東京都市大学が2025年4月、東京都渋谷区に知の交流を促す拠点「TCU Shibuya PXU(東京都市大学渋谷パクス)」(以下:PXU)を開設した。大手IT企業が多く集まり、大規模な再開発の進む渋谷という舞台で社会と大学を結びつけ、次世代を担うイノベーション人材の育成を目指す。
イノベーションを創出する空間「PXU」
東京都市大学ではPXUを社会と大学の交流の場(クロッシング・ポイント)として位置づける。PXUは、社会(Public・People)、クロッシング(X)、そして大学、私たち(University・Us)の頭文字から成る。また、(X)には「something between public and us」という意味合いも込めているという。「TCU Shibuya PXU」は施設の名称であり、多彩なプログラムの総称でもある。
企業、行政、大学、そして市民などが連携してイノベーションを生み出す地域、すなわち「イノベーション・ディストリクト」の構築を掲げ、以下に挙げる三つの取り組みを柱に活動を展開する。その一つが主に社会人を対象として教育プログラムを実施するイノベーション人材の育成。二つ目がPXUを拠点に様々なステークホルダーを基盤としたネットワークの構築。そして三つ目が持続可能な社会発展に資するための大学と社会の交流。
それらを実現するために、渋谷駅からのアクセスも容易なビルの8階に700平方メートルを超える広さの拠点を新設。設計監理を東京都市大学建築都市デザイン学部建築学科の堀場弘教授が務め、文字通りイノベーションを生み出すための施設としての工夫が随所に施されている。
例えば、来場者を迎えるエントランスには半円形のカウンターが設けられ、利用者同士の様々な交流が生まれやすくなる環境だ。また、最大で80人を収容できるPXUホールに加え、コワーキングスペースや個人用のワークボックスも完備。落ち着いた照明で、イベントやプログラムの状況に応じて柔軟に使い分けできるスペースとなっている。
社会人の「成長したい」を後押しするリカレントプログラム
東京都市大学では、社会の急速な変化に対応し、新たな知識とスキルの習得を望む社会人を対象に多彩なリカレントプログラムを開講しており、PXUはその拠点としても活用している。いずれも高いレベルで実践的な内容で、「成長したい」という強い想いを抱いた様々な人が集まる。以下にそのプログラムのコース3つを紹介しよう。
DX人材育成コース
産学連携により、最新のDX理論と実践的なスキルを融合させ、企業の変革を牽引する次世代リーダーを育成する。大学の知見と企業の実践知を結集し、即戦力となるDX人材を輩出するのが目的だ。
経済産業省のデジタルスキル標準に準拠し、DXリテラシーから推進スキルの基礎までを体系的に学ぶ。90分授業が全14コマで、「経営戦略としてのDX」「ビジネス現場から学ぶデータ活用術」など必須の8コマと、「生成AI最前線」「データサイエンス入門」など選択の6コマ(3コマ×2授業)で構成される。講師を東京都市大学の教員に加え、IT関連の企業などでDXを実践しているCEOなどが務める。文字通り、最新のDX理論と実践的なスキルを身につけられる貴重な機会となるだろう。
建設業事業継承DXコース
こちらのコースは地域建設業を支える次世代経営人材の育成を目的としている。事業継承に向けた課題認識と準備を進めるとともに、DXを活用した最新の施工技術や人材確保、経営管理などについて学ぶ。座学に加え、実地視察やグループディスカッションなどの実践型プログラムにより、地域社会とともに成長を目指す力を養成する。
講師陣も多彩だ。建設会社社長やDXに強い建設テックの起業家に加え、M&Aや財務に精通したプロフェッショナルも登壇する。講座はすべて対面で行われ、1泊2日の現地視察を含めて全6回。コースを通じて、大手ゼネコンや建設スタートアップとの接点も用意しており、業界を横断したネットワークも築きやすく、実践的な協業や新たなチャンスの種につながりそうだ。
Sustainable Urban Managementコース
「Sustainability × DX」をテーマに、人口減少や都市縮退の大転換期になる日本の都市の課題を理解し、持続可能な都市運営を促進するための政策やビジネスの視点を学ぶ。
DXを活用した都市課題解決の手法に焦点を当て、実務重視のアプローチによって多様な専門性を融合した学際的イノベーション人材の育成を目指している。都市政策、インフラ整備、ビジネス戦略、そしてデジタル活用など各分野の第一線で活躍する専門家や実務家が講義を担当。「100年に1度」とされる大規模な都市開発の進む渋谷が実践的な学びのステージでもある。コースはアーバン・プランニングやファイナンスといった基幹テーマと、都市ビジネスやツーリズムなどの専門テーマによって編成。コースの受講によって、持続可能な都市経営に必要な学際的知識と実践的な課題解決能力が習得でき、都市ビジネス分野での幅広いネットワークも築くことができる。さらに大学院進学やキャリアアップの機会を得られることもメリットとなるだろう。
こうしたコースの受講者同士がつながり、ネットワークを広げられるのがPXUの特徴でもある。まさに大学と地域と人の結節点。識者を招いた様々なシンポジウムやワークショップも開催され、PXUは活気に満ちている。社会が大きな変革期を迎えている今、変化に対応して未来を手に入れるためのヒントとチャンスがPXUには詰まっている。