すべてのこどもたちが夢や希望にあふれる未来を描き、生きていくことができる社会について考える「こどもみらいフォーラム」(一般財団法人住友生命福祉文化財団、読売新聞大阪本社主催)が5月30日、大阪市中央区の住友生命いずみホールで開かれました。第3回となる今年は、「こどもによるこどものためのフォーラム」をテーマに、誰もが生きやすい社会づくりについて、こどもとおとなが一緒に考えました。
住友生命いずみホールは、一般財団法人住友生命福祉文化財団の音楽文化振興事業の拠点として年間約10万人の方々に音楽の感動を分かち合う場を提供し、クラシック音楽の普及を通じた地域の「ウェルビーイング」実現に貢献しています。
オープニングでは、池田伊津美さんによるパイプオルガンの演奏が行われました。
《基調講演》将来の不安を取り除けるかもしれない講演会
麒麟・田村 裕さん
小学5年生で母が他界、中学2年生で家を失い「ホームレス」になるなど、困難な少年時代を送りました。
当時、一番つらかったのは空腹です。高校時代、1日の食費は300円で、ご飯は1膳のみ。昼休みは、みんなのお弁当のにおいが空腹を刺激するので、体育館でやり過ごしました。事情を知っている先生が「うどん食うか」と声をかけてくれましたが、思春期で甘えられませんでした。感情のコントロールもできず、気に入らなければ物に当たったり、教室を抜け出したり。先生にも食ってかかる問題児でした。今思えば、かまってほしかったのかなあと思います。
現在、僕には3人の子どもがいます。小学6年生になる長女は2歳ごろ、昼寝明けの癇癪(かんしゃく)がひどく、一度爆発すると、手がつけられない状態になることがありました。
長時間続くあまり妻も僕も疲れ果て、つい怒ってしまうのですが、それでは治まるはずもありません。どのように接すべきかと悩んでいたある日、長女が癇癪を起こしたので、やり方を変えてみようと、隣に座って「大丈夫、大丈夫」と優しく声をかけてみました。すると、いつもより短い時間で落ち着いたんです。衝撃でした。落ち着いた長女の様子を見ると、隣で寄り添ったことで安心したように見えました。この体験を妻と共有し、夫婦で対応を変えたところ、長女の癇癪はほどなく治まりました。
その長女も今は思春期の入り口に立ち、今度は親と口論になることが増えました。しかし、過去の経験から、まずは本人の意見を聞き、寄り添うように心がけています。
人生にはいろいろな困難がふりかかります。自分もまさか、母を亡くし、家がなくなるなど、思ってもいませんでした。人は、困難や不幸に直面したとき、「自分が何か悪いことをしたからではないか」と思いがちですが、それはそんなタイミングであっただけで、決して自分が悪いわけではありません。今日、明日をゴールにするのではなく、何十年か後にゴールを据えて、今の自分に合格点を出してほしい。自分を好きになって明日に向かうことが、いい未来への一番の近道になると思っています。
《ディスカッション》おとな代表:田村さん×こども代表:学生プレゼンター
学生プレゼンター
関西学院高等部 探究福祉グループ 木曽 元樹さん、石原 拓海さん
関西学院大学 森田 初葵さん
関西学院大学大学院 岡﨑 真結さん
■見過ごされがちな貧困
八木 こどもの貧困について世間の関心を高めるためには、どうすればいいでしょう。
木曽 日本では、困難な状況にあるこどもの教育支援に関心が集まり、貧困そのものが見過ごされがちです。教育支援を受けているこどもたちの家庭背景について調査し、社会に伝えていくことが大切ではないでしょうか。
石原 民間の支援だけでなく、もっと行政による支援が充実することに期待したいです。
田村 僕がこどものころに比べ、公的な支援制度は格段に増えましたね。
岡﨑 支援が充実しているにも関わらず、支援が必要な家庭に制度についての情報が届いておらず、苦しい状況が変わっていないという現実もあります。そんな家庭に情報をどう届けるかが今後のさらなる課題だと思います。
■居場所づくりのサポートを
八木 不登校になる原因はなんでしょう。
森田 100人いれば100通りあり、原因を特定しようとすることは建設的ではありません。それよりも、学校に行けないこどもが前を向いて歩いていける道をつくることが必要です。
田村 親の立場から言うと、学校にはなるべく行ってほしいと思ってしまいます。
森田 不登校になり、ただでさえ自分を責めているこどもには、無理に学校に行けと言うのではなく、家庭では「ここにいていいよ」と受け入れるメッセージを送ってあげてほしいです。
八木 親はどんなサポートをすればいいでしょうか。
森田 フリースクールや習い事など、学校以外の居場所づくりに力を貸してあげてもらえたらと思います。
■自己肯定感を持つ大切さ
八木 「支援」という言葉が、当事者のこどもに否定的な感情をもたらすのではないかという意見があります。
岡﨑 私が携わっている学習支援活動では、困窮が原因でサポートを受けているということが分からないような活動名になっています。最近は、「支援」という言葉の使い方も配慮されています。
田村 自分は支援が必要な人間だと感じるのは、こどもにとってはつらいですね。
八木 田村さんは経済的に苦しい時代、どう感じていましたか。
田村 自分を否定しがちだったので、自己肯定感を保てるよう頑張りました。芸人ですので、今は大変なことは笑いに変えるようにもしています。苦しんでいる人たちには、見方を変えれば人生が変わるということを伝えたいですね。
関学プレゼンテーション
高等部の木曽元樹さんと石原拓海さんは、探究福祉の授業で取り組んだ「体験格差と子供の貧困」について発表し、親の経済状況がこどもの進路の選択肢をせばめていることを指摘。体験の重要性を伝える啓発活動と、体験機会の提供の両軸が重要と結んだ。
大学生の森田初葵さんは、「不登校の今とこれから」について、自身の体験を交えて発表。「学校以外にも成長できる道筋をつくることが、全てのこどもにとって安心につながる」と述べた。
大学院生の岡﨑真結さんは「生活困窮者自立支援制度における子どもの学習・生活支援」について述べ、「貧困が見えにくくなっている。こどもたちが様々な人と関わり、社会で支えるために、支援を必要とする家庭の発見が大切」と課題を示した。