ラリーや耐久で頂点を極めたアウディ、次なる舞台は世界最高峰のF1
2022年、アウディが2026年からのF1参戦を表明したニュースは、世界のモータースポーツファンに驚きをもって迎えられた。
アウディのモータースポーツ活動といえば1980年代の世界ラリー選手権や1990年代の各国ツーリングカーレース、そして1999年以降はル・マン24時間レースを含む世界耐久選手権など、クローズドホイールの車両によるカテゴリーで頂点を競っている印象が強かったからだ。
そのアウディがオープンホイールマシンによるモータースポーツの最高峰、F1の頂点を目指すというのだから、ファンが関心と期待を寄せるのは当然のことだった。
「技術による先進」を体現してきたモータースポーツの名門
アウディがモータースポーツ活動で手にした成功の数々を振り返ると、彼らが時代に先駆けて産み出した技術や意表を突くアプローチなどを抜きには語れない。
後輪駆動が主流だった時代のラリー界に衝撃を与えた四輪駆動のクワトロ・システムや、そのクワトロ搭載車両でツーリングカーレース界を席巻。その後に挑んだ耐久レースでは、マシンを構成する主要アッセンブリをユニットごと交換できる設計と手法を登場させ、ライバルたちをアッと言わせた。
すでに確立していたディーゼルエンジンの技術と開発中だった電動システムを融合させた耐久用マシン、『Audi R18 e-tron quattro』はハイブリッドシステムを搭載したマシンとして2012年のル・マン24時間レースを初制覇。ラリーやツーリングカーに続き、耐久レースの歴史にもアウディの名を深く刻んだ。
『Vorsprung durch Technik(技術による先進)』という自ら揚げたスローガンをモータースポーツでも実現してきたアウディは、時代に応じて戦う場を変えながら新技術に挑戦し、量産車にも移転可能な技術基盤を磨きながら勝利を求めてきた。そのアウディの情熱はいま、F1という新たな舞台での成功を目指してアクセル全開になっている。
総合優勝という快挙を達成した「Audi R18 e-tron quattro」
数々の輝かしい記録を樹立
フォーミュラEで培った電動技術が新レギュレーションでの強みに
今季のF1世界選手権は新しいレギュレーションの導入で大きな転換期を迎えている。
特にパワートレインにおけるエンジンと電動モーターのパワー配分が50対50になったことで、バッテリーへの電力回生とレース中のエネルギーマネジメントがより重要となった。このことは2017-2021年に参戦したフォーミュラEで多くの勝利と電動システムの知見を得てきたアウディにとってチャンスであり、短期間で上位チームに連なる可能性を意味する。また、高度な電動化やより持続可能な燃料の採用、走行時のパワー効率重視のレギュレーションは、アウディがモータースポーツに求める市販車への技術移管にも通じている。
とはいえ、ソフトウェアにハイブリッドシステム、バッテリーの開発などをはじめ、その技術を磨きながら長年F1に参戦している強豪チームと勝利を争うのは決して容易なことでない。
しかしアウディは、険しい道こそが技術力の強化になることを信じて、マシン開発からチームマネジメントまですべてを自ら行うフルワークス体制での挑戦を選んだ。
F1の名門ザウバーと提携 欧州3拠点で挑んだF1プロジェクト
まず1993年からF1に参戦するスイスの名門ザウバーと提携して同社の株式を取得しチームブランド名を変更。風洞実験施設が付帯したザウバーの本拠地をアウディ・モータースポーツAGに改称し、そこでシャシー(車体)を、そしてアウディのお膝元、独ノイブルグにあるアウディ・フォーミュラ・レーシングGmbHでパワーユニットを開発。それと平行する形で、F1プロジェクトの成功に必須のノウハウやF1での経験が豊富かつ優秀な人材が集まる英国ビスターにアウディ・モータースポーツ・テクノロジーセンターUKを開設した。
さらにこの3拠点の動きをスムースに連携させるプロジェクトの責任者としてF1を知り尽くし多くの実績と成功を収めてきたマッティア・ビノットを登用。ドライバーにはドイツ出身のベテランにして実力者のニコ・ヒュルケンベルグ(38)、そしてブラジル出身の新鋭ガブリエル・ボルトレート(21)を起用した。
F1初戦で9位入賞の快挙 鈴鹿で問われる真価
長くそして希望に満ちた準備期間を経て、Audi Revolut F1 Team(アウディ・レボリュート・エフワンチーム)とそのマシン、Audi R26は3月8日、開幕戦オーストラリアGPに詰めかけたファンを前にその勇姿を正式にお披露目した。
新レギュレーション下での初戦とあって、全チーム手探りの部分も多く、多くのチームでフリー走行からトラブルやアクシデントが頻発。そんななかアウディは着々とプログラムをこなし、新規および大きく体制を変更したチーム中で最上位の10、11番手の予選グリッドを獲得した。決勝は、スタート直前のトラブルでヒュルケンベルグが不出走となったものの、ボルトレートがチームと共にパワーを適切に制御しながらコース上で何度も追い抜きをかけるアグレッシブなレースで、予選から2つ順位を上げた9位でゴールした。
F1のデビュー戦としては上々の2ポイントを獲得し、ファンの期待にも応えてまずは安堵したアウディ・チームだが、新たな課題が浮上したのも事実だ。翌週に行われた第2戦中国GP決勝ではボルトレートがマシンに不具合で不出走となり、事実上の今季初戦となったヒュルケンベルグは、卓越したタイヤマネジメントで一時は8位を走行するも、ピットストップでのタイムロスが響き、ポイント獲得まであと一歩の11位に終わった。
それでも百戦錬磨のベテランは、「完璧なレースではなかったが最後まで走り切れたことが最も重要。エネルギーマネジメントの面では未知な部分が多く、今回のデータをチームと見直し、整理してから次の日本GPに向かうよ」と前を見据える。
その日本GPの舞台は、全長5.8㎞、多様なコーナーが組み合わされた世界屈指のテクニカルコース、鈴鹿サーキットだ。ドライバーの間で「攻めがいがある」と高く評価される鈴鹿だが、エンジンと電動モーターのパワー配分が50対50になった今季、ドライバーの技術と感性だけでレースを戦うことはできない。コースのどこでパワーを回生し、貯めたエネルギーをいつ、どこで、どう使うか。つまりコースごとの特徴や気象条件など踏まえ、チーム全体の技術力と情報収集、分析力を含めたインテリジェンスが戦略上の大きな鍵となるのである。
開幕2戦で多くのチームが試行錯誤していたこの点について、初戦の決勝中にボルトレートが何度も追い越しを見せたことからも、アウディは近しい戦い方が要求されたフォーミュラEで得たノウハウをF1で大いに活かしていたようだ。
そのアウディがF1きっての難コース、鈴鹿にどう挑むのか。そしてシーズン中盤戦以降の戦いにどう弾みをつけるのか。
ファンが注目するAudi Revolut F1 Teamの頂点を目指す戦いは始まったばかりだ。
日本GPでAudi Revolut F1 Teamの世界を体験
日本GPでは鈴鹿サーキット内のファンゾーンにアウディの取り組み等を紹介するブースを設置。アンケート回答者へのノベルティ配布など来場した誰もが楽しめる。またラジオ局J-WAVEとのタイアップによるPodcastではレースプレビューやハイライトなど、F1初心者にもわかりやすいプログラムが展開されているほか、アウディのグッズを販売するブースでは様々な応援アイテムが入手できる。
写真:Audi MediaCenter