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【龍谷大学】情報×防災で変わる未来

左から、龍谷大学 政策学部准教授 石原 凌河 氏、大阪府箕面市長 原田 亮 氏、龍谷大学 先端理工学部教授 池田 聖 氏

 龍谷大学は、2027年4月、瀬田キャンパス(滋賀県大津市)【※1】に「情報学部」(仮称)を開設予定【※2】。育成するのは、文理の枠を超え「情報技術」を駆使し、実践力と応用力を兼ね備えた人材です。「情報」に様々な「テーマ」を掛け合わせ、社会課題の解決へ挑みます。今回は「情報×防災で変わる未来」について、大阪府箕面市長の原田亮氏、龍谷大学先端理工学部教授の池田聖氏、同政策学部准教授の石原凌河氏の3氏に語っていただきました。

【※1】2027年4月、瀬田キャンパス(滋賀県大津市)は「びわ湖大津キャンパス」に名称が変わります
【※2】設置計画は予定であり、内容に変更が生じる場合がございます

なぜ今、”情報×防災"なのか

池田 2027年4月に開設予定の情報学部(仮称)では、デジタル化が進む世の中で、DXに貢献できる人材だけでなく、社会とつながり課題解決につなげていけるような人材育成を目指します。情報技術は、共通言語のようなもので、今やすべての学問のベースです。情報学部(仮称)では、情報をあらゆる分野で応用できる学問として、幅広い領域につながる学びを目指しています。

原田 私が市長を務める箕面市は大阪の北部にあり、2024年には北大阪急行線が延伸するなど、大阪府内で住み心地1位にも選ばれ、人口も昨年過去最多の14万人を突破しました。取り組むのは、災害に強い街づくりです。昨年は、テント型パーティションを配備し避難所の個室化に取り組み、「日本一快適な避難所」になったという自負があります。

石原 地域防災などの地域レジリエンスを専門にしていますが、災害時に「情報は命綱」です。災害研究は、現場の声を生かして、現場を変えていかなければなりません。情報を人がいかに活用していくかが大事です。情報格差をどう埋めていくか、課題に向けた実践的な研究を進めています。

池田 着任予定の情報学部(仮称)においても、私が研究してきたユーザーインターフェースの分野では、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)技術を応用し、誰もがマニュアルなしで瞬時に情報を理解できる世界を目指していきます。

災害大国における情報の重要性

原田 災害時に行政だけですべてを担うことには限界があります。地域の人達の力に頼らざるを得ません。箕面市には共助の組織として小学校区ごとに「地区防災委員会」があります。その地域に住んでいる職員を3人ずつ配置し、地域と行政のパイプ役を担ってもらいます。

石原 災害時はチームプレーが重要です。災害が起こった瞬間に、迅速な対応が必要になります。行政主導だけでは、救える命が救えません。情報の技術が進展しても、うまくいかない部分が出てくる。情報を共有し、こういう戦略でやっていこうという仕組みと意思決定が特に大事です。住民からの情報が行政サイドに上がってこないことも多いですが、箕面市の取り組みは、行政と住民がうまく連携を取り合えていると思います。

池田 ユーザーインターフェースの観点から見れば、情報の伝え方はもっと改善できます。例えばスマホアプリ。色をどうするか、文字の配置、言葉の選び方。配慮不十分だと理解が遅れるケースがあります。「避難指示」という文言も、被災者主体でなく行政が主体ですよね。被災者の立場に立てば、どう行動すればいいのか分かりにくい。ハザードアプリも便利ですが、緊急事態になってダウンロードをしても使い方が分からずすぐに活用できない。専用のアプリではなく、日常的に使っているアプリに防災情報も載せれば避難の助けになります。このように、ユーザーインターフェースの基本的な知識があれば、世の中はもっとよくなります。

即戦力となる情報人材の育成

池田 新設する情報学部(仮設)は3専攻を設けますが、そのうちの一つである「実践データサイエンス専攻」は、大量の情報を分析し、意味のある情報を取り出して、分かりやすく可視化することに特化します。アスリートの健康管理や睡眠研究など幅広い専門家を招き、「情報×〇〇」で多様な学びを提供し、データをどう社会につなげていくかを考えます。数学や物理が苦手でも、すんなりと学習できるようなカリキュラムを設計し、様々な分野の人が学べる仕組みになっています。龍谷大学は地域連携を重視しており、私も実装性のある応用研究へと幅が広がりました。情報学部(仮称)では、ARの技術に付加価値を付けて、スマホをかざせば災害時に土砂がどこまで流れ込んでくるか分かるようなアプリを作るなどの構想があります。

石原 龍谷大学の強みは、学びが社会の課題解決につながっていることが実感できる点です。私は大学院から工学に進みましたが、理系の専門性を理解しつつ、現場の声を聞き取り、それを社会に伝える“通訳”の役割を担える人材が、これからますます重要になってきます。高度な情報システムを導入しても、使えなければ意味がありません。情報学部(仮称)では、情報の使い手の視点に立って、情報を活用して独自の価値を創出できる人材が育っていく大きな可能性を感じています。

原田 災害時に備えるには共助だけでなく、市民一人ひとりが当事者意識を持ち、備えていただく自助も欠かせません。今回のお話にもありましたが、ARやVRを活用して、土砂災害やため池の決壊などを現実に近い形として示していければ、我が事として捉えてもらうきっかけになります。ユーザーインターフェースも進めなければいけませんし、DXもこれからです。情報学部(仮称)では、情報の知識に加え、机上の資料だけでなく、現場の声を聞き、人に寄り添っていける、そんな人材が育っていくことを期待しています。


原田 亮(はらだ りょう) 氏
 大阪府箕面市長。大阪大学在学中の2011年、東日本大震災を機に「被災地支援団体ACTION」を結成し、代表を務める。2012年、25歳で箕面市議会議員に初当選、2015年に大阪府議に初当選し2期。箕面青年会議所理事長などを経て、2024年、箕面市長に初当選し、第19代箕面市長に就任。防災士。


池田 聖(いけだ せい) 氏
 龍谷大学先端理工学部知能情報メディア課程教授。奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了。立命館大学講師、大阪大学准教授などを経て2024年から龍谷大学。視覚機能に基づく複合現実感や後天性失明者のための実空間視線インターフェースの研究に取り組む。


石原 凌河(いしはら りょうが)氏
龍谷大学政策学部政策学科准教授。大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 人と防災未来センター研究員などを経て、2016年から龍谷大学。「臨床防災学」を標榜(ひょうぼう)し、地域の防災に関する研究や実践に取り組む。