医療課題解決 日本から
アストラゼネカ社長 堀井貴史さん
読売新聞大阪本社版朝刊
製薬大手のアストラゼネカは、大阪・関西万博が掲げるテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に共感し、万博に参画することを決めた。堀井貴史社長は「万博のテーマは我々が目指す未来と一致する。人類と地球が繁栄できるよう、万博を通じて、持続可能な医療の提供に向けた連携と行動を呼びかけたい」と語る。
同社は英アストラゼネカの日本法人で、2023年の日本での医薬品の売上高は2位の4960億円に上る。がんのほか、循環器や腎臓、呼吸器の疾患の治療薬に強みを持つ。
万博では、慶応大の宮田裕章教授が手がけるテーマ館と英国が出展するパビリオンに協賛する。具体的な内容は明らかにしていないが、主に世界が直面する医療的な課題に対し、アストラゼネカが考える二つの解決策を共有していく。
一つは、企業が強みを持ち寄り、新たな医療システムを作り出す試みだ。堀井氏は一例として、昨年、富士フイルムと共同開発した肺がんの化学放射線治療を支援する医療情報システムを挙げる。アストラゼネカが集めた1900症例のCT(コンピューター断層撮影法)画像をデータベース化しており、同種の症例の治療法を参照することで、医師の経験に頼らずに治療計画を策定できるという。
万博の舞台となる日本は、高齢化の進展で慢性疾患の患者が増えており、課題先進国とされる。堀井氏は「日本で解決の手段を見つけることができれば、世界の一助となる」と話す。
もう一つが気候変動対策だ。世界では気候変動を起因とする死者が増えており、世界経済フォーラムは50年までに1450万人増加すると予測する。気温の上昇に伴って感染症や慢性疾患が増え、コロナ禍のパンデミックのように当たり前に医療が受けられなくなる懸念がある。
アストラゼネカは対策の一環として、出張時に使う交通機関を二酸化炭素(CO2)の排出量が多い航空機から新幹線に切り替えた。さらにJR東海、西日本と協力し、社員が新幹線を利用する際、社員の乗車分に、再生可能エネルギー由来の電力を充ててもらう仕組みも昨年4月に実現した。30年までに世界で2億本を植樹する取り組みも進めている。
堀井氏は「気候変動は21世紀の公衆衛生上の危機だ。だが、我々1社では何もできない。万博は世界の英知が結集する素晴らしい機会となる。世界を巻き込んで議論していきたい」と力を込める。
(松本裕平)