形成外科治療最前線「組織欠損 きれいに修復」

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貴志 和生

■ 取材協力

慶應義塾大学医学部
形成外科学教室 教授・診療科部長

貴志 和生

きし・かずお/ 1988年慶應義塾大学医学部卒。同形成外科学教室、英マンチェスター大学生物科学部留学、済生会中央病院形成外科等を経て、2010年慶應義塾大学医学部形成外科学教室教授。専門は形成外科一般、乳房再建、悪性腫瘍切除後再建、外鼻再建、母斑・血管腫、瘢痕・ケロイド、褥瘡・難治性潰瘍。日本形成外科学会認定専門医。日本形成外科学会理事長。日本レーザー医学会理事長。



頭の天辺から爪先まで
見た目を正常にする

 形成外科が扱う疾患は幅広く、ケガや傷痕、粉瘤、ホクロ、アザ、口唇口蓋裂など生まれつきの形態異常のほか、乳がんなど腫瘍切除後の身体の再建、リンパ浮腫、顔面麻痺、眼瞼下垂、さらにはリストカットの傷痕の治療なども行います。また、下表にある通り美容外科(美容医療)も形成外科に含まれます。
 つまり、頭の天辺から足の爪先まで、「外から見て正常でないものを正常に戻す・左右対称にする」、そして「整容的にきれいにする」ことにより、患者さんの生活の質(QOL:Quality of Life)向上を目指すのが形成外科です。赤ちゃんから高齢者まで、すべての人を対象にしています。
 治療は主に手術ですが、アザやシミなどにはレーザーも用い、治療に使えるものは何でも使います。再生医療も行われ、黒いアザが身体の大部分を覆う巨大色素性母斑に対する自家培養表皮移植は2016年、皮膚の色が部分的に白く抜ける尋常性白斑に対する自家培養表皮移植メラノサイト保持型は2024年に保険診療となりました。
 いずれも、患者さん本人から採取した小さな皮膚片を培養し、病変部を削り取って移植する治療法です。従来の植皮とは違い、移植用の皮膚の切除を最小限に抑えて広い面を治療できることが大きなメリットです。
 イボ(尋常性疣贅)やホクロに対しては、マイナス196度の液体窒素を含ませた綿棒を押し当て、凍結させて取り去る凍結療法が有効です。保険診療で長く行われてきた治療ですが、その効果が見直されています。


美容医療の課題と可能性
形成外科のさらなる発展

 先述したように美容医療は形成外科の一部ですが、正常な状態をさらに美しくするものなので、自由診療(全額自己負担)で行われます。
 美容医療の需要が高まる中、美容外科クリニックの問題点として、 ①術後の合併症への対応が正しくできていないクリニックが多い、 ②安く勧誘しておいて高額の施術に誘導する(アップセル)、 ③医師以外の人が施術を行う(医師法違反)、 ④都会の美容外科に進む医師の増加で地方の医師不足が進んだり、他の診療科の医師数が減るといったことが指摘されています。
「直美(ちょくび)」の問題もあります。「直美」とは、初期研修(2年間)を終え、すぐに美容外科クリニックに勤務する医師のことです。
 普通、初期研修後は3~5年間の専攻医研修で専門性や技術を磨き、専門医の試験を受けます。形成外科にも専門医制度があり、4年以上の専攻医研修を修めて資格試験に合格した者を形成外科専門医として認定。日本形成外科学会のホームページに一覧表を掲載しています。
 美容医療を含め、形成外科の治療を正しく安全に行うためには、傷が治っていく過程(創傷治癒)、組織の血流の理解、切る、組織を移植する、縫うなどの外科基本手技の習得が必須です。私自身も4年間一般消化器外科を経験し、身につけました。
 二重瞼にする手術など、簡単と思われる手術にも合併症のリスクは必ずあります。日本形成外科学会は、合併症対応を適切に行える医師の育成に力を入れていくつもりです。
 顕微鏡を覗きながら直径0.3ミリ程の細さまでの血管やリンパ管をつなげるマイクロサージャリーは、形成外科医にとって基礎的な技術の1つです。マイクロサージャーリーによって、悪性腫瘍のため上腕の骨と筋肉を大きく切除したものの、背中の筋肉と肋骨を使って腕を再建できた例もあります。
 見た目を正常・左右対称にすること、より美しくすることが、精神面にも良い影響を与えることが分かっています。形成外科医はよりよい治療を追求していこうという意識が高く、今後、治療法はさらに発展していくと期待されます。


こんな病気を治します 形成外科疾患紹介