腰・首の病気に強い病院

病院の実力2026 > 腰・首の病気に強い病院

腰や首の痛みに悩む人は超高齢社会を背景に増えています。原因として多いのは変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなど。痛みのほか、しびれや感覚障害、歩行障害、さらには排尿・排便障害が現れることもあるため、正しい診断を受け、適切な治療を行うことが大切です。日本脊椎脊髄病学会理事長で慶應義塾大学医学部整形外科学教室教授の中村雅也氏に伺いました。

中村 雅也

[取材協力]

日本脊椎脊髄病学会 理事長
慶應義塾大学医学部
整形外科学教室 教授

中村 雅也

なかむら・まさや/1987年慶應義塾大学医学部卒。米国ジョージタウン大学留学を経て、2000年慶應義塾大学医学部整形外科学教室助手、04年同専任講師、12年同准教授、15年同教授。24年より日本脊椎脊髄病学会理事長。医学博士。



痛み以外にしびれなどの症状がある場合は要注意

 腰や首の痛みを「年のせいだから」と放置したり、痛み止めや湿布を漫然と続けたりしている人は少なくありません。しかし、神経の圧迫が原因ということもあるため注意が必要です。
 背骨は椎骨という小さな骨がブロックのように連なってできています。その中心部には脊柱管と呼ばれるトンネルがあり、脊髄・馬尾神経という神経の束が通っています。背骨は体を支えると同時に脊髄・馬尾神経を守っているのです。
 ところが、加齢とともに椎骨の変形や椎間板などの変性が起こると、脊髄・馬尾神経を圧迫してしまいます。脊髄から枝分かれして伸びる神経の根元(神経根)が圧迫されることもあります。
 腰部変形性脊椎症は軽いと無症状のこともありますが、進行すると慢性の腰痛が現れ、まれに下肢のしびれも出ます。腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなって馬尾神経や神経根を圧迫する病気です。下肢の痛みやしびれ、麻痺(脱力)のほか、残尿感や頻尿、便秘がみられることもあります。特徴的な症状は、長距離を続けて歩くことができなくなり、歩く・休むを繰り返す間欠跛行(かんけつはこう)です。
 腰部椎間板ヘルニアでは、椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板がつぶれ、中心部にある髄核という組織が後方に飛び出して神経根を圧迫します。腰に負荷のかかるスポーツや仕事が原因のこともあり、20〜30代の若い患者さんもいます。
 頚部では、脊髄が圧迫されて起こる頚椎症性脊髄症と、脊髄から枝分かれして腕へ伸びる神経根が圧迫される頚椎症性神経根症があります。頚椎症性脊髄症の症状は、手足がしびれたり、箸が使いにくくなったり、字が書きにくくなったりする手指の巧緻運動障害や、階段の下りが怖く手すりを持つようになったり、さらに進行すると平地での歩行も不安定になります。頚椎症性神経根症の場合は、肩から腕にかけての痛み、腕や指のしびれが主症状で、首を後ろへそらせると痛みが強くなることが特徴です。腕の筋力低下や感覚障害がみられることもあります。
 患者さんにとって一番つらい症状は痛みですが、筋力低下や感覚障害を基盤とした歩行障害、間欠跛行、手指巧緻運動障害といった神経症状は深刻で、イエローフラッグと言えます。さらに排尿障害や便秘があればレッドフラッグです。
 男性の場合、頻尿や残尿感があると老化や前立腺肥大症だと思いがちですが、神経の圧迫によっても起こることを知っておきましょう。
 イエローフラッグ、レッドフラッグの症状を見過ごさず、脊椎脊髄外科専門医を受診することが肝要です。

脊椎脊髄疾患について


治療効果の見極めと手術のタイミングが重要

 脊髄・馬尾神経や神経根の圧迫を確認するためには、レントゲンやMRIなどの画像検査が必須です。問診や筋力測定、姿勢や歩行のチェックなど診察の結果と合わせて診断します。
 治療は保存的治療と手術的治療に分けられ、まず保存的治療を行うのが原則です。生活習慣を改善して腰の負担を減らすことを基本に、コルセットなどの装具療法、非ステロイド性抗炎症薬などの薬物療法、ブロック療法、理学療法(運動療法など)を組み合わせます。ブロック療法とは、筋膜や筋肉の深部にある発痛点(トリガーポイント)に、局所麻酔薬や抗炎症薬を注射して痛みをやわらげる治療法です。
 保存的治療を適切に行っても症状が改善しない場合や、歩行障害、手指巧緻運動障害、排尿障害・便秘などの神経症状がみられる場合は手術を検討します。神経の圧迫を取る除圧術に加え、不安定になった脊椎の固定術を行うこともあります。手術法は様々ですが、切開をできるだけ小さくし、筋肉などの負担を最小限に抑える「最小侵襲手技(MIS)」が主流となっています。手術中に医師の手技を的確にガイドするナビゲーションシステムや、手術支援ロボットも普及しつつあり、手術の精度の向上につながっています。
 治療におけるもう1つのトピックは再生医療です。脊髄や椎間板の治療で臨床研究が進み、実用化への期待が高まっています。
 腰や首の病気の治療で最も大切なことは、専門医と十分なコミュニケーションで信頼関係を築き、効果を確認しながら保存的治療を進め、必要に応じてタイミングよく手術を行うことです。強い圧迫が長く続くほど神経は傷つき、手術をしても機能障害が残るリスクが高まります。また、感覚障害や歩行障害は転倒につながります。高齢者は転倒の衝撃で脊髄損傷になることがあるため、放置するのは危険です。
 また、腰痛はがんや大動脈解離など命に関わる病気でも起こります。痛みがだんだん強くなったり、安静時痛があったりする場合は、しびれなどがなくても早めに受診しましょう。


社会医療法人 菊田会 習志野第一病院

医療法人 小宮山会 貢川整形外科病院

医療法人 康仁会 西の京病院