5年ぶりの海外派遣となった第21回は、「多様な事業と総合力で未来を創る」をテーマに、東北、首都圏、関西から集まった6人の高校生が、インドネシアを訪れた。都市開発や地熱発電所、自動車バリューチェーンといった多様な現場の視察と、そこで働く人への取材を通し、三菱商事の海外ビジネスの「今」を知り、高校生たちは、自らの将来について考えた。
「海外ビジネスは信頼が大切」

まず訪れたのは、三菱商事ジャカルタ駐在事務所だ。財前孝広インドネシア総代表は、「アジアの中でも高い成長性が見込まれるこの国の社会に貢献したいと考えている」と語りかけた。同国の人口は2億7000万人だが、平均年齢は約30歳と若く、活力に富む。さらに、海外でビジネスを進めるには「相手への敬意が欠かせない。相互理解と信頼関係が大切」と強調した。
その後、各事業部門の担当者からインドネシアで展開されるビジネスの概要について学んだ高校生たち。これから視察する事業現場への期待を膨らませた。
都市開発で発揮される総合力
ジャカルタ中心地から車で約45分。1980年代から開発が始まった「BSD City」には高層ビルと広大で緑豊かな平地という対照的な風景が広がる。三菱商事は2016年から同国大手不動産デベロッパーと共同で都市開発に段階的に取り組み、2020年には都市全体の運営にも参画している。現在開発がほぼ完了した「Zora(ゾラ)」地区と、今後本格的な開発が始まる「Hiera(ヒエラ)」地区を見学した。
Zora地区の戸建住宅では3世帯家族が多いインドネシアを想定し、世帯別に寝室やバストイレが設けられていて、部屋数も多い。さらに、コロナ禍で衛生面が重視されるようになった情勢に対応し、「玄関」といった日本様式を内装に取り入れたところ好評だという。新田あおいさん(豊島岡女子高2年)は、「日本式の良さをいかに押し出していけるかが大事なのではないかと感じた」と話した。
Hiera地区では、公共交通の利用を基盤に住宅、学校や病院、商業施設といった都市機能を組み合わせたTOD(公共交通指向)型の複合開発が計画されている。開発を担当する三菱商事の中島浩徳さんは「慢性的な交通渋滞が社会問題となっているジャカルタ首都圏において、電車という公共交通機関の活用を基盤としたクリーンな街づくりを実現したい」と話した。高校生がBSD Cityの住民へ「これからどのような開発をしてほしいか」と質問した際には、「幅広い世代を対象に、多様な選択肢がある街になったら嬉しい」という声もあった。自動運転や移動式コンビニなどの実証実験も進んでいて、「三菱商事の8つの事業グループの強みやアイデアを組み合わせた総合力で、街を魅力的にする事業をつくりあげていきたい」と都市運営を担当する増池乾人さんは意気込んだ。佐紺立旺さん(姫路西高2年)は「こうした大規模なプロジェクトを展開できるのは、多様な事業とつながりを築いてきたからこそ」と感嘆した様子だった。
三菱商事の総合力を生かし、社会課題や住民の多様なニーズに応えようとする現地駐在員たちの熱意を、高校生たちは強く感じた。
脱炭素へ 地域と生きる地熱発電所
三菱商事が現地の企業とともに事業を行う現場は、標高約1800メートル、広大な茶畑の中にもある。ジャカルタ市内から高速鉄道とバスで約3時間半、ジャワ島西部・バンドン郊外にあるワヤン・ウィンドゥ地熱発電所を訪れた。
同発電所は、インドネシア最大の地熱発電事業者であるスターエナジー・ジオサーマル社が運営している。脱炭素社会の実現に向けエネルギートランスフォーメーション(EⅩ)を推進する三菱商事が地熱発電分野で初めて参画した発電所だ。
約1万3000ヘクタールの敷地内には2基が稼働し、発電容量が230万ワット。地熱貯留槽の蒸気量や温度の高さ、圧力はいずれも世界でもトップクラス。発電だけでなく、教育や医療サービスも提供するなど、地域とのかかわりを重視している点も特徴的だ。
「再生可能エネルギーの現状や、地熱発電所の仕組みを学び、運営に携わる人たちの苦労を知った。日々の生活が当たり前でないと実感した」。世界2位の地熱資源量を持つ同国内で存在感を放つ発電所で、横沼心結さん(茨木高2年)は真剣な表情で話した。
車社会を支えるバリューチェーン
三菱商事は現地の自動車関連企業にも出資をしている。部品製造、車両組み立てから、卸売り、小売り、アフターサービス他自動車事業の川上から川下まで幅広くバリューチェーンを展開するが、今回出資先の4社を訪ねた。
まず、「KRM」社ではトラックの組立工程を視察。整然と並ぶ組み立てラインで、手際よくパーツを組み立てる作業員たち。組み上がったパーツはモニターを通じて3段階に分けて品質チェックが行われる。「顧客や従業員のことを一番に考え、効率の良い生産方法と工程を追求している」と深町桃花さん(愛光高2年)は目を見張った。
「品質管理とコストのバランスが重要」と、KRM社の澤田耕司副社長が力を込める。「QFL(クオリティ・フィードバック・ループ)」と呼ばれる製品管理体制には、日本企業ならではの品質へのこだわりが表れる。1973年から操業する工場で作られたトラックは、「頑丈で高品質でありながら、手の届きやすい価格」とインドネシアでシェア1位を誇る。
商用車の生産・卸販売を手がけるのは、「KTB」社。同国全土に販売網を展開し、充実したアフターサービスが特徴だ。同社の岡本大資社長は「インドネシアがもっと豊かになる為に何ができるかを常に考え、信頼されるパートナーになれるよう日々心掛けている」と語った。KTB及び乗用車の卸売り販売を手がける「MMKSI」社員との交流では、オンラインだけでなく顧客を一堂に集めた大規模なイベントも盛んに行うなど、日本とのマーケティング手法の違いについても学んだ。
最前線で顧客と向き合う同国最大の三菱系ディーラー「PMJ」社の浜崎栄一郎副社長は、「乗り心地の良さやサービス品質の高さが三菱車の良さ」と話す。新車の納車セレモニーで店舗を訪れた男性は、「故障が少ないし、丁寧に対応してくれる」と信頼感をのぞかせる。高校生たちは、販売スタッフたちが取り組む、「TikTok」を活用した販促動画の制作も体験し、自動車販売におけるデジタルトランスフォーメーション(DⅩ)の一端を体感した。
顧客を最優先に考えた品質・サービスへのこだわりを学び、インドネシアで50年以上かけて築かれたバリューチェーンの強さを感じた。
ツアーでは、インドネシア大学の学生との交流や日本の文化を広める国際交流基金の職員による講義もあり、日本文化が広く受け入れられていることを知った高校生たち。こうした日本文化の広まりとインドネシアという国、そこで暮らす人々への敬意こそが、三菱商事がもつビジネスの総合力を最大限に発揮する要因になっていることを、肌で感じたに違いない。そして、海外で繰り広げられる多様なビジネスの最前線をその目で見ることができたのはとなったことだろう。「インドネシアの人、ひとりひとりに寄り添うという姿勢は大きな発見で、学びがあった」と、小平琉生さん(市川高2年)は振り返る。安倍健翔さん(仙台第二高2年)は「将来はグローバルな人材となって、日本を支えていくような大人になりたい」という決意を胸に5日間の視察を終えた。
◆ エネルギートランスフォーメーション(EX)=エネルギー分野における産業構造や社会基盤の変革のこと。三菱商事ではEXでエネルギー・資源の安定供給とカーボンニュートラルを目指す。
高校生はツアー後、2つのグループに分かれて視察の成果を新聞形式にまとめ、11月8日に三菱商事本社ビル(東京・丸の内)で開催された報告会で発表した。編集作業を通じて、インドネシアでの得がたい経験を再認識した高校生たち。「海外で活躍するために、さらに学びを深めたいという探究心がわいた」、「海外で新しいことに挑むチャレンジ精神に感動した。挑戦を大切にしたい」と将来への思いを話した。



探検隊メンバー▶左から、
佐紺立旺さん (兵庫県立姫路西高校2年)
深町桃花さん (愛光高校2年)
横沼心結さん (大阪府立茨木高校2年)
小平琉生さん (市川高校2年)
新田あおいさん(豊島岡女子学園高校2年)
安倍健翔さん (宮城県仙台第二高校2年)
