人工関節の先進治療 手術支援ロボット導入病院

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眞島 任史

[取材協力]

日本医科大学
大学院医学研究科 教授
日本人工関節学会 理事

眞島 任史

まじま・ときふみ/1984年北海道大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科人工関節・再生医学講座特任教授、国際医療福祉大学整形外科教授等を経て2017年日本医科大学病院整形外科・リウマチ外科臨床教授、2020年より現職。



膝が痛くても諦めない
筋トレで進行を抑える

 膝や股関節の痛みに悩む方が年々増えています。現在わが国では、65歳以上の男性の2割、女性の3割が関節に何らかの不具合を抱え、膝に限ってみても、800万から1000万人もの方が変形性膝関節症による痛みに悩み、その数は毎年90万人のペースで増え続けています。
 変形性膝関節症は、年齢別では75歳以上、男女別では女性に多く、また、 BMIが25以上の肥満の方は、そうでない方に比べ、人工関節置換術(後述)の適応となる率が高いというデータも報告されています。
 いったん悪くなった膝はもう元に戻らないのかと不安に思う方がいらっしゃるかもしれませんが、痛みの原因である膝関節の変形を遅らせることは十分可能です。そのための手段として、膝を支える筋肉の筋力トレーニングが有効であり、特に大腿四頭筋を鍛える簡単なエクササイズで、膝への負荷を軽減し、痛みを軽減させることができます。また、プールで水中歩行をすることも、関節に負担をかけずに筋力を鍛えることができるとても良い方法です。


膝関節の3大手術法
患者さん毎に使い分け

 筋トレなど患者さんの努力にもかかわらず、膝の痛みが我慢の限度を超え、歩行が困難になったときは手術を検討します。股関節の場合も、痛みのため日常生活に支障を来たすようになると手術の適応になります。
 膝関節の手術治療には、関節鏡手術、骨切り術、人工関節置換術などの方法があり、どの治療を選ぶかは、関節変形の度合いや、患者さん本人が術後に希望する生活の内容や運動の強度を考えて総合的に判断します。
 関節鏡手術は、初期の変形性膝関節症に対して行われ、膝の周囲の皮膚に小さな穴を2~3カ所開けるだけで手術を実施できる利点があります。ただし、関節内で傷んだ半月板や軟骨のささくれを除去することによって一時的に痛みを取ることを目的とした治療であり、膝関節の変形そのものの解決を目指す治療ではありません。
 次に、50~60代の比較的若い患者さんで、治療後もスポーツを続けたい、体を動かす仕事に復帰したいなどの希望を持つ方には、骨切り術を行います。変形性膝関節症の方の膝では、上の骨(大腿骨)から下の骨(脛骨)へ体重のかかるポイントが膝の中央から外れてしまっており、このずれを、骨(脛骨)に切れ目を入れ角度を付けることによって矯正するのが骨切り術の目的です。骨切り術では自分の骨を温存できるので、手術後も術前と同じように膝を動かせるメリットがあります。
 これに対して、変形した関節の骨の表面を削り取り人工物に置き換える治療が人工関節置換術です。60代以上で、関節の変形が進んでいるが、治療後は激しい運動を希望せず、痛みの除去を優先したいと望む患者さんが適応になります。人工物を使うため術後に多少違和感を感じる方はいらっしゃるものの、痛みが取れるという点では、骨切り術に勝っているようです。


手術ロボットの導入で
治療後のQOLが向上

 整形外科領域における技術の進歩の賜物であるこれらの関節治療は、手術支援ロボット「Mako(メイコー)」などの登場により、さらに安全・正確に行うことが可能になっています。
 例えばMakoでは、術前に撮影された患者さんの骨のCT画像に基づいて治療計画を立案し、その計画に従ってロボットアームが対象の骨に近付き、先端に取り付けられたカッターが自動制御で骨を切ったり削ったりする作業を支援します。カッターの角度は0.5度単位で調整され、また、システムに備わったブレーキ機構により、カッターの刃が骨に接する血管や神経を傷つける心配もありません。
 関節手術の精度が向上し、皮膚切開が小さくなることで術後の回復が早くなり、また、人工関節の「緩み」が減った結果、再手術の頻度も低下するなど、患者さんのQOL (Quality of Life)は確実に向上しています。