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グローバルな感覚を育む多様性豊かなキャンパスライフ

グローバル化への新しい風

田中 ご着任から間もなく1年になりますが、法政大学の印象はいかがですか。

弓削 まず、やる気のある学生が多いと感じています。実は、私の授業にどのくらい来てくれるのか、とくにゼミにも学生が集まるのか心配していました。新参者ですし、すべて英語で講義を行うことにしていましたからね。でも、ゼミには20名以上の応募があり、それも、「英語で学べるから選んだ」という学生が多く頼もしく感じました。
5月に開催した「法政グローバルデイ」では、学生の皆さんが主導して企画の段階から積極的にかかわる姿が印象的でした。

田中 本学は、留学、ボランティア、インターンシップなど学生が海外での活動にチャレンジする機会をたくさん用意していますし、そうしたものは学外にもある。それをあらためて紹介して、もっと活用してもらおうというイベントでしたね。おかげさまで大変有意義なものになりました。
国連開発計画の駐日代表でいらした弓削先生には、「国連アカデミックインパクト(UNAI)」など、国連との連携を深めるうえでもご尽力いただきました。

弓削 国連と大学のコラボを支援するUNAIはとてもフレキシブルなプログラムで、国連が掲げるさまざまな目標に沿う内容の取り組みであれば、形は問わないところが良いですね。法政の取り組みも、イベントあり、シンポジウムあり、映画上映会ありとさまざまでした。
私が担当する「外交総合講座」は、毎回テーマと講師が変わるオムニバス講義なので、ここに「国連難民高等弁務官事務所」をはじめ国連諸機関の日本事務所の代表を何人かゲストスピーカーとしてお招きし、現場の生の情報をお話していただいたのですが、これもUNAIの一環でした。

田中 国連はじめ国際機関で働くにはどうしたらいいのかというユニークなセミナーも開催していただきましたよね。

弓削 はい、外務省の国際機関人事センターの方に来ていただきまして、私もお話をさせていただきました。

田中 国連の活動への関心、海外への興味を深めた学生が、この1年でかなり増えたのではないかと予想しています。文字通り本学に新しい風を吹き込んでいただき、たいへん感謝しております。

SGUとしてなすべきこと

田中 また昨年9月には、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)」に、本学の構想(テーマ:「課題解決先進国日本からサステイナブル社会を構想するグローバル大学の創成」)が採択され、今後10年間補助金をいただいて大学のグローバル化に取り組むことになりました。これについてもいろいろとお知恵を拝借したいと思っています。
先ほど法政の学生はやる気があると言ってくださいましたが、逆にまだやりたいことが見つからない消極的な学生の能動性を引き出すために、大学は何を提供すればいいとお考えですか。

弓削 学びのモティベーションを高めるための刺激を与えることが大学の重要な役割で、なかでも大きな刺激になるのは人との出会いだと思います。
私はニューヨークのコロンビア大学に通っていたのですが、アパートをシェアした二人はフランス人とハイチ人でしたし、キャンパス自体がグローバルというか、ダイバーシティそのものでした。もちろん当時は、これらの言葉が今のようには使われていませんでしたが、国籍だけでなく、生まれ育ちや学びたい分野を含めて、とにかくいろいろな学生が大学内にいることが大事だと考えていたのでしょう。貧困層のための奨学金制度なども充実していました。

田中 日本の大学は、ランキングを上げるための方策のひとつとして、グローバル化に取り組むケースがあるのですが、本来は、教育のポリシーとしてそうした環境を整えなければいけないということですよね。

弓削 そのようなキャンパスだと、国際問題といわれるようなものが、身近な友達が現実に抱えている問題だったりするわけですよ。そのような環境で学んでいれば、私自身がそうだったように、卒業後グローバルな仕事にも、敷居をほとんど感じずに入っていけるでしょう。

田中 本学の学生にも、是非そうなってほしいところです。

学生一人ひとりが日本からの発信源に

田中 もうひとつ、コミュニケーションの道具として通用する英語力をどう身につけさせるか、やはりこれが大きな問題です。

弓削 アジアなど世界各国の学生と接する機会があると、彼ら同士はお互いに母国語ではない、なまりのある英語を使って活発に議論しているのに自分はそこにうまく入れない……と、ショックを感じる日本人学生は多いようです。
ひとつには、日本人には正しい英語を使わなければという観念が強いことも、しゃべれない一因であると思います。だから私は授業で学生に言うんですよ、inでもonでも通じるし、単語がわからなかったら発言の中で、そこだけ日本語を使ったっていいんだと(笑)。
そうすると、先ほど触れた「外交総合講義」の質疑応答の時間など、ゲスト講師が外国人でも、質問が途切れなくなります。

田中 なるほど、実は高校までに学んだ英語で十分通用するにもかかわらず、心理的な問題のほうが大きいのですね。
それから、質疑応答というのはとても大事で、とくに大教室だと、教員が一方的に「教える」授業というのがまだまだ多い。ここも改善が必要ですね。

弓削 質問だけでなく意見も述べてもらい、私の考えに対する反論があれば、それも歓迎します。予習のための材料をきちんと与えておくことも大切です。手を挙げていない学生もあてることがわかったので、みんな緊張感を持って真剣に聞いてくれます(笑)。
自分から発言すると、それに対して違う意見がたくさん返ってくる。この「考え方にもダイバーシティがあるということ」を体験することもとても大切です。

田中 海外で他の国の学生たちと合流して、みんな自国のことを話しているのに、自分は日本のことを話せなかったとショックを受けて帰ってきた学生もいました。大学のグローバル化を考えるとき、日本文化に関する教育を充実させることも重要な要素ですね。

弓削 海外の友人から、日本のような素晴らしい国の国籍を持っていて羨ましいとよく言われるんですが、日本の本当のよさはまだ十分伝わっていません。日本の発信力が不十分だということがしばしば問題になりますが、それは国やメディアだけの責任ではなく、実は学生一人ひとりが発信源になりうるし、ならなければいけないんですよね。

田中 今日は法政がまさに取り組もうとしている課題について、たいへん有益な示唆をいただきました。ありがとうございました。


法政大学法学部国際政治学科教授 弓削 昭子(ゆげ あきこ)
コロンビア大学バーナード・カレッジ卒業後、1982年ニューヨーク大学 大学院修了( 開発経済学修士)。1976年より国連開発計画(UNDP)勤務。 タイ、インドネシアで勤務後、1994年から98年までUNDPブータン事務所常駐代表。 フェリス女学院大学教授等を経て、2006年からUNDPニューヨーク本部管理局長(兼・国連事務次長補)、UNDP駐日代表・総裁特別顧問を歴任。2014年4月から法政大学法学部国際政治学科教授。日本国際連合学会理事。

法政大学総長 田中 優子(たなか ゆうこ)
法政大学総長。1952年、神奈川県に生まれる。法政大学文学部卒。同大大学院人文科学研究科修士課程修了後、同大大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。2014年4月より法政大学総長に就任。専攻は江戸時代の文学・生活文化、アジア比較文化。行政改革審議会委員、国土交通省審議会委員、文部科学省学術審議会委員を歴任。日本私立大学連盟常務理事、大学基準協会理事、サントリー芸術財団理事など、学外活動も多く、TV・ラジオなどの出演も多数。

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