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健康医療クロスイノベーションラボ シンポジウム 健康管理は「つながる」時代へ ―わたしのデータと未来の医療―

読売新聞大阪本社版朝刊

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 産官学と市民の協働による新しい医療・ヘルスケアのあり方について考えるシンポジウムが4月5日、JR大阪駅北側に開業した「グラングリーン大阪」で開催されました。大阪・関西の健康医療分野の重要な拠点となる「中之島クロス」「グラングリーン大阪」の本格始動に合わせ、一人ひとりが健康寿命の延伸に向け、行動変容を起こす大切さを考える機会となりました。

※登壇者の所属・肩書は、イベント時のものです。

 

【オープニング(ビデオメッセージ)】

澤 芳樹
健康医療クロスイノベーションラボ 理事長、未来医療推進機構 理事長、 大阪けいさつ病院 院長

未来医療 実装目指す

 関西には12の大学医学部が存在し、医療・ヘルスケア分野で高度なシーズ(種)を数多く生んでいます。しかしアントレプレナーシップ(起業家精神)を教育し、スタートアップをビジネスにつなげるエコシステムが確立されておらず、社会実装の面で世界に後れを取っています。

 中之島クロスは、再生医療などの未来医療の研究開発・産業化を目指す国際拠点として、医療機関や企業、スタートアップ、支援機関などが一つ屋根の下に集積します。研究開発と実践の場を兼ね備えた施設は世界にも類がなく、大阪・関西万博の盛り上がりとともに、様々な国との連携が始まっています。日本のヘルスケアビジネスの拠点として、未来医療を実装してまいります。

 

【プレゼンテーション①】 グラングリーン大阪のまちづくり

谷口 丹彦
阪急阪神不動産 執行役員開発事業本部 副本部長(都市マネジメント事業担当)

市民参加型のリビングラボに

 大阪駅前の一等地に誕生したグラングリーン大阪は、約 4.5ヘクタールの都市公園を中心に、中核機能施設、オフィス、ホテル、商業施設等を備える新しいまちです。南側の芝生広場に続き、北側には2027年にかけて「うめきたの森」を整備。都心にいながら水辺や森で生物の多様性を感じていただけます。

 「みどり」と「イノベーション」の融合による豊かな未来生活「Osaka MIDORI LIFE」をコンセプトに、公園を訪れる方々、MIDORIパートナー企業、そして中核機能施設「JAM BASE」に集う大学・企業・スタートアップなどが交流する中で、新しい製品やサービスを生み出していくチャレンジングなまちを目指しています。世界に誇れる市民参加型リビングラボとして、魅力ある価値体験を提供してまいります。

 

【トークセッション①】 一人ひとりが輝くために、サイエンスができること

ロート製薬株式会社 代表取締役会長
山田 邦雄 氏

大阪大学名誉教授、同大学院医学系研究科寄附講座教授
吉森 保 氏

■コーディネーター
フリーアナウンサー
八木 早希 氏

山田 邦雄 氏
吉森 保 氏

「長寿」は幸せか? 超高齢化社会の日本が進む道は?

八木
超高齢化社会について様々な課題が語られます。
吉森
良くないイメージが強いんですけれども、私は人口減の中で高齢者が社会の中心として頑張るようになれば、かえって社会が良くなるように思います。そのためには、病気を予防して健康寿命を延ばすことが大事です。
山田
日常を元気に過ごす、趣味に取り組む、コミュニティーで活動する。それらが実現できると世界に先駆けるモデルになると思います。ただ、日本人は病気になっても医師が何とかしてくれるという依存心が少し強い。その辺の意識を変えていかないと。
吉森
予防意識もですが、まず「科学的に考える」姿勢を身につけることです。科学技術の進展が目覚ましい今、基本的な科学の知識を身につけて、自身で論理的証拠を基に科学的に考えることは、生き残るためにも、また社会を良くするためにも必要です。
山田
サイエンスの世界では、かつては正しいとされていたことでも、時間の経過とともに新しいことがわかり、そうではなくなることが結構あります。定説を疑う、自分で考えることが大事です。
吉森
その通りですね。「高齢化社会は良くない」という溝にはまると、その方向でしか考えられなくなりがちですが、いろいろな可能性を考えることが大切です。

サイエンスの役割とは? 「老化」の進行に介入できるのか?

八木
吉森先生は細胞の再生をつかさどるオートファジー(自食作用)の研究がご専門です。不老長寿に大きな役割を担っているということですが。
吉森
生物にはオートファジーをはじめ恒常性を維持する仕組みがあり、ハダカデバネズミのように老化しない生き物も実際に存在します。仕組みがある以上、人間の老化にも介入できるのではないかというのが研究者の考えです。
山田
当社はヒトの脂肪などから採取した間葉系幹細胞を利用し、組織の役割や機能を回復させる再生医療研究に取り組んでいます。病気やケガで損なわれた組織の持つ機能を回復させるのに可能性があるのではと考えています。
八木
どこまで踏み込むか、倫理面の議論も必要です。
吉森
専門家任せにせず、一般の方も議論に参加できるよう科学的リテラシーを持つことが重要です。
山田
企業の間でも社会貢献的な役割を果たそうとする意識は高まっています。グラングリーン大阪や中之島クロスに多くの企業が参画しているのは、その表れだと思います。

大学と企業の連携に大切な視点は? 市民が参加する「リビングラボ」への期待は?

八木
大学と企業の連携を進めていくには、どのような視点が大切でしょうか。
吉森
基礎研究には国の支援が必要ですが、民間はフットワークが軽く、先進的な考えの企業もたくさんあります。ウィンウィンの関係をつくり、今以上に大学は企業と連携すべきだと考えます。
山田
大学は、社会全体が知性的な面で若くあり続けるための大事な場です。企業人やシニアクラスの人がどんどん学びに来るプラットフォームとなることに、これからの日本の可能性があるのでは。
八木
「リビングラボ」には何を期待されますか。
山田
新しいものを生み出していくことです。「老化」は年齢ではなく、新しいことにチャレンジしなくなること。社会自体が若くあり続けられるよう、チャレンジし続ける仕組みを作らねばなりません。
吉森
日本人は物理的年齢を気にし過ぎ。私は50歳過ぎでフルマラソンを始め、60歳過ぎで起業しました。一人ひとりが意識を高く持ち、何かにチャレンジしてほしいですね。
山田
年を取っても元気で支える側でいることが働きがい、生きがいになります。若い世代をどう支えるかを共通のゴールにして日本社会が回っていけば、新しいモデルができるのではないでしょうか。
八木
一つの思考の溝から抜け出し、常にアップデートしていく社会の一員に、私もなりたいと思います。



■コーディネーター

フリーアナウンサー
八木 早希 氏

 

【プレゼンテーション②】 UHA味覚糖が考える未来のヘルス&ビューティー

松川 泰治 氏
UHA味覚糖 執行役員 バイオ開発ディビジョン ディビジョンリーダー

「おいしさ」で健康寿命延伸を

 お菓子は食事に比べて少量で満足できる上に「おいしい」ため、サプリメントの材料として考えると、手軽で摂取しやすい、おいしいから続けやすいという効果が期待できます。医療機関や大学等との共同研究では、患者さんの薬の飲み残しという課題の解決につながる結果が得られています。また、硬めのグミを継続的に摂取していただくことで、高齢者のオーラルフレイル〈口腔(こうくう)機能の衰え〉の改善にも一定の成果を得ています。

 現在はさらなる展開として、消化管手術後の患者さんに多い腸閉塞(へいそく)を、「おいしい味」という刺激を与えることで防止できないか、阪大病院と共同研究を進めています。また、不足栄養分を補うといった従来のサプリから一歩進め、オートファジーのような、加齢によって低下する細胞の機能に注目した次世代サプリを、吉森先生たちと共同で開発し、その啓発も行っています。

 これからもお菓子会社が得意とする「おいしさ」で社会とつながり、健康寿命の延伸に貢献したいと考えています。

 

【トークセッション②】 働く人のウェルビーイング共創 ―リビングラボで共に描く健康経営の未来

スマートバリュー デジタルガバメント事業部門 執行役
上野 真 氏

SUSTAINABLEME 代表取締役
後藤 友美 氏

PHRサービス事業協会 運営・管理委員会 委員長
久司 敏史 氏

■ファシリテーター
健康医療クロスイノベーションラボ 事務局長
吉田 美里

上野 真 氏
後藤 友美 氏
久司 敏史 氏
吉田 美里
吉田
従業員の健康を維持することを未来への投資と捉え、戦略的に健康づくりに取り組む経営スタイルが「健康経営」です。推進する上での課題は何でしょうか。
久司
企業としては効果を可視化しにくいこと、また生活習慣を変えてほしい従業員ほど健康行動をとらないという2点が課題だと思います。
後藤
健診やストレスチェックなどでデータは集まっていながら、分析・活用が十分なされていないように思います。また、企業が健康経営に取り組もうとしても、従業員に「やらされている感」があって「自分ごと化」できていないことも課題かなと感じます。
上野
非医療機器の広告規制により、ヘルスケアサービスの効果をPRしにくい点も影響しているように思います。私たちはリアルの場で最先端のヘルスケアサービスを知り、体験していただこうと、グラングリーン大阪の南館に「SLOW AND STEADY(スローアンドステディ)」を開業しました。
吉田
働く人がヘルスケアサービスの開発に主体的に関わっていくことも大事ですね。
久司
当協会には様々な業界の約130社が集まり、PHR(パーソナルヘルスレコード=個人の健康・医療データ)を活用したヘルスケアサービスの普及推進を図っています。ユーザーの声を聞く機会が少なく、接点を増やす仕掛けをつくる必要性を感じています。実際にサービスを試していただいているところを見て、感想を伺えればサービスの改善・向上につながるので、オープンラボのような場があれば積極的に関わっていきたいです。
後藤
サービスをつくる時には、どのようにしてユーザーに愛着を持ってもらうかという視点が大事だと思います。また、医療従事者として20 年間臨床に関わってきた経験からいうと、「ヘルスケア」という言葉自体、「痩せなさい」「禁煙しなさい」という義務感と結びついて感じ取られ、とっつきにくくなっているように思います。もう少しなじみやすい言葉に置き換わると、使いやすさも変わってくるのではないでしょうか。
上野
スローアンドステディでは、スタッフが体験のご支援をするとともに、感想などをヒアリングし、来てくださった方と一緒にサービスを育てていくということをやっています。「あれは私が育てた」みたいなサービスがここからいっぱい出てくることを期待しており、それが一人ひとりの愛着や、能動的に使ってみようという気持ちにつながるのではと思っています。
吉田
サービスをさらに良いものとしていく過程にユーザーが関わり、提供する側と共にサービスの完成を目指していく仕組みづくりができたらいいなと思いながら聞かせていただきました。グラングリーン大阪には、新しいヘルスケアサービスが生まれる拠点として都市型リビングラボを設けています。ぜひ本日ご参加のみなさまに、このプロセスに関わっていただければと思います。

「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

【健康医療クロスイノベーションラボとは?】

 大学、企業、市民、地域が計画段階から参加し、意見を出し合って研究機関とともに実証実験などを進める「リビングラボ」に健康・医療分野で取り組もうと、2019年10月に設立。電通と阪急阪神不動産、読売新聞大阪本社の3社が設立にかかわる。健康寿命の延伸と健康医療産業の振興を目的に、研究成果の社会実装および普及の支援に取り組む。


【主催】一般社団法人健康医療クロスイノベーションラボ
【共催】大阪大学大学院医学系研究科・医学部附属病院 産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ
【後援】一般財団法人未来医療推進機構、一般社団法人うめきた未来イノベーション機構
【協力】さくらインターネット株式会社、株式会社スマートバリュー
【協賛】