[取材協力]
全国在宅療養支援医協会 会長
日本在宅ケアアライアンス 理事長
新田 國夫(にった・くにお)
「在宅医療」とは、単に医師が通院困難な患者さんの居宅を訪問して医療を提供することだけをいうのではなく、医師や看護師をはじめ、介護職、薬剤師、リハビリ専門職、ケアマネージャー、行政などの多職種が互いに連携し、人生の最終段階も視野に入れながら、包括的な支援を提供することをいいます。
在宅医療に求められているのは病気を「治す」だけではなく、患者さんの生活の質を支える目的をもって治すこと。すなわち「治し支える」ことがきちんとできているかどうかです。
特に超高齢化で増えつつある85歳以上の方は複数の疾患を持つ方も多く、歳を重ねる毎に生活の困り事も増えます。高齢者の入院原因のトップは誤嚥性肺炎ですが、病院に入院して治療を行うと、家に戻ってからADL (日常生活動作)が低下し、寝たきりになるといった悪循環に陥ることも少なくありません。背景には日頃からの嚥下機能低下や栄養摂取不足などがあり、結果、誤嚥性肺炎に至るわけですが、医師や多職種の人たちが連携して医療のみならず生活全般を支えることができれば、そうならないよう予防することもできるわけです。

訪問診療中の新田医師
治し支える医療を実現するために、各市町村で整備されているのが地域包括ケアシステムです。その形は地域によって様々ですが、患者さんを支援する多職種の人たちの連携がうまくできているかが鍵となります。
中学校区くらいの範囲にかかりつけ医がいて介護をはじめ様々なサービスが密に連携している形が理想です。かかりつけ医は地域の患者さんと信頼関係を築いているもの。日々、それぞれの患者さんの健康状態やライフスタイルを把握し、気軽に相談できる間柄だからこそ、人生の最終段階においても適切な治療やアドバイスが可能になります。ヘルパーさんやほかの職種の人たちも、いつも接していれば患者さんや家族がどんな価値観を持ち、満足のいく暮らしを続けるにはどうするのが最もいいかといったこともわかってくるでしょう。患者さんのことをよく理解して情報を共有すればチーム力が高まり、質の高い寄り添いができるはずです。
近年では自宅にいながら通いや宿泊ができ、訪問看護、介護を受けられる看護小規模多機能型居宅介護を利用される方も増えており、人材不足の中、こうした施設を拠点にサービスを提供する工夫も必要と感じます。
地域包括ケアシステムを築くことの本質は「まちづくり」なんです。「電球を交換して」との依頼を地域の人が手伝えば、一人暮らしなら話し相手にもなってあげられます。日常の生活をサポートすることで、ある程度の額の収入を得られたとしたならば、高齢者を支えると同時に地域の方々の就労支援にも繋がり、住民同士、支え合いの輪がもっと広がっていくでしょう。
「Quality Of Life(QOL=生活の質)」の「Life」を「命」「生活(暮らし)」「人生(生きがい)」の3層で捉え、住み慣れた住まいで生きがいを持って暮らし続けられる環境を、支える側や地域の人たちがともに力を合わせて作っていくこと。それが「最期のときまで穏やかに、そして幸せに暮らせる社会」への道だと思うのです。
