加としていたが、18年度から中3生は一つ以上、高1、高2生は二つ以上のトピックへの参加を必修としている。希望があれば高3生も参加できる。2021年度の「グローバルウィーク」は11月15日からの平日5日間、午後3時から4時半まで開催された。計71のトピックが用意され、大学教員を始め企業の事業責任者、NPOメンバー、さまざまな職業に携わる卒業生など多様な顔ぶれが話題提供者を務めた。生徒の独自研究やグループ活動に関する発表も行われた。

植物の生態やジェンダー、医療など多様なトピック

「おもちゃから考えるジェンダーニュートラル」について語った卒業生の金内さん、佐渡さん、相坂さん(左から)
「おもちゃから考えるジェンダーニュートラル」について語った卒業生の金内さん、佐渡さん、相坂さん(左から)

 昨年11月19日、同校を訪れて「グローバルウィーク」を取材した。この日は15の教室・施設で14トピックが対面、1トピックがオンラインで開催された。

 「その果物は誰が食べる?果物の性質を動物との相互作用から理解しよう。」というトピックは、東京大学農学部助教の深野祐也氏が担当した。普段食べている果物の話から始まって、プロジェクターで森林の写真を映しながら「のどかな風景に見えますが、植物は光や地下の栄養を 熾烈(しれつ) に争っています」と切り込み、植物が風や雨、動物の食性など自然を利用して種を遠くへ運ぶ戦略を披露した。ガマの穂が爆発的に綿毛を飛ばす様子など、興味深い動画映像にも目を見張りながら、生徒たちは真剣に聞き入っていた。

 昨春、順天高校を卒業し、別々の大学に進んだ相坂阿実さん、佐渡紫さん、金内佳乃さんによるトピックもあった。タイトルは「おもちゃから考えるジェンダーニュートラル」。3人はジェンダーの視点から教育や環境、貧困などの課題に取り組むグループ「Seedling」で活動している。この日は、世界の玩具の現状について語るとともに、「ジェンダーニュートラルなおもちゃに必要な要素」についてのグループ討論や発表も行われた。

 話題提供者を務めた金内さんは、高校で相坂さんと環境問題の意識調査などの自主活動をしていた。当時は、自分たちが話題提供者として発表するまでに至らなかったが、大学で佐渡さんらと「Seedling」を結成し、ジェンダーニュートラル玩具の開発を手掛ける中で「グローバルウィーク」のことを思い出し、「もっと知識を深め、アイデアを得る機会に」と参加を申し込んだという。佐渡さんはこの日のトピックについて「保護者の方も参加して活発な議論が行われ、幅広い世代の考え方が聞けた」と喜び、相坂さんは「これをきっかけにジェンダーの問題に関心を持ってもらえれば」と後輩たちへの期待を語った。

話題提供者へ活発にアプロ―チする生徒も

東京大学農学部助教の深野氏が語る動植物についての話に聞き入る生徒たち 
東京大学農学部助教の深野氏が語る動植物についての話に聞き入る生徒たち 

 動植物への興味から「果物」のトピックに参加した男子生徒(当時中3)は、日頃からニュースにも関心があり、17日にはNHK横浜放送局のキャスターをしている卒業生によるトピックにも参加した。「自分の興味を300字でリポートする」というワークショップに参加し、伝える難しさを実感したという。今後は話題提供者の「分からないことはすぐに調べるというアドバイスを実行したい」と話した。

 医師を目指しているという女子生徒(同)は、「果物」のトピックのほかに、15日に開かれた東京農業大学准教授による「身近にある微生物の力」と、18日に開かれた東京医科大学講師による「免疫細胞によるがん排除計画」を受講した。「毒性を持つ微生物も医療に活用できることや、体内の免疫ががん細胞に対抗できることなど、新しい知識が得られた」と話す一方、「もう少し事前学習しておけばもっと理解が深まったはず」と反省して、「これからの勉強に生かしていきたい」と意欲を見せた。

 中原教諭によると、話題提供者を務める生徒も毎回いるという。今回も高2の生徒による「新時代の武器『メモ』の使いこなし方」と題するプレゼンテーションなどがあった。「自主的な研究や活動をやっている生徒が、発表の場として利用しています。数年前は海外留学した生徒が自分の経験を共有し、留学を勧めるトピックを開いていました。グローバルウィークは生徒の興味を深め、やりたいことを実行するためのステップになっています」

 今回は、トピックを聞くだけでなく、話題提供者へのアプロ―チも活発だったという。「文科省の参事官によるGIGAスクール構想のトピックでは、質疑応答の時間に現在の政策への意見が出されたほか、終了後には名刺をもらう生徒の列ができました。コロナ禍の特殊な日常を経験したことが問題意識につながったのかもしれません」

 ただ、現状では発表や話題提供者との交流を行う生徒はまだ1割程度にとどまるという。「本校には学力はあるがおとなしい生徒が多い。彼らが積極的な生徒の取り組みを見て、『自分も』と意欲を持つことが重要と考えています。今後は他校と合同開催したり、『グローバル』の名にふさわしく、外国人や国際的に活躍する話題提供者をもっと呼んだりして、さらに多様な刺激を取り入れていきたい」

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート 一部写真提供:順天中学校・高等学校)

 順天中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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