救急医療に強い病院
社会医療法人緑泉会
米盛病院米盛病院は1969年、整形外科の専門医療機関として鹿児島市内に開院。2014年の新築移転を機に鹿児島県の逼迫した救急医療への貢献を志し、救急医療を充実させてきた。24年8月には同県から救命救急センターの指定を受け「命と人生に向き合う専門病院」として地域の人たちに寄り添っている。
現在の地に新築移転する際「鹿児島県民のために役立てる病院とは何かを考えたとき、救急医療の充実こそ当院の使命だと確信した」と米盛公治院長は振り返る。南北約600キロにわたる広大な鹿児島県は20以上の有人離島を有し、救急医療にとっては制約のある特異な地形をもつ。地域の人口減や過疎化が進むなか、救命救急センター数は全国平均と比べて大幅に少なく、救急医療資源が乏しかったからだ。
新病院開院後はそれまで培ってきた外傷診療の強みを活かしながら救急医療の質向上に注力。脳神経外科、循環器内科、心臓血管外科などの診療科を拡充し、回復期リハビリ機能を充実させて救急からリハビリまで一貫して診療できる医療体制を整えてきた。
副院長で救命救急センター長の冨岡譲二医師は「移転開院時に10年スパンで定めた3つの目標、すなわち災害拠点病院(16年)、基幹型臨床研修病院(21年)、救命救急センターの指定(24年)をいずれも達成することができました。救命救急センターへの指定はゴールではなく新たな地域医療貢献への始まり。初心を忘れず、地域の方々の命を守り、これまで以上に健康な暮らしを支えてまいります」と決意を新たにしている。


CTと血管造影検査が同じ場所ででき、手術も行える救急室。患者様を各検査室に移動させるタイムロスを削減でき、治療時間の短縮や身体的負担の軽減にも繋がる。
救急科には現在、常勤の専従医師14名が在籍。緊急性や専門性の高い脳卒中、急性心筋梗塞、重症外傷などに対応し、高度な専門医療を行なっている。
2023年度の救急搬送数は6568件にのぼり、救急搬入された重篤な患者の約4割が鹿児島市外からの搬入だ。
救急外来からICUに入室した患者の内訳は心・血管領域42%、外傷13%、脳神経系及び呼吸器系9%、消化器系及び代謝系6%と対象疾患に偏りはなく、多様な症例を受け入れている。
同院の救急医療の特徴は主に3つある。①世界水準の医療設備が整い、チーム医療で迅速かつ的確な救急医療を行なっていること②「待つ」だけでなく「そこに行く」機動力を有していること③重症患者から軽症患者まで幅広く受け入れ、総合診療科とも連携していることだ。
①についてはまず「ハイブリッドER」と9つの手術室、ICU(10床)、HCU(16床)などを備えていることが挙げられる。救急科部長の榮福亮三医師はハイブリッドERについて「CTと血管造影検査が同じ場所ででき、手術も行える救急室のこと。これらが同じ場所にあると患者様を各検査室に移動させるタイムロスを削減でき、治療時間の短縮や身体的負担の軽減にも繋がります」と話す。
例えば心筋梗塞の患者が搬送されてきた場合、同院では病院到着から再潅流までの時間は57分※、脳梗塞なら病着からt‒PA静注療法開始まで30分※、血栓回収療法開始までは53分※だ。(※すべて中央値)
救急科副部長の倉田秀明医師は「ガイドラインに定められた基準よりも早い治療開始ができているのも世界水準の医療設備が整っているからこそ。診断から治療開始、そして各診療科へシームレスに繋ぐまで、医師、看護師、放射線技師などの専門スタッフがチーム一丸となってどう動くのがいいのか、常により良い方法を模索、追求しています」と力を込める。
救急科のまとめ役でもある倉田医師が大事にしているのはサーバントリーダーシップ。部下の意見や要望をよく聞いて、それぞれが能力を最大限発揮でき、常にやりがいと向上心を持って勤務に取り組めるよう、職場環境の改善に努めている。

副院長兼救命救急センター長
冨岡 譲二 医師
日本臨床救急医学会理事
日本専門医機構認定救急科
専門医

救急科部長
榮福 亮三 医師
日本外科学会認定外科専門医
日本救急医学会認定救急科
専門医

救急科副部長
倉田 秀明 医師
日本救急医学会認定救急科
専門医

救急科副部長
梅澤 耕学 医師
日本救急医学会認定救急科
専門医
同院では救急医療用ヘリ「Red Wing」を運用。「待つ」だけでなく「そこへ行く」ことができる機動力を有しているのも強みだ(②)。民間の病院が保有する救急ヘリは全国でも数少ない。前述のとおり同県には20を超える有人離島があるが、例えば鹿児島市内から甑島までは、通常移動手段だと何時間もかかるところ、ヘリなら約20分で到着する。
ヘリの運用方法は2つある。一つは県のドクターヘリを補完する「補完ヘリ」としての役割。もう一つは離島や遠方の患者を搬送する「民間ヘリ」としての運用だ。前者は県ヘリが出動中、重複要請があった場合に出動するという、民間では極めてまれな例であり、地域医療に貢献している。後者は命に関わる重症でなくてもヘリを活用することで患者の負担を軽減する、民間としての搬送だ。
「2023年度は256件出動し、うち約9割は補完ヘリでした。民間ヘリとしては十島村や三島村、甑島など個別に協定を締結した自治体の要請に基づいた運用をしています。今後も提携先を増やしていければ」(榮福医師)
また、被災地での活動支援に特化したDMATカー(2台)や医療従事者が同乗するドクターカー(2台)も所有。ドクターカー出動件数は23年度376件。病院前救護(プレホスピタル)の体制充実も図られており多様な状況に対応できている。
救急救命士が17名と多数在籍しているのも特徴で、救急隊からのホットラインやER、各部署との連絡を密にとるコントローラーの役目を果たし、迅速な治療開始を支援している。

「Red Wing」の機体に描かれている「YES」の文字は「YONEMORI EMERGENCY SERVICE」の頭文字をとったもの。どんな患者様も「YES!」と受け入れるという思いが込められている。

同院では重症患者だけでなく軽症の患者を幅広く受け入れている(③)。患者は頭痛、腹痛、めまい、吐き気、鼻血、捻挫、骨折など様々な症状を訴えて外来にやってくるが、どの診療科を受診したらいいかわからず困っている人のためにあるのが総合診療科だ。
救急科副部長で総合診療科を兼任する梅澤耕学医師は「緊急性の低い患者様は総合診療科で対応しています(平日の日勤帯のみ)。当院の救急医は私を含め全員が1次救急から3次救急まで様々な症状に幅広く対応できますので、救急医が緊急性の有無を判断し、患者様の容体に応じた必要かつ適切な処置を行うことができています。該当の診療科へとスムーズにバトンタッチすることで、他科の負担軽減にも繋げられるよう努めています」と話す。
同院のスローガンは「一秒を救う。一生につなぐ。」。最後に冨岡医師は「スローガンには、ケガや病気をしたとき適切な救急処置を施し、各診療科での専門処置、回復期リハビリテーションを経て自宅に戻り、再び日常生活を取り戻すまでをトータルに診療できる病院を目指すとの思いが込められています。これからもスタッフ一同、全力で地域の人たちの命と人生に向き合ってまいります」と語った。