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トップ>HAKUMON Chuo【2013年春号】>【表紙の人】TOEIC930点の女性応援団長

Hakumonちゅうおう一覧

表紙の人

TOEIC930点の女性応援団長

本城 亜利架さん/中央大学経済学部4年

入学式で、神宮球場で、箱根駅伝で。大きな手ぶりと声の限りを出して応援するのは中央大学応援団長の本城亜利架さん、2年連続の女性団長だ。米国ロサンゼルス市生まれ、オーストラリアからの帰国子女は日本の伝統文化を学ぼうと入部した。礼儀正しく、立派な振る舞い、楚々たる風情は大和撫子だ。男臭い感じがする応援団に新風が吹いている。

水を被った

 東都大学野球春季リーグ戦の神宮で、中大野球部は劣勢だった。本城さんは頭から水を被った。手にした大きなやかんは逆さになったまま。あの小柄な女性が…。スタンドに陣取った応援の人々は仰天し、互いに顔を合わせて信じられないという表情だ。春とはいえ寒さが残る昨年4月のこと。準幹部と呼ばれる3年生の気合いの入った応援で三塁側の中大応援席は活気づいた。

 同期の武井勇樹さん(法学部3年=当時=県立栃木高)が大きな太鼓を勇ましく叩く。チアリーディング部が笑顔で踊る、金管バンドのブラスコアー部が校歌や応援歌を奏でる。三位一体の応援はメリハリがある、リズムがいい。見ていて聴いていて、楽しくなってくる。

 リーダーと呼ばれる本城さんらは声量豊かで言語は明瞭。行儀作法が折り目正しいとあって、年配OBの目には「理想の学生」に映る。「試合は負けたけど、応援は日本一!」。今度はOB 諸氏が声を張りあげた。

 本城さんたちは4年生になった。

 「私たちは中央大学の代表として応援し、選手と観客席が一体になるつなぎ役もします。選手たちを支えるために私たちも精神と肉体を鍛えています」

 副団長となった武井さんは4月1日、体育連盟の常任委員長に就任。本城さんと2人で中大体連・中大スポーツを大いに盛り上げていく。

鍛える肉体と精神

 このツートップ、練習には厳しい。野球の試合は3時間を超えるのがほとんど。自動車耐久レースでは6時間ぶっ通しで声を出す。正月の箱根駅伝ではスタートの東京・大手町で、ゴールの神奈川県箱根町で寒風のなか応援する。

 ランニングで基礎体力づくり。応援団は多摩キャンパス第一体育館周辺をひたすら走る。「声は腹から出せ」との教えから腹筋・背筋は欠かせない。

 日常ではこんなメニューをこなしている。応援歌を歌いながら馬跳び。石や重りを持っての腕振り。応援歌リアル百番(リーダー100回)といって、神宮などで行う学生への掛け声練習。さらには空気椅子、箱根の山登り(5区)、ほふく前進、逆立ち腕立て。手押し車。坂道ダッシュ。V字腹筋(腰を支点に足と頭を上げながら応援曲を歌う)。

 こうした練習をほぼ毎日。練習を一つずつきちんとこなすごとに精神も強くなる。できないことができたとき、新しい自分が生まれてくるという。

 本城さんは帰宅後も腹筋を100回、10kgのダンベルを上げ下げする。副団長ほか後輩たちも、また自宅で汗を流す。

 「体を動かすことが好きですね。弟2人とよく遊んでいて、父が『サッカーするぞ』といえば真っ先にボールを蹴っていました。高校野球の甲子園大会もテレビでよく見ていました」。父は極真空手黒帯、柔道黒帯。母はバレーボール選手。スポーツが身近だった。

弟に負けん気

 横浜市のインターナショナルスクール、私立レイモンド学園高時代は部活とは縁がなく、学外で音楽バンドを結成し、ベースを奏でていた。「弟がスポーツに長けていて、私は勝てないなとあきらめていました。大学に入るとき母が『普通の女の子よりはスポーツできるんだから』と後押ししてくれたのがきっかけでした」

 体の底で眠っていたスポーツ好きが頭をもたげてきた。新入生歓迎(新歓)で入部チラシを配っている応援団に近づいた。「それ1枚もらえますか」

 ブースに招かれ、お茶と中大まんじゅうをごちそうになりながら写真を見た。応援団の活動を写したものだった。「面白そうだな」。

 もう一つ興味をひかれたのは同じ帰国子女の先輩がいたことだ。「英検やTOEICの話をする当時4年生の清澤要先輩を『すごいな、素晴らしい』と思いました。勉強ができて、資格が取れて、体づくりもできる。応援団は伝統を守ると聞いているし」

 入学前、友人(男子)に相談していた。「日本の伝統文化を知りたいの。どこに入ったらいい」「それなら応援団がいいよ」。友人は高校時代に応援団に所属。伝統、母校愛、礼儀作法、規律など体験談を聞かせてくれた。

 入部を決めた本城さんは「一緒に入りませんか」と、1年生でありながら新入生に入部勧誘をするまで熱心になっていた。1年次はあつらえた学生服で通学し、髪がショートカットのため男子と間違えられた。

リーダーは責任が重く

「みんなの夢AWARD3」壇上から、日本中にエールを送る

 1月30日、東京・日本武道館の壇上から「私は、中央大学応援団団長、本城亜利架です!」とあいさつしたとき、客席を埋めた8000人の観衆は「オッー!?」とどよめいた。夢を語るイベント「みんなの夢AWARD3」(主催・ニッポン放送、J―WAVE)。

 直前のステージでは話題のアーティスト、泰基博さんが熱唱し客席と呼応していた。熱が残るなか登場した本城さんは、一言のあいさつで場内の雰囲気を変えた。

 先代の府木真衣団長(2013年3月卒業)に続く2代連続の女性団長。いっそう注目される。

 応援団はスポーツ応援のほか、射撃部全日本女子優勝祝賀会、駅伝を強くする会主催選手激励会など多くの会合に招かれる。彼女らが会場入りすると座がぐっと華やぐ。応援団がリードする校歌を歌い、応援歌でさらに盛り上がる。肩を組み合った歌声が響く。

 「会場で多くの人とお話しできるのがうれしいです。『久々に校歌を歌ったよ、学生時代を思い出した』と喜んでくださる。私たちもOBOGと話すことで社会を知り、勉強になります」

 実は悩みもある。リーダーになると責任がズシリとのしかかる。部の運営について周囲からさまざまな声が入ってくる。称賛は少なく叱責がほとんどだ。

 昨年は1年生5人の練習を指揮した。世相は伝統の応援団にも押し寄せている。強い指導をして去られると困る。しかし、優しくして規律が乱れるのも困る。米大リーグ、ドジャースのラソーダ元監督がこう言った。「選手掌握は難しい。手の中の小鳥のようなものだ。強く握ってはつぶれてしまう。弱かったら飛び出してしまう」。本城さんも思案の毎日である。

チア、ブラスコアーの仲間とともに

 待望する話題もある。法政大野球部にいる弟・賢人(けんと)さん=外野手、2年生、法政二高=との姉弟対決だ。「東京六大学、東都大学でそれぞれ法大、中大が優勝して、全日本選手権や明治神宮大会で試合をしようよと言っています。六大学で優勝するまでは弟を応援します」

 応援後は快活な女性に戻る。よく笑い、よくおしゃべりをする。英語を日本語と同じように話す。TOEICは930点(満点990点)英検準1級。

 「清澤先輩は凄いです。この前聞いたら985点って言っていました。卒業しても勉強しているんだと思うと私もやらなくちゃ。どんなつらい練習でもチアやブラスの仲間がいてくれて、励ましがあるからこそ頑張れるんです」

 力が入った。さあ応援歌だ。

 ♪いざ勝鬨(かちどき)を揚げん哉(かな) 力 力 中央 中央

名前の由来

亜利架さんの名前は「アメリカで生まれたからアリカって言うの? とよく聞かれますが違うんです!」と亜利架さん。両親が見ていた人気のテレビドラマ『東京ラブストーリー』が“名付け親”のようだ。ドラマのヒロイン、赤名リカ(女優鈴木保奈美さん)は帰国子女の設定。両親は同じように長女をリカにしたかったが、画数を考えて「亜」を入れたという。亜利架さんは日本語でも英語でも呼びやすい名前、これも両親の願いである。ドラマは1991年1月にフジテレビで放送された。

TOEIC(トーイック)

Test of English for International Communicationの略称で英語によるコミュニケーション能力を幅広く評価する世界共通のテスト。990点満点。860点以上で「ノンネイティブとして十分なコミュニケーションができる」と判定される。「語彙、文法、構文のいずれも正確に把握し、流暢に駆使する能力を持っている」(実施・運営の国際ビジネスコミュニケーション協会資料)

中央大学応援団

前列右は武井副団長、中大体育連盟常任委員長を兼ねる

1946(昭和 21)年創部。3部門に分かれていて、応援団リーダー部、応援団チアリーディング部、応援団ブラスコアー部(金管バンド)が一体となって応援する。

▼チアは独自に全日本学生チアリーディング選手権大会に毎年出場。昨年12月の第24回大会では決勝に進出した。競技は既定の2分30秒にチームワークのよさを表現する。タワーと呼ばれる組み体操などを展開。集中力を持続して「笑顔の真剣勝負」をアピールする。

▼ブラスコアーはリーダーらと同じく、学生服・女子制服で正装する。「響かせよう音と熱意と歓声の声」をスローガンに演奏はもちろん、チアと一緒に声援もしている。こちらの笑顔も爽やかと評判だ。