感覚を共有できる通信
NTT 大阪・関西万博担当統括部長 吉川勲さん
読売新聞大阪本社版朝刊
4月に開幕する大阪・関西万博でNTTが示すのは、次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」が可能にする未来のコミュニケーションの姿だ。実現すれば、空間そのものをリアルタイムで別の場所に送ることができるようになる。大阪・関西万博担当統括部長の吉川勲氏は「距離の壁を越え、感覚を共有することで、理解が深まる未来社会を見せたい」と意気込む。
NTTはパビリオンで、万博会場(大阪市此花区)にいながらにして、万博記念公園(大阪府吹田市)のパフォーマンスが目の前で行われているかのように楽しめる「空間伝送」を披露する。3D映像と音声でパフォーマンスを再現するほか、人の動きによって生じる振動をセンサーで読み取り、パビリオンの床を同じように揺らすことで、振動も瞬時に伝えられるという。
吉川氏は「(万博公園の)空間そのものが目の前に現れ、(パビリオン内の)空間と混じり合う。将来的には味覚や嗅覚も含め、五感が伝送できる時代が来る」と強調する。
それを可能にするのが、大容量のデータを遅れることなく、高速でやり取りできるアイオンだ。電気信号の代わりに光を用いることで消費電力を抑えられる利点もある。
2030年代には、伝送の容量を従来の光通信の125倍、消費電力を100分の1にすることを目指している。実現すれば、スマートフォンの充電が1年に1回で済むようになるなど、暮らしが大きく変わる可能性がある。
NTTは会場内にアイオンの通信網を敷設し、関西空港とも結ぶ。各国政府や企業がアイオンを利用できるようにしており、生物学者の福岡伸一氏がプロデュースするテーマ館を含め、10以上のプログラムで活用される予定だ。吉川氏は「より良い未来社会の実現に向け、アイオンをどう活用していくか、多くの人に知恵をもらいたい」と語る。
NTTはオンライン上に会場を再現する「バーチャル万博」を手がけ、来場者の希望や混雑具合に合わせて最適な周遊コースを示すアプリも提供する。吉川氏は「未来社会の一端に触れ、思いをはせることでイノベーション(技術革新)が起きることを期待したい」と話す。
高市由希帆