急性期の治療後、在宅復帰、社会復帰を目指して集中的にリハビリテーション治療を行う回復期リハビリテーション病棟 。2000年の創設以来、病床数は伸び続けている。脳神経外科、整形外科をはじめ様々な診療科と連携してその人の活動を育む回復期リハビリテーション病棟について、日本リハビリテーション医学会理事長で東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科主任教授の安保雅博氏に話を聞いた。
東京慈恵会医科大学附属病院
リハビリテーション科 主任教授
診療部長
安保 雅博
回復期リハビリテーション治療の対象は、急性期治療は終えたものの心身機能に障害が残ってしまった患者さんです。回復期はリハビリテーション治療の効果が最も出やすく、この時期に集中的にリハビリテーション治療を行うことで在宅復帰、社会復帰の可能性が高くなります 。
例えば、脳卒中の患者さんで片麻痺があっても、発症前に歩いていた人で、急性期病院の早期リハビリテーション治療により自力で15分座れるようになっていれば、回復期リハビリテーション病院で密度の濃いリハビリテーション治療を行うと9割が再び歩けるようになるというデータが出ています 。
リハビリテーション治療はマンツーマンが基本ですが、電気や磁気によって神経の働きを調整する医療機器や、リハビリテーション治療支援用ロボットの活用も広がりつつあります 。
家へ戻るときに大事になるのは自力でトイレに行けることです。その難度は自力で歩くこととほぼ同じなので、回復期のリハビリテーション治療で歩けるようになることは、在宅復帰を目指す上でとても重要な目標になります 。
回復期のリハビリテーション医療も多職種のチーム医療が必須です 。リハビリテーション科医、リハビリテーション科療法士(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、看護師、栄養士、薬剤師、義肢装具士、医療ソーシャルワーカーなどが連携して患者さんを支えます。その際に重要なことは、目標(ゴール)を共有することです。ゴールはリハビリテーション科医の予後予測をもとに、多職種の意見と患者さん・ご家族の意見(どのような生活を送りたいと思っているか)をすり合わせて設定します。
チームは定期的にカンファレンスを行い、患者さんの状態に応じてゴールやリハビリテーション治療の内容を再検討します 。退院前のカンファレンスでは、退院後のリハビリテーション治療や基礎疾患などの治療方針を決め、生活環境の調整も行います 。介護保険サービスを利用する場合は、ケアマネジャーにも参加してもらいます。
チーム医療でリーダーの役割を担うのはリハビリテーション科医です。リハビリテーション医療を必要とする人の増加に伴ってリハビリテーション科医の需要は高まり、日本リハビリテーション医学会と日本専門機構が認定するリハビリテーション科専門医制度も整いました、専門医数は現在約3000人 。専門医制度の19領域中、最も伸び率が高い領域の1つです。
回復期リハビリテーション病院へ移る時期が近づいたとき、患者さん・ご家族が悩むのは病院の選択です。その際はネームバリューや自宅からの距離、建物の新しさではなく、リハビリテーション医療の質で選んでいただきたいと思います 。
見極めのポイントは、リハビリテーション科専門医や、日本リハビリテーション医学会が認定する認定臨床医が在籍していることです。加えて脳神経外科医や整形外科医がいると、例えば片麻痺の患者さんが膝に負担のかかる歩き方をしていたら、すぐに整形外科医が対応するなど多面的な治療を提供できます。
リハビリテーション科療法士や医療ソーシャルワーカーの人員、リハビリテーション医療の実績、退院先(自宅、施設、療養型病院等)の割合などもチェックしましょう 。
これらのデータをホームページで公開している病院もありますが、そうでない場合は見学に行き、直接聞くことをおすすめします。リハビリテーション治療室なども見せてもらい、歩行訓練を行っている患者さんがたくさんいることを確認しましょう 。
見学は、その病院で提供されているリハビリテーション医療の質を知るための大きな手掛かりになります 。
退院支援について確かめることも大切です。自宅、施設、療養型病院など、退院先に応じてどのような支援が受けられるか、また退院先として多い施設名や病院名を聞いておきましょう。
在宅復帰を目指す場合は、在宅療養を支える地域の医療職、介護職との連携が重要です。介護保険申請支援、在宅医療やケアマネジャーとの連携がしっかりしていれば、一人暮らしでも自宅に戻れる可能性はあります。
在宅復帰後もリハビリテーション治療は通所や訪問で継続することができます 。介護事業所が開催するリハビリテーション会議に回復期リハビリテーション病院の医師や療法士も参加し、多職種が協力して包括的なリハビリテーション医療を提供することが患者さんのQOLにつながります。