救急・脳卒中治療に強い病院

病院の実力2026 > 救急・脳卒中治療に強い病院



脳卒中の患者数は、約179万人と推計される(厚生労働省「患者調査・令和5年概数」)。高齢化とともに患者数の増加が続く一方で、脳卒中医療は着実に進歩してきた。医療体制や先進治療、予防医療の現状について、日本脳卒中学会理事長で自治医科大学内科学講座神経内科学部門教授の藤本茂医師に話を聞いた。


藤本 茂

■ 取材協力

日本脳卒中学会
理事長

藤本 茂 医師

自治医科大学
内科学講座神経内科学部門教授



病態別治療と早期受診が予後を左右する

 脳卒中は大きく3つに分けられます。脳の血管が詰まって起こる脳梗塞、血管が破れて出血する脳出血、そして同じ出血性脳卒中であるくも膜下出血です。このうち脳梗塞は、小さな血管が詰まるラクナ梗塞、頸動脈や脳の太い動脈の動脈硬化によって起こるアテローム血栓性脳梗塞、心房細動などにより心臓で形成された血栓が脳へ飛ぶ心原性脳塞栓症が代表的です。加えて、がん、動脈解離、血液疾患、血管炎など、特定の背景疾患に伴って起こる脳梗塞や、十分に検査しても原因が特定できない脳梗塞も存在します。
 重要なのは、脳卒中を一くくりにせず病態や原因に応じて治療と予防を考えることです。脳出血やくも膜下出血では、緊急手術をしなければならない場合もあります。いずれのタイプであっても、症状に気づいてから適切な医療機関へ速やかに搬送されるかどうかが、その後の治療選択肢や回復の可能性を大きく左右します。

脳卒中予防十か条


全国に一次脳卒中センターを整備
24時間365日対応が可能

 脳卒中医療の基盤として、一次脳卒中センター(Primary Stroke Center:PSC)の整備が進んでいます。日本脳卒中学会は全国で971施設をPSCに認定(2025年12月現在)し、24時間365日、t‒PA静注療法を実施できる体制を構築しています。そのうち330施設はPSCコア施設として認定され、血栓回収療法を常時提供できる高度医療機関に位置づけられています。これにより、都市部ではPSCへのアクセスが大きく改善しました。救急現場では、血栓回収療法が必要な患者を適切に見極め、PSCコアへ搬送するためのトリアージの精度向上が求められています。一方で、離島や山間部などでは依然として地域差が残っています。専門医を短期間で増やすことには限界があるため、通信機器を用いて専門医が遠隔から診療を支援するテレストロークが重要な役割を果たしています。
 治療の面では、現在の血栓溶解薬であるアルテプラーゼから、新たにテネクテプラーゼが近年のうちに普及する見通しとなっており、治療時間短縮が期待されています。加えて、ウェアラブルデバイスや皮下のデバイスの普及により、発作性心房細動の検出が進み、適切な抗凝固療法への移行によって再発予防の質も向上しています。
 再発予防においては、診療科横断的な連携が欠かせません。脳卒中と循環器の専門医が連携するブレインハートチームは、奇異性脳塞栓症の診療で大きな役割を果たします。原因となるPFO(卵円孔開存症)に対するカテーテル閉鎖術や、心房細動に関連する左心耳閉鎖術などは、脳と心臓の両方の視点を踏まえた判断が不可欠です。脳神経外科と脳神経内科も、それぞれの強みを生かした補完関係にあり、連携によって治療の質が向上します。急性期治療の後には、回復期リハビリテーション、在宅医療、社会復帰へと支援が続きます。しかし、急性期から地域医療へ移行する際に、抗血栓薬の選択理由や血圧・脂質管理の目標値が十分に共有されないケースも見られます。再発予防には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、過度の飲酒、運動不足など、生活習慣の改善を継続しなければなりません。2022年に設置された脳卒中相談窓口は全国で300を超えました。1施設あたりの相談件数や相談人数は、3年間で2倍、3倍と増加しており、支援ニーズは明らかに高まっています。
 脳卒中は、予防可能であり「ありふれた身近な病気」です。健康診断はもちろん、普段からチェックリストを参考にするなど、主体的に生活習慣を管理することを心がけていただきたいと思っています。


JSS Stroke Center 緊急自動車カバーマップ

JSS Stroke Center 緊急自動車カバーマップ



千葉県総合救急災害医療センター


医療法人 清仁会 シミズ病院


医療法人輝栄会 福岡輝栄会病院