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北欧の伝統と最新フードテックが創り出す、持続可能な食の未来

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森と海、湖に囲まれた豊かな自然と厳しい気候が生み出してきた北欧料理は、地元食材を最大限に活かし、自然との調和を重視した料理へと大きな変化を遂げています。シーフードからフードテックまで、持続可能な食の未来をつくる北欧5か国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)の取り組みとイノベーションを紹介する特別プログラム「ノルディック・フードデー」が2025年9月2日、大阪・関西万博の北欧パビリオンなどで開催されました。

北欧を代表する食品企業30社超がフードフェアに集結

 万博会場近くのホテルでは、午前中に「北欧フードフェア」が開催され、北欧5か国およびデンマークの自治領フェロー諸島から30社を超える食品関連企業が出展しました。資源保護や持続可能性への取り組みなどが紹介され、日本の食品業界関係者らが、熱心に説明を聞いたり、試食したりしていました。

 スウェーデンからは、プレミアムチョコレートとギフト用菓子を専門とする「Dream of Sweden」や、ポップなデザインが世界各国で人気の「Bubs(バブス)」キャンディやビスケットなどを販売する「Orkla Snacks」などが出展。「Orkla Snacks」の担当者は「『カワイイ』が大好きな日本の皆さんにもきっと喜んでもらえます。日本でも幅広く販売していきたい」と意気込んでいました。

 フィンランドは、国内最大の乳業メーカー「Valio」や老舗の菓子・パンメーカー「Fazer」が、抗生物質フリー畜産や世界最高水準の安全性を誇る乳製品・菓子類を紹介。冷凍野菜のリーダー的企業「Apetit」が、新鮮で安全な冷凍食品のラインアップを紹介しました。

 デンマークは食品バイオソリューションで世界をリードする「Novonesis」やフードロス削減アプリで国際的に注目される「Too Good To Go」が参加。水産業ではグリーンランドとフェロー諸島の企業が北大西洋の恵みを生かした高品質シーフードを紹介しました。

 ノルウェーは、「MOWI」「SalMar」など世界有数のサーモン生産者が持続可能な養殖の取り組みを発信しました。収穫量1%未満のプレミアムなサーモンも並んだ試食コーナーが大いににぎわいました。また、バイオテック系スタートアップ「NoMy」が、日本の発酵文化と北欧のフードテックをつなぐ革新的な事例として、麹菌を活用した「マイコプロテイン(微生物由来たんぱく質)」の開発を紹介しました。

 アイスランドからは、清浄なアイスランドの海域から持続可能な方法で調達された最高級シーフードを扱うグローバル企業「Icelandic Seafood」が、再生可能エネルギーを基盤としたクリーンな食品生産を紹介。試食コーナーにはキャビア、サーモン、サバ、赤魚といった幅広いラインアップが並びました。
Orkla Snacks(スウェーデン)のブースではポップなデザインの菓子「Bubs」をアピール
Apetit(フィンランド)はPREMIUM ARCTIC PEASなど新鮮な冷凍食品を紹介
MOWI(ノルウェー)のブースはプレミアムなサーモンの試食コーナーが大にぎわい

ランチセッションで北欧の「食」への取り組みを味わう

 お昼には、北欧の食文化を体感するランチセッションが大阪・関西万博の北欧パビリオンで開かれ、北欧の海産物や豚肉、日本の豆腐などをアレンジしたスカーゲン(オープンサンド)などの特別ランチが振舞われました。

 冒頭、フェロー諸島の外務・産業・貿易大臣のシリド・ステンベア氏が登壇し、フェロー諸島独自の自然発酵による保存食文化「レスト」を紹介。北欧の自然・文化・社会に根ざした料理哲学を示すため、北欧各国のシェフたちよって2004年に策定された「ノルディック・キッチン・マニフェスト」がもたらした成果と国際的な広がりにも触れ、北欧が持続可能な未来に向けてさらに挑戦していく決意を語りました。
独自の保存食文化「レスト」を紹介するフェロー諸島のシリド・ステンベア外務・産業・貿易大臣

 その後、当日のランチメニューを手掛けたシェフ、セバスティアン・ヒメネス・ガルシア氏と会場とのディスカッションとなりました。ガルシア氏はフェロー諸島の首都トースハウンのレストラン「レスト」のエグゼクティブシェフで、フェロー料理を現代的にアレンジするスタイルによって「ノルディック・キッチン・マニフェスト」の理念(地域性・持続可能性・自然との共生など)を体現している気鋭のシェフです。

 ガルシア氏は「北極圏の食文化は、自然と共に生きる知恵そのものです。保存や発酵の技術は『サステナブル』という言葉が生まれる前から受け継がれてきたもので、世界が直面する課題に多くのヒントを与えられると信じています」とコメント。日本の食文化については「発酵文化や食材を使い切る精神には学ぶべきことが多くあります。昆布やみそ、しょうゆといった発酵の知恵は、北欧の伝統と深く響き合っています。未利用の資源をどうやって価値に変えていくか、という発想は日本から大きなインスピレーションを得ています」と語りました。

ランチメニューをふるまうセバスティアン・ヒメネス・ガルシア氏

プレスカンファレンスで北欧の最新フードテックを紹介

 午後からは、プレスカンファレンスが開かれ、北欧5か国から食品産業を代表する企業や政府関係者が登壇し、各国の特色ある取り組みを紹介しました。まず、ノルウェー政府代表フィン・クリスティアン・オーモット氏があいさつを行い、日本と北欧の食文化が「自然への敬意」「四季と旬を大切にする姿勢」の点で共通していると指摘。長く厳しい冬、豊かな海と森という風土に根ざした、シンプルでありながら奥深い味わいを持つ北欧の料理の特徴や哲学を語りました。塩漬けや発酵など食品を保存する知恵や技術が日本と共通していると話すと、会場の多くの人がうなずいていました。

あいさつするノルウェー政府代表フィン・クリスティアン・オーモット氏

 スウェーデンは、植物性たんぱく質やオーツ麦(燕麦)を中心とした食品から、遊び心あるプレミアムスイーツまで、伝統とイノベーションが共存する多彩な食の魅力を発信しました。「未来を見据える」「思いやる」「信頼できる」「グローバルに成長する」という四つの視点から、健康志向と楽しさを両立しているスウェーデンの食への姿勢が強調されました。

 フィンランドは、清らかな自然と厳しい気候が生む「クリーンな農業」を紹介。農薬や抗生物質の使用を抑えた畜産や、オーツ麦やライ麦など北欧に適した穀物の栽培など、自然環境と調和した持続可能な食糧生産の強みをアピールしました。また、フィンランドとスウェーデンが主導するプロジェクト「Nordic Oats」(オーツ麦を軸にした食と健康・環境の研究開発計画)を日本でも展開していくことが発表されました。

 デンマークは、Royal Greenland社など食品産業のリーディングカンパニーによる持続可能なシーフードの供給システムなど、食を巡る産業全体を支えるエコシステムが紹介されました。またデンマーク自治領・フェロー諸島の外務・産業・貿易大臣による力強いメッセージもあり、北大西洋の恵みを生かした新たな食の可能性が示されました。

 ノルウェーからは、魚の内臓や骨、皮などの水産副産物を活用して「マイコプロテイン」を開発するなどの次世代フードテックが発表されました。40年ほど前、ノルウェーのサーモンから日本の「サーモン寿司」が誕生したエピソードも披露され、「持続可能な食の未来を共に築いていこう」と呼び掛けていました。

 アイスランドは再生可能エネルギーによる食料生産や魚の副産物を余すところなく活用する「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)」の取り組みを紹介。「100%フィッシュ・プロジェクト」として国際的に注目されています。「ともに島国で、農林水産業の持続可能性を守っていく姿勢も日本と通じるものがある」などの指摘がありました。

フィンランドの「クリーンな農業」を紹介する農林省事務次官のペッカ・ペソネン氏

ビジネスセミナー「食の未来へ日本と北欧の関係強化を」

 続くビジネスセミナーでは「北欧が考える食のサステナブルな未来」をテーマに四つのセッションが行われました。「セッション1:北欧の幸せのレシピを日本に」では、ノルウェーのカフェブランド「Fuglen」が日本の市場で成功した事例から始まり、北欧のクラフトビールなどが世界的にヒットしている背景が語られました。さらに、北欧の自然や季節感などをイメージしたクッキーやトリュフチョコレートなどで知られるスウェーデンの菓子ブランド「Dream of Sweden」が、味だけでなく、デザイン性や贈り物文化との親和性を通じて北欧の幸福感を伝えていることが紹介されました。北欧の「食」が単なる商品ではなく「ライフスタイル」として日本にも根付いていることが実感できる内容でした。

 このほか、「身体と地球のためのクリーンフード」「北欧のシーフードの持続可能性」「サステナブルな未来に向けた先進技術」の三つのセッションがありました。セミナー全体を通じて、北欧の食品産業が「幸せ」「健康」「環境」「技術革新」など多様な切り口で、持続可能な未来の食の在り方を示していく姿勢が示され、共通する価値観を持つ日本との協力関係の深化への期待が寄せられました。

「セッション1:北欧の幸せのレシピを日本に」で討論するパネリストの皆さん

 大阪・関西万博の北欧パビリオンのテーマは「ノルディック・サークル~北欧と共に、より良い明日へ~」です。今回のイベントで紹介された北欧の食の伝統、そして未来の姿は、日本と北欧が「持続可能な未来の食のシステム」を共に築いていく第一歩となりました。