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企業の成長、経営者の背中を 「安心」 で後押し

7月20日の「中小企業の日*」を迎えるにあたり、『下町ロケット』や『陸王』など町工場を舞台にした小説で中小企業の奮闘を描く池井戸潤さんと、中小企業向けの経営者保険を主力とする大同生命の北原睦朗社長が対談し、経営者を支える仕組みや安心につながる備えなどについて語り合いました。

*地域で活躍する中小企業・小規模事業者の魅力を全国に発信し、さらなる成長の契機にしようと、中小企業庁が2019年、中小企業基本法の交付・施行日である7月20日を「中小企業の日」に制定した。

替えが利かない経営者の もしもに備える

—— 池井戸さんの作品には様々な中小企業が登場しますが、経営者の方々と初めて出会ったのはいつでしょうか。

池井戸 大学を卒業して入った銀行で、最初に大阪市内の支店に配属されました。担当したのは、市の中心部から海沿いまでのエリアでしたが、そこは中小零細企業ばかり。社長の才覚次第では二代、三代と続く会社もありましたが、そんな例は少なかったですね。経営者に何かあれば立ち行かなくなるのが実情で、厳しいものだと思いました。

—— 大同生命が中小企業向けの保険に注力するようになった経緯を聞かせてください。

北原 この分野に乗り出したのはオイルショックがあった1970年代です。中小企業の経営は社長にかかっていて、社長に何かあれば会社はたちまち危機に瀕することになりますし、家族や従業員だけでなく、取引先などへと影響は広く及びます。こうした社会的課題を解決したいと、中小企業を支える仕組み作りに取り組んだのです。

—— メインの商品である中小企業向け経営者保険は、どのようなものですか。

北原 もしもの時には会社や家族への備えが必要ですし、病気で長期療養するという事態も想定しなければいけません。弊社では、運転資金や借入金の返済状況を考慮し、社長が働けなくなった場合や万が一の場合に必要となる金額を積み上げ、それをカバーする生命保険を提案しています。必要額を正しく見積もるため、代理店には主に、関与先の状況を一番理解している税理士先生にお願いしています。

池井戸 私が中小企業と仕事をした時、一番問題だと思ったのは、決算などの数字を正確に把握していない経営者がいるということでした。経営が厳しくて余裕がないのかもしれませんが、業績の良し悪しを問わず、正しい数字を把握しておくべきです。その点、しっかりと見てくれる税理士のような方がいることは大事ですね。

—— 中小企業の経営者は「替えが利かない」存在ですね。

北原 健康と経営、両方のリスクを抱えて頑張っている社長が多いと感じます。池井戸さんの小説に出てくる、万策尽きた社長の「私には出口がない」という言葉が印象に残っています。病気や万が一の時に保険金を受け取ることができれば、従業員や家族、取引先も助かります。経営者保険に入ることは、いざという時の“出口”を作っておくことにもなるのです。健康のリスクを保険でカバーして、仕事に集中できる環境を作っておくことは重要だと考えています。

池井戸 中小企業は本当に大変で、お金がないと倒産するし、お金があったとしても、相続した株に多大な相続税がかかってくる。うまくいってもいかなくても、課題が降りかかってくるんですよ。

北原 池井戸さんの小説には、兄弟で後継ぎ争いをするものもありますが、保険に入っていれば、次男に現金を渡して、後を継ぐ長男が株を全て受け取るということもできます。事業継承の面でも保険は有用なのです。

“優しい視線”で 経営支援サービス

—— 生命保険だけでなく、様々なリスクに備えたサービスを提供していますね。

北原 中小企業では準備が難しい災害時の安否確認システムや、社会的に要求度が高いサステナビリティ経営の支援などを行っています。また、こうした経営面に加えて健康経営の実践支援もしています。なかでも従業員の健康状態の把握・管理などは、取り組み方次第で企業の姿勢が問われ、人材不足が深刻な今、採用にも大いに影響が出るので、注目されています。

池井戸 中小企業を見る時、銀行は、貸したお金が返ってくるかを重視せざるを得ませんが、経営者にフォーカスする保険会社は、視線が優しいですね。

北原 今は色々なサービスを提供する会社がいくつもありますが、弊社の目を通して、ここなら大丈夫というものを紹介しています。その安心感は大事だと思っています。

—— 「トップは孤独」とよく言われますね。

北原 弊社は2022年に、経営者が互いに困りごとや悩みを相談・共有できるコミュニティーサイト「どうだい?」を開設しました。利用者からは、「従業員や家族に話せない悩みを聞いてもらえた」、「新たな気付きがあった」との声をいただいています。利用者は増え続けており、間もなく10万人になります。

池井戸 銀行員のころ、相談相手がいなくて、本当に困っている経営者を見てきました。今は生成AIに聞けば、大抵のことは教えてくれるし、ネットには情報があふれている。でも、どれが正しいのか、どれを選んだらいいのか分からない。サイト利用者が増えているということは、皆さん、そういった悩みに応えてくれるところを探しているということなのでしょう。

経営者のコミュニティーサイト「どうだい?」のTOPページ。詳しくは、こちら

佃製作所のような 会社には応援が必要

—— 最後に、頑張る中小企業の経営者へ贈るメッセージをお願いします。

池井戸 まず、「やり切る」こと。困難を乗り切るために知恵を出すのが経営者の仕事です。あきらめたら終わり、どこかに正解があるはずです。資金繰りが苦しくなると、焦って余裕がなくなりますが、踏ん張って道を探す。そういった粘りも大切です。技術力など、きちんとしたものを持っていれば、お金を出してくれる人はいると思いますし、「これを乗り越えたら、必ず成長する」というところには、誰かが応援することが絶対に必要です。『下町ロケット』の佃製作所のような会社があれば、いくらでも貸したくなりますよね。

北原 中小企業は、国内で企業数の99%、雇用者数で7割を占め、日本経済を支えていると言っても過言ではありません。特に地方にとっては地域経済の中心的存在です。地域社会を守るという意味でも、中小企業を支える経営者保険は「社会インフラ」といえるでしょう。弊社は、ある意味、中小企業に育てていただいた会社でもあります。これからも中小企業をしっかり守っていきたいと思います。

北原 睦朗(きたはら・むつろう)
1959年東京都生まれ。1982年大同生命保険入社。営業企画部長、企画部長、T&Dホールディングス専務執行役員などを経て2019年に代表取締役専務執行役員。21年4月から現職。

池井戸 潤(いけいど・じゅん)
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。2011年『下町ロケット』で直木賞を受賞。著書に「半沢直樹」シリーズ、『シャイロックの子供たち』『空飛ぶタイヤ』『陸王』『アキラとあきら』『ノーサイド・ゲーム』『俺たちの箱根駅伝』など。