韓国最大手の大韓航空は、2026年末をメドに韓国2位のアシアナ航空と完全統合し、ブランドを統一して運営・運航する。韓国のフラッグシップキャリアとして、アジアと世界をつなぎ、「世界で最も愛されるエアライン」を目指す。2025年にAirlineRatings.comが発表した世界の航空会社の総合ランキングでトップの「エアライン・オブ・ザ・イヤー」をはじめ、数多くの賞を受賞している。新CI(コーポレートアイデンティ)の発表など統合準備を進める大韓航空の安全とサービスを支える現場に迫る。
安全追求 各現場で厳格に
機内の安全を守る客室乗務員トレーニング
ソウルの金浦空港近くの大韓航空客室乗務員トレーニングセンター。ここでは客室乗務員を対象とした様々な訓練が実施されている。一歩足を踏み入れると緊迫した声が響き渡り、張り詰めた空気が伝わってきた。
機内を再現した施設では、緊急時に航空機のドアを操作して機外に脱出する訓練が行われていた。機種によりドアの開閉法が違うため、全機種のドアを設置し、脱出時の操作を習得する。
消火訓練も最新設備を導入し、炎が上がり、煙が立ち込める機内の状況を再現して行っていた。機内に装備されている消火機器を使った消火訓練、また、近年増加するスマートフォンのモバイルバッテリー火災への対応訓練も行われていた。
世界最高水準のシミュレーターを用いた操縦訓練
パイロットの操縦訓練には、世界最高水準のフルフライトシミュレーターを導入。世界中の空港や様々な気象条件、エンジン故障などの異常事態を想定し、実機に近い環境下でトレーニングを積む。パイロット全員に定期的な訓練が義務付けられおり、技能と安全性の向上を図っている。
大韓航空の全フライトを支える中枢施設
大韓航空本社のオペレーション&カスタマーセンター(OCC)の大型スクリーンには、運航中の航空機の航路、空港情報、世界のニュースがリアルタイムで映し出され、専任のスタッフが運航乗務員と機材の調整、イレギュラー対応、機体整備の調整などを365日24時間行っている。まさに大韓航空の核だ。OCCは運航管理センターや整備支援センターなど、計5つのサブセンターで構成されている。
韓国の国内4か所の格納庫では、合計で3000人を超える整備士が24時間体制で離陸前と着陸後に航空機の状態を点検し、航空機の機体と部品を修理する整備作業を行っている。
新機材投入計画
大韓航空は現在、165機の航空機を保有するが、2025年8月、新たに米ボーイング製航空機103機の購入計画を発表した。航空機は2030年末までに段階的に引き渡される。アシアナ航空との完全統合後を見据え、最新機材の投入など、盤石な体制を構築する。
サービスも更なる高みへ プロ集団の誇り
新たなCIを発表 機内サービスも世界レベルへ
大韓航空はアシアナ航空との企業統合に伴い、2025年3月、新たなCIを発表した。41年ぶりに企業ロゴを刷新し、機体デザインも新しくした。また機内アメニティキットや寝具、テーブルウェアなども一新した。
ファーストクラスとプレステージクラスでは、アメニティキットはイギリスの高級ジュエリーブランド「グラフ(GRAFF)」、寝具はイタリアの高級寝具ブランド「フレッテ(Frette)」の製品を採用した。テーブルウェアも、ファーストクラスは、「BERNARDAUD」、「RIEDEL」、「Christofle」、プレステージクラスは「ARMANI/CASA」を取り入れた。
また、大韓航空では拠点とする仁川国際空港のラウンジの全面リニューアルを進めている。2025年8月にはその一部がリニューアルを終え、2026年には仁川国際空港のラウンジの座席数は2倍となる。
大韓航空は出発から到着まで、至高の「移動空間」をつくりあげている。「私たちは安全とサービスに対する高い意識を持って日々の業務に取り組んでいる」。大韓航空のスタッフがそれぞれの現場で発した言葉にプロフェッショナル集団の誇りと自負を見た。
日韓の絆を強め、世界で最も愛される航空会社へ
大韓航空 崔晶皓副社長インタビュー
大韓航空の崔晶皓(チェ・ジョンホ)副社長が韓国第2位のアシアナ航空との完全統合後の戦略について語りました。
世界と日本各地 結ぶお手伝い
── 大韓航空とアシアナ航空の2社の統合によってどんな効果を期待していますか?
大韓航空とアシアナ航空の2社は完全統合後、大韓航空という一つのブランドで運航します。
大韓航空とアシアナ航空というフルサービスキャリア2社の統合によって、経営規模を生かし、お客様により満足いただけるサービスと安全な運航を提供できると考えています。2社が良いハーモニーで一つの企業として、お客様が安心できてもっと満足できるようなサービスを提供できる航空会社になります。「世界のどこの人からも愛される、世界で最も愛される航空会社」が我々の一つの大きな目標です。
── 2社の完全統合後、日本と韓国を結ぶ路線の経営ビジョンを教えてください。
大韓航空とアシアナ航空を合わせると、韓国と日本を結ぶ路線は現在、週300便以上飛んでいます。この中でソウル(金浦)-東京(羽田)線をはじめ、大阪、福岡、札幌など大韓航空とアシアナ航空で重複している路線が多くありますが、スケジュールを調整するなどしてお客様のニーズに合わせてもっとご満足いただけるサービスを提供できると思っています。空港のスロットの問題などがありますが、環境が許せる範囲で一番いい形でのスケジュールにしたいです。
また、欧米からの旅行者が韓国と日本のどちらかの国だけを訪れるのではなく、仁川国際空港のハブ空港としての機能をもっと活用し、韓国と日本の両方の国へ旅行しやすい環境づくりを目指します。こうした環境をつくることで旅行者の満足度が上がるとともに、韓国と日本の観光地としての競争力も高まると思います。
日本の地方都市に大きな魅力
── 2社の完全統合後、日本の地方都市とのかかわりでは、どのような戦略を描いていますか?
大韓航空は、ソウルと日本の地方都市を結んでいます。その他にはアシアナ航空が仙台、宮崎とソウル線を運航していますが、完全統合後はこうした路線を維持・活用することでお客様の利便性を高めていきます。現在、週に3便や4便のみ運航している路線がありますが、統合後は、毎日運航が可能となるよう検討していきたいと思います。
私は日本に過去4回、計12年間、駐在しました。その間、日本の様々なところを巡り、日本の地方都市には大きな魅力があると気づきました。
今、日本では東京や京都など一部の都市に観光客が集中する現象が起きていますが、世界各地の方々に日本の様々な都市の魅力を感じられる旅行のお手伝いができればと考えています。
── 2025年に日本と韓国は国交正常化60周年を迎えました。日本と韓国の人的往来は、増加傾向にあります。
日本と韓国の往来は、2024年の訪韓日本人客数は約322万人、訪日韓国人客数は約882万人と合計で1200万人を超え、過去最高に達しました。2025年はさらに増える見通しです。
韓国の人からすると、しょうゆやみそをベースにした日本の食事がとても口に合います。また日本は、安全である事、豊かな自然や文化や芸術、温泉などが韓国人には人気のポイントです。
何より日本人の礼儀正しさやサービスマナーが良いことも大きな魅力の一つです。今の状況が大きく変わらなければ、訪日する韓国人は、今後も増えるでしょう。世界各国・地域からも同じように日本を多くの人が訪れるようになると考えています。こうした観光の大きな流れ、トレンドは変わらないと思います。これからも、弊社便をご利用いただき、両国の交流が更に活発になっていただければと思います。
崔晶皓(チェ・ジョンホ)氏
1988年大韓航空入社。福岡支店などを経て2013年日本地域本部長、2016年ジンエアー社長兼CEO、2022年から大韓航空副社長。
大韓航空
1969年設立。仁川国際空港をグローバルハブとして世界39か国・地域の116都市に就航。2024年の輸送旅客数は2300万人以上に達した。航空アライアンス「スカイチーム」の創設メンバー。2024年末からアシアナ航空との企業統合を進めている。韓進(ハンジン)グループ傘下の航空会社は、大韓航空をはじめ、アシアナ航空、ジンエアー、エアプサン、エアソウルの5社。