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※掲載の肩書は取材当時のものです。

【G-Days】 素晴らしき銭湯の世界

宇佐見 和希(学習院大学法学部政治学科4年、学習院大学任意団体銭湯愛好会 会長)

 この度、任意団体銭湯愛好会に豊島区の銭湯について寄稿する機会をいただき、微力ながら銭湯の魅力と価値をお伝えできればと思います。

銭湯とは?

 単に「お金を支払って入浴する施設」と言うとスーパー銭湯や健康ランドを連想する人が多いのではないでしょうか。しかし、銭湯はそれらの施設とは明確に異なる点を含んでいます。といっても、両者について設備や規模等の優劣はないということは誤解のないように申し上げておきます。

 銭湯の営業は正式には『公衆浴場業』といい、公共施設の側面を強く持っています。一方その他の温浴施設は、娯楽施設に分類できます。 銭湯は入浴料が公共料金として(物価統制令)設定されており、行政の補助を受けながら住民の衛生環境の保全と向上がなされているのです。

銭湯と温泉?

 当会の活動中にも、「銭湯って温泉じゃないんでしょ?」という言葉を耳にします。これは、大きな誤解であると指摘しなければなりません。

 そもそも、温泉の定義は温泉法によると、「①源泉の温度が 25℃以上②特定の物質の含有量」の二つの条件のうちどちらか一つを満たしていることとされています。銭湯であっても条件②を満たしている所は多くあり、両者を比較・区別の対象とすることは不可能で、優劣をつけるものでもありません。

銭湯の歴史

 銭湯の価値について述べるにあたり、時代による変遷に触れなければなりません。

 都内での銭湯の最盛期は1960年代であり、2687軒近くあったと言われています。家庭風呂が無く、風呂屋に行くことが身なりを整える手段として主流だった当時、銭湯は地域住民の日常の一部として地域性に富んだ発展を遂げました。この地域性とは今現在も残る銭湯の特徴の一つでありますが、当時のような住民同士のコミュニティや、マナー教育の社交場としての側面は縮小してしまったと思われます。その要因の一端に、家庭風呂の普及と地域コミュニティの衰退が上げられます。

 現在、銭湯の価値として一般的に認識されているものは主に文化性・歴史性であると考えられます。銭湯の持つ非日常性に惹かれ、マニアや同好会が増え、銭湯文化を応援する動きもでています。銭湯業界もこれらのブームに呼応し、銭湯の日(10月10日)や節句に合わせてイベントを行っており、異業種間のコラボなども活発化しています。しかし、それでも解決できない問題が山積しているのが現状です。代表的なものに、燃料や後継者、収益の問題があげられます。

現代における銭湯の新たな価値

 現在の銭湯業界にはいくつかの課題がありますが、今回は特に燃料問題を中心に記述していきます。

 今年3月に豊島区内の銭湯で行われた間伐材のPRイベントは、残余している間伐材による林業障害、更には里山環境や地球温暖化等への影響を周知するために行われました。これは銭湯業界が行政や産業について、銭湯ユーザーの地元住民にダイレクトにPRできる取り組みであり、環境問題への積極的姿勢でもあります。

 銭湯には、大きく分けて薪を利用する釜とガスを利用する釜の2種類があります。

 銭湯の社会的価値として、災害時に衛生環境の保全を提供する機能があり、先の東日本大震災では大きく活躍をしました。その際営業できた銭湯は主に薪釜の銭湯で、水さえあれば湯が沸かせるという強みがあります。

 また、経営上の燃料コストが薪とガスでは、圧倒的に薪の方が安いという特徴があります。

 しかし、純粋な燃料としての薪は手に入りにくく、現在は建築廃材を最終利用しています。それも長くは続かない状況であり、銭湯によっては薪が手に入らず、営業を短縮せざるを得ないこともあります。薪の利用については様々な取り組みが行われており、その一つが先程のPRイベントです。間伐材が里山の障害となるならば銭湯で燃やしてしまえばいい。それらを行政や銭湯、林業で一体となり処理できれば大きな社会的価値になります。さらに一部の銭湯では、風呂釜の余剰エネルギーを再生利用しようとしており、地域社会に影響を与える場として、新たな価値と方向性を模索しはじめています。

リノベーションと利用者

 今、銭湯は施設的変革の過渡期を迎えています。戦後、銭湯の数がピークを迎えた1960年代後半から半世紀以上が経つにつれ、多くの銭湯が老朽化しました。それを受け、ここ数年で補修、改装、改築等が進んでいます。構造に観光的役割を狙ったもの、地元住民の満足を第一にしたもの、オーナーの趣味を追求したもの等、多岐にわたります。昨今、リノベーション銭湯はメディアにも取り上げられ、若い世代からも注目を集める良い傾向にあります。特に若者は、シャワーだけで済ませることも多く、湯船につかる機会は減っているのかもしれません。ですが、大きな浴槽にゆったりと浸かることは心身の健康に有効であると医学的にも認められています。

銭湯を利用するとは…

西池袋にある銭湯「妙法湯」

 現代の若者は、自分達だけの内向き且つ閉鎖的な空間で楽しむ術を多く持っていると私は感じます。

 一昔前は、居酒屋で偶然隣に座った方々とその場限りの賑やかな語らいがあったり、ご近所付き合いがあったりと、公共コミュニティと接する機会が多様でした。しかし今現在、居酒屋はチェーンの個室が増え、ご近所関係も希薄化し、若者は多様なアクター(世代間・職業間等)と触れ合う機会を逃してしまっていると思います。私は、その若者達に銭湯のコミュニティを有効に活用してもらいたいと常日頃考えています。単に風呂に入るだけでなく、世代を超えた出会いや他愛もない交流が、社会に出る上で大きな財産になりうるでしょう。

 まずは、皆さんが銭湯の湯に浸かり、そこから肌で、心で感じてもらえればと思っております。

豊島区の銭湯と銭湯愛好会…

 残念なことに現在、学習院大学近辺(目白地域)の銭湯はほとんど壊滅状態で、最も近い銭湯は大学から徒歩15分程、鬼子母神の「高砂湯」だと思われます。

 本来は、大学近辺で学生の憩いの場として機能することが望ましいのですが、少々難しいかもしれません。

 ですが、学習院生が遊びに行く池袋や高田馬場(新宿区ですが…)には目白に比べ比較的銭湯が多く残っています。大学の帰り道、サークルの食事会の前など、懇親を深めるのに銭湯を利用してみるというのも面白いでしょう。豊島区のある銭湯で話を聞くと、学習院生の利用も多少はあるそうです。日頃銭湯を利用している学生は、周りの人を誘ってみるのもいいかも知れません。

 銭湯の場所や営業時間等の基本情報は、当会である程度収集しております。銭湯でイベントをやってみたいという学生もいるかもしれません。その際はひと声いただければ、当会は積極的にお手伝いさせて頂きますのでよろしくお願いします。

私と銭湯「ツールとしての銭湯」

銭湯愛好会を通して繋がった方々と

 銭湯愛好会を創るほどの銭湯好きである私ですが、会として学生に銭湯の魅力を知ってもらいたい気持ちは公に対するものです。何故、私が銭湯を好きなのかを改めて掘り下げると、上京して独り暮らしのむな寂しさとバイト続きの疲労がピークに達したとき近くにある銭湯を利用したことに機縁します。その後、銭湯愛好家の方々との出会いやその広がりが私の大学生活に華を沿えてくれたことは間違いありません。

 銭湯とは何か、という命題は人それぞれだとは思いますが、自分なりに発見することが最も大切なのかもしれません。

 今回、私の銭湯信念をメインに寄稿しましたが、少しでも魅力を感じていただけたら幸いです。そして、自分なりの銭湯の魅力を見つけてもらえると、もっと銭湯を楽しむことができると思います。

<協力>
豊島区浴場組合 支部長
東京都公衆浴場業生活衛生同業組合 理事・広報副委員長
城北浴場組合連合会 副会長
東京都民生委員・児童委員
豊島区選挙推進委員
西池袋4丁目 副町会長
西池袋4丁目商店街 副会長
妙法湯オーナー 柳澤幸彦

[2018.10.10]
プロフィール

宇佐見 和希

宇佐見 和希(学習院大学法学部政治学科4年、学習院大学任意団体銭湯愛好会 会長)
ブログ:http://g-1010-sento.hatenablog.com/
Twitter:@g.1010.sento
Facebook:@G.1010.sento

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