日吉屋の京和傘
伝統の技と挑戦
読売新聞は、日本の伝統文化を守り、次世代に伝えるため、伝統的な技術やデザイン、美術品等を用いた2025大阪・関西万博公式ライセンス商品を制作、販売している。150年以上続く京和傘の老舗店舗「日吉屋」(京都市上京区)とのコラボレーションで生まれた和紙とビニールの和傘は、素材を厳選し無駄を省いた京都らしい美意識で作られた至高の逸品だ。 日吉屋の職人らに京和傘の魅力や万博への思いを聞いた。
■シンプルな美しさと高度な技
日吉屋は番傘や蛇の目傘、野点傘など、京都市が伝統産業に指定する「京和傘」を継承する唯一の担い手だ。寺社や仏閣、祇園祭などの伝統行事に使われる傘の新調や修復も手掛けている。同社マーケティング課の武本愛華さんは「シンプルで華美な装飾がなく、最高級の素材と技で仕立てられている」と京和傘の特徴を説明する。
竹骨や和紙、傘の開閉の要となる木製の「ろくろ」など、それぞれ専門の職人がつくった材料が日吉屋の工房に集められる。和傘職人によって骨組み作り、和紙の張り付け 、防水効果を持たせる油引きなど数週間~数カ月をかけて傘に仕上げられる。構造が複雑で高度な技が必要となる。
万博商品の傘も、定番の番傘と同様に、職人が竹骨を一本一本つなぎ合わせることから始まる。和傘に開閉機能が備わった安土桃山時代から受け継がれている伝統的手法だ。
骨の数が通常8本程度の洋傘と違い、和傘は30本から70本と多く、この傘も48本の竹骨から構成される。洋傘が骨の針金の張力で生地を内側から押し上げて開くのに対し、和傘は細く割った多数の竹骨で和紙を支えるようにして開く構造だ。そのため、開いた時のシルエットが和傘は真っすぐ末広がりに、凛とした美しさを見せる。畳んだ時の姿も、和傘は生地が骨の内側に畳みこまれ、1本の棒のような独特の姿になる。
EXPO2025 VI WAGASA WORLD 99,000円(税込)
和紙傘の「EXPO2025 VI WAGASA WORLD」には「多様ないのちが融け合い、響き合う生態系」という万博のコンセプトを表現した公式デザイン「ID」(通称:こみゃく)がプリントされている。強化和紙を使用し、絵柄を印刷する初めての試みで、制作を担った職人の藤田早希さんは「半分ずつ印刷して、柄がずれないよう張るのに神経を使いました 」と振り返る。和紙にたたみ癖をつける「姿付け」でも美しい柄が映えるよう丁寧な作業を心掛けたという。「こみゃく」が傘全体に広がる大胆なデザインの和傘。武本さんも「伝統に命を吹き込み、現代に生きる一本」と太鼓判を押す。
EXPO2025 Vinyl WAGASA ミャクミャク 86,625円(税込)
「EXPO2025 Vinyl WAGASA ミャクミャク」は、京和傘の伝統とモダンが融合した、使い捨てないビニール傘だ。竹を組み合わせて骨組みを作るところまでは通常の和傘と同じ。傘地には中の開閉構造が観察できるよう、透明のビニールを採用。厚さはわずか0.08mmで、竹骨との相性の良さを探るため試行錯誤を重ねてたどり着いたという。
1枚物の薄いビニールを均一に張る作業はいつも以上に繊細さが必要だったが、藤田さんは「透明なビニールなので竹骨の美しさがよく分かる。水や汚れにも強く、日常でも使いやすい」と出来栄えに自信を持つ。
■大切に使い続ける心を
伝統的な製法を守りつつも、時代に合わせて挑戦と進化を続ける京和傘は、使い込むほど味が出て愛着がわく。日吉屋では末永く使用できるように修復も行っている。大阪・関西万博では、資源の循環や持続可能な社会の実現も重要なテーマだ。「日本人は本来、ものを修理して大切に使い続ける習慣がある。万博商品を通じて和傘の魅力とともに、簡単に使い捨てにはしない日本的な考え方を世界の人々に知ってほしい」と藤田さんは願いを込める。
日吉屋 京都本店
読売新聞は、日本の伝統文化を守り、次世代に伝えるため、伝統的な技術やデザイン、美術品等を用いた2025大阪・関西万博公式ライセンス商品を制作、販売しています。