沖縄らしさ詰め込んだ「やちむん」
シーサーの枠を超えた立体造形への挑戦
読売新聞は、2025年大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」をデザインした沖縄県の伝統工芸「壺屋焼」を発売した。沖縄の焼き物は、方言で「やちむん」と呼ばれ親しまれており、300年以上の歴史を持つ窯元・育陶園(那覇市)が、代々取り組んできたシーサーなどの造形技術を昇華させて、ミャクミャクやちむんを完成させた。
育陶園の代表取締役、高江洲若菜さんに、壺屋焼の魅力や次世代への思いを聞いた。
壺屋焼は、1682年に琉球王朝が各地に分散していた3つの窯場を現在の那覇市壺屋の地に統合したときから発展したとされ、県内で認証されているやちむんの中で最も歴史が古い陶芸だ。中国や朝鮮、本土の技法も取り入れながら、独自のスタイルを育んできた。
沖縄の赤土は、陶芸には比較的扱いづらい土として知られる。ろくろでの成形が難しく、加えて赤い色がついているため、絵付けの前に白く化粧を施す必要があるためだ。「先人たちがどのように工夫すれば色々な表現ができるか、試行錯誤の中で壺屋焼らしさが生まれてきた。加えて手作業なので、沖縄の人の大らかな人柄や気質、感性がデザインにも表れている」と語る。
今回のミャクミャクやちむんにも沖縄らしさ、壺屋焼らしさを詰め込んだ。体の青色は、沖縄の海をイメージして透明感のある色合いに。今回用いた銅を含む「辰砂釉(しんしゃゆう)」という釉薬は、通常赤色に着色する際に使われるが、燃焼の温度を変えて酸化させることでエメラルドのような色に変化する。これをコバルトに混ぜることで、みずみずしい青色を表現した。
顔部分の赤色にもこだわった。通常、素焼き、本焼きの2回窯入れを行うが、顔料を塗り重ねてもう一度焼き上げた。高江洲さんも「ミャクミャクを一目見た時から、赤と青の色彩が沖縄のイメージにもぴったりだと思った。職人が筆で塗るからこそできるゆらぎも合わさって、うまくハマったと思う」と胸を張る仕上がりだ。
今回のミャクミャクやちむんの製作には次世代への思いもある。土という同じ素材を使って、これまでの器やシーサーの枠を超えた立体造形を作ることができれば面白い、というアイデアを温めてきた。「伝統工芸というふうに指定された時点で、良くも悪くも壺屋焼はもう変わらないものだと見られてしまう。でも歴史を遡ると、色々な技術を取り入れていくからこそ壺屋焼きなんです」
ミャクミャクやちむん作りには、本土ではよく用いられる「泥漿鋳込(でいしょういこ)み」技法で成形した。様々な立体造形に挑戦するために、この10年の間に育陶園でも取り入れた技法だという。シーサーの場合は、粘土を型に押し当てて成形するが、ミャクミャクを同じように作ると、土の厚みによってひび割れや破裂などのリスクが高かったからだ。新しく技法を取り入れてきたからこそ、完成にこぎつけた。
340年以上続いてきた伝統をどのように継承していくのか。高江洲さんは「伝統っていうのは、その時代に必要だって思ってもらって、残っていくもの。昔のものをずっとやるっていうのはちょっと違うと思っている」と力を込める。
器やシーサー、そのほかの新しい立体造形も、時々の需要を敏感にキャッチし、応えられるよう、色々な人との交流を大切にしているという。「今まで先人たちも、新しく吸収したものを自分たちらしく昇華させてきたし、やっぱり私たちもこれからやっていくべきこと。どんどん進化して、壺屋焼をつないでいけるような窯元でありたいです」。
EXPO2025 ミャクミャク やちむん 49,500円(税込)
壺屋焼窯元育陶園 本店
読売新聞は、日本の伝統文化を守り、次世代に伝えるため、伝統的な技術やデザイン、美術品等を用いた2025大阪・関西万博公式ライセンス商品を制作、販売しています。