心臓病・血管病に強い病院
国家公務員共済組合連合会
神奈川県横須賀市、三浦半島の中核病院として30診療科を揃え、救命救急センター、ICU、NICUなども有する横須賀共済病院。循環器内科には常勤医が17人在籍し、循環器の救急患者は基本的に全て受け入れている。循環器センターでは不整脈、虚血性心疾患に対するカテーテル治療、ペースメーカー植え込み術等を専門的に行い、とくに不整脈のカテーテルアブレーションは20年間で15000件を超える(2003年4月~2023年12月)という。

副院長
高橋 淳

循環器内科部長
田中 泰章

循環器センター長
循環器内科部長
疋田 浩之
横須賀共済病院の循環器センターは365日24時間の診療体制が整う。循環器内科医17名、心臓血管外科医3名が緊密に連携し、手術が必要な場合も迅速な対応が可能だ。心臓や血管に疾患を持つ患者専用のハイケアユニットであるCCUも有する。
副院長の高橋淳医師は、「CCUがあることでスムーズに患者さんを受け入れることができます。高度な専門性を持つスタッフが揃い、身体的なケアだけでなく、生命の危機を体験している患者さんやご家族の心のケアにも取り組んでいます」と話す。
横須賀市、三浦半島における循環器疾患の拠点である同センターは、20年以上前から地域の消防、医療機関との間にホットラインを設置している。相談や要請のしやすい関係が構築され、同センターへの信頼につながっている。
地域の医療機関との連携は慢性期の患者でも同様に強固だ。年4回開催する連携する医療機関との勉強会では、新しい情報の提供に加え、紹介されてきた患者の診断、治療、経過を報告。症例の共有は地域の循環器医療の向上につながるという。診療科間の風通しもよい。
「心臓病の患者さんは肺や腎臓に合併症が現れることもありますが、どの診療科も電話1本で対応してくれます。当院には約220人の医師が在籍し、専門医も多い。総合力、機動力ともに高いことが強みです」(高橋医師)
目指すのは地域密着型かつ高度な医療の提供だ。
同センターでは、不整脈に対するカテーテルアブレーション治療(以下、アブレーション治療)を、その黎明期である1990年代から実施している。循環器内科部長の田中泰章医師は次のように説明する。
「不整脈にはたくさんの種類がありアブレーション治療の内容も多彩ですが、全体のうち約80%は心房細動に対するものです。心房細動とは、心臓の左心房が1分間に500~600回の速さで震える病気です。血液が滞って血栓ができやすくなり、脳梗塞の危険性が高まります。また、心不全のリスクも上がります」
動悸や不快感などの症状がある人もいるが、約半数は無症状だ。高齢者の増加とともに増え、国内の患者数は100万人以上といわれる。原因は、左心房の肺静脈周囲などから出る異常な電気信号。それを遮断するために、問題の部分の筋肉を壊死させるのが心房細動アブレーション治療だ。
従来のアブレーション方法は高熱で焼いたり、冷やして凍傷にしたりして壊死させるが、近年、より負担の少ない「パルスフィールドアブレーション」が登場(※図表参照)。同センターは2024年11月1日に導入した。
「パルスフィールドアブレーションは高電圧をかけて細胞を壊死させます。熱を使うのとは違って食道や神経といった周辺構造物に影響を与える心配がなく、手術に要する時間も半分程度になりました」(田中医師)
安全性を担保した、より低侵襲のパルスフィールドアブレーションは心房細動治療の大きな前進だ。一方で、パルスフィールドアブレーションだけでは治療が難しい患者もおり、その場合は従来のアブレーション治療を組み合わせたハイブリッド治療を行う。
同センターには、他院で複数回治療を行ったものの再発した人や、アブレーション治療が困難といわれた人も口コミを通じて多く受診する。
「遠方から来院する患者さんも少なくありません。100%治ると言い切ることはできませんが、経験と実績のあるアブレーション治療の“老舗”として、希望を持ってもらえるように誠心誠意対応しています」(田中医師)
心房細動は、虚血性心疾患と異なり治療について患者がじっくりと考える時間がある。
一方で、前述したように症状が明確とはいえず、心電図も心房細動が起こっているタイミングでないと異常が現れない。ある患者は長年体調不良に苦しみ、様々な診療科に通って抗うつ剤を含む多くの薬を飲んでいたが、同センターで心房細動と判明。アブレーション治療を行うと症状が消えた。その後1年かけて薬を減らし、薬が不要になったとき涙を流したという。
不整脈の診断や、治療時期の判断は難しく、治療法の進歩も速い。田中医師らは国内外の研究に積極的に参加し、常にアップデートを図っている。


循環器疾患の救急患者で多いのは虚血性心疾患である。原因は、心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈の動脈硬化だ。動脈硬化により冠動脈が狭くなり、一定以上の運動や動作をすると、胸が締め付けられるような痛みを感じる労作性狭心症(安定狭心症)と、血栓により冠動脈が急速に狭窄、閉塞して心筋が壊死する急性心筋梗塞がある。最近は、前者を「慢性冠症候群」、後者を「急性冠症候群」と呼ぶようになっている。
「急性心筋梗塞の場合は、まず心臓カテーテル検査を行い、血管の閉塞箇所や、その程度を調べます。できるだけ早く血流を再開させる必要があるため、ほとんどはそのまま経皮的冠動脈形成術(PCI)に移行。PCIが困難な場合は、心臓血管外科医によるバイパス手術が行われます」と、循環器内科部長の疋田浩之医師は説明する。
心臓カテーテル検査装置は5台を整備し、専門性の高い看護師、臨床工学技士、診療放射線技師が医師をサポート。PCIは2024年の実績で970件に及ぶ(※詳細は実績表参照)。
「狭心症については命に関わらないと考えている人も多いですが、そうではありません。急性心筋梗塞の一歩手前の不安定狭心症も、急性冠症候群に含まれます。狭心症と急性心筋梗塞を繰り返すケースもあるため、狭心症を軽視せず定期的に検査を受け、必要ならPCIで治療することが大切です」(疋田医師)
動脈硬化が進むと、冠動脈の壁にカルシウムが沈着して硬くなることがある。石灰化といい、急性心筋梗塞のリスクが高くなるが、治療には専用の医療機器や技術が必要であり、同センターには遠方からも紹介患者が訪れる。
現在、増えている心不全にも疋田医師は警鐘を鳴らす。原因の1つが虚血性心疾患だからだ。心不全は徐々に進み、いつの間にか重症化していることもある。
「PCIは80代でも全身状態がよければ可能です。カテーテルを手首から入れるなど低侵襲化が進み、合併症の発生率も低下しています」(疋田医師)
虚血性心疾患でも不整脈でも症状の重い患者が多い同センター。患者1人ひとり全力で取り組み、高度な医療を提供している。

