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市民公開講座 CLL 慢性リンパ性白血病を知る、支える

開催リポート

 「慢性リンパ性白血病(CLL)」をご存じですか。欧米に比べ日本国内の患者数は非常に少なく、血液がんの一種ですが、病気の性質や治療法が十分に知られていないのが現状です。そこで2026年7月5日、東京都内において、CLLの認知を広げ理解を深めるため、フリーアナウンサーの木佐彩子さんの進行のもと、専門医である柴山先生、青木先生とCLL当事者による市民公開講座が開催されました。

主催
読売新聞社
後援
日本新薬株式会社、日本イーライリリー株式会社

座長挨拶

座長挨拶を行う柴山浩彦先生

座長: 柴山浩彦先生

大阪医療センター血液内科 科長
輸血療法部長

患者数少ない病気
まずは“知る”ことから

 慢性リンパ性白血病(CLL)は、病名に「白血病」という言葉が入っています。そのために、長期入院を伴う治療や骨髄移植を連想される方が多いのですが、それは急性白血病の一部に対する治療イメージであり、CLLは急性白血病とは別の疾患といえるほど、病気の特性も治療法も大きく異なっています。
 日本国内では患者数が非常に少ないため、その実態はあまり知られていませんが、10年ほど前から治療効果の高い新薬が次々と開発され、現在では治療法も著しく進展しています。この市民公開講座で、CLLへの理解を深めていただければ幸いです。

講演

講演する青木定夫先生

演者: 青木定夫先生

新潟薬科大学
医療技術学部 血液学 教授

CLLを知る

—— その特性と広がる治療選択肢

急性白血病とは別の病気

 慢性リンパ性白血病(CLL)は、「白血病」という名前から不安を抱く方が多いのですが、急性白血病とは別の病気です。骨髄や血液中の白血球ががん細胞になるため白血病と呼ばれますが、がんの中でも悪性度が低い方で、直ちに生命を脅かす病気ではないので、過度に恐れる必要はありません。
 国内の年間新規患者数は約2000~3000人で、米国の6分の1から10分の1です。診断時の年齢は70歳前後が中心ですが、若年層の発症もあり、年齢と進行の速さに相関はありません。多くは無症状で、健康診断の白血球数の高さから偶然見つかります。

診断後は経過観察から

 CLLは一般的ながんと異なり、早期治療という考え方が当てはまりません。早く治療を始めても予後(病気の経過)は変わらず、かえって負担を早くから背負うことになるためです。
 診断後は、治療が必要になるまで専門医のもとで経過観察します。これを「Watch and Wait(ウォッチ・アンド・ウェイト)」といい、私は見守り期間とも呼んでいます。実際、患者さんの約3分の1は生涯治療を必要としません。見守り期間中、日常生活に制限はありませんが、手洗いなど一般的な感染予防には努めてください。
 治療を始める目安となるのは、貧血や血小板減少の進行、脾臓(ひぞう)やリンパ節の腫れによる症状のほか、体重減少、強い倦怠感(けんたいかん)、原因不明の発熱や寝汗といった症状があらわれた時です。白血球(主にリンパ球)は、数値がどれだけ高いかよりも、どのくらいの速さで増えているかが重要です。急激に増える場合は治療の対象になります。
 現在は従来の抗がん剤ではなく、病気の仕組みに直接働きかける分子標的薬が主流で、多くは飲み薬です。一つの薬が効きにくくなったり、体に合わなかったりしても、ほかに多くの選択肢があります。CLLは長く付き合う病気ですが、適切に治療を続ければ、CLLでない方と平均寿命は大きく変わらないとされています。主治医とよく相談し、ご自身の生活を大切に過ごしていただきたいと思います。

トークセッション

トークセッションの様子

共に考えよう、CLLのこと

Q1:CLL(慢性リンパ性白血病)のこと、ご存じですか

事前アンケート結果。病気の名前を聞いたことがある程度48%、ある程度知っている31%、詳しく知っている4%、今回初めて知った17%

※本プログラム参加登録時の事前アンケート調査より(7/2時点)

CLLと診断されたらどう伝えるか

木佐 ここでは患者さんの不安や、周囲にできるサポートを一緒に考えます。齊藤さんは2005年にCLLと診断されたそうですね。
齊藤 人間ドックで白血球の異常を指摘され、総合病院を受診しました。「白血病」という言葉に不安を覚えましたが、まずは経過観察(Watch and Wait)だと。早期発見・早期治療ではないのかと戸惑いましたが、CLLを理解するにつれて落ち着きました。その後08年、18年と治療を重ね、現在は3度目の治療選択の時期です。
木佐 本日の参加者への事前アンケートでは、「病名を聞いたことがある」程度の方は半数ほど。まだ十分に知られていないように感じます。齊藤さんも打ち明けるか迷われたのでは。
齊藤 経過観察中は無症状で、飲酒も運動も旅行もできるため、勤務先にどこまで話すか、話すことで特別扱いされないかと悩みました。ただ治療を開始したら、薬の副作用の影響なども考え、話しておくほうがよいと思います。
青木 患者さんは経過観察の間も大変な心の葛藤を抱えることを意識し、医師としても丁寧に向き合うようにしています。
柴山 白血病と聞くと会社側も動揺しがちですが、CLLは日常生活を送りながら付き合う病気です。過度に恐れる必要はないと周囲が知ることも重要です。

Q2:(医師以外で)悩みを打ち明けるのは、どのような人ですか?[複数回答可]

当日アンケート結果。自分の家族86%、親しい友人27%、職場の同僚12%、患者同士4%、SNSでつながっている人1%、打ち明けられる人がいない9%。

※当日聴講者へのアンケート調査より

治療と就業を両立させ長く付き合う

木佐 参加者へのアンケートでは、悩みを打ち明ける相手は家族が中心で、家族以外に話したことがない方が半数ほどでした。
齊藤 私もそうでしたが、CLLは家族以外には説明しづらい病気です。経過観察中は普段通り過ごせても、「いつか治療が必要になる」という漠然とした不安や悩みが常にあります。年齢や立場などで個人差はありますが、対話を重ね、その人の声、不安や悩みに耳を傾けていただけたらと思います。
青木 患者さんご自身が病気の特性を説明するのは難しいものです。診断時や治療開始時には、ご家族も一緒に説明を聞かれることをおすすめします。
木佐 治療と就業の両立支援について、患者さんからどんな声が上がっていますか。
齊藤 治療を続けるためには治療費も必要で、できる限り働き続けたいという声をよく聞きます。今年4月には「改正労働施策総合推進法」が施行され、事業主に両立支援が努力義務として定められました。職場で病気を伝え良好な関係を築くには、日頃のコミュニケーションも欠かせないと思います。

「CLLを知る、支える」ために必要なこと

木佐 最後に、「CLLを知る、支える」ために必要なことは何でしょうか。キーワードをフリップに書いていただきました。
齊藤 「Communication, Learning, Listening with you → I will be peaceful」と書きました。これは、「あなたと共にコミュニケーション(C)をとり、学び(L)、耳を傾ける(L)ことで、私たちは安心して過ごせる」という意味です。その頭文字である「CLL」を、患者・家族の会の行動指針にもしています。

齊藤治夫さんがフリップを掲げる様子

青木 私は「適切な情報の選択と理解」です。CLLに限らず、何らかの病気にかかると、親しい人が善意で「こんな治療法もあるよ」とすすめてきたり、SNSでさまざまな情報を目にしたりすることも多いと思います。しかし、なかには真偽不明の情報や古いものも少なくありません。信頼できる情報を選び取り、自分で理解していくことがとても重要です。

青木定夫先生がフリップを掲げる様子

柴山 私は2点お伝えしたいと思います。1つは、CLLは「予防・予測ができない疾患」だということ。日本ではまれですが、予防や予測ができないからこそ、誰もがなりうる病気であり、この疾患に対する理解を深めていただきたいと思っています。もう1つは、「主治医と長く付き合う疾患」だということ。CLLは非常にゆっくりと進行する慢性の病気ですので、薬の選択や治療方針などについては、相性の合う主治医と十分にコミュニケーションをとりながら、しっかり付き合っていただきたいと思っています。

柴山浩彦先生がフリップを掲げる様子