歯を失う最大の原因、歯周病とは?
私たち歯科医師が日々向き合う二大疾患が、虫歯と歯周病です。どちらも口の中の細菌による感染症で、なかでも歯周病は歯を支える組織が徐々に壊れていく病気です。よく誤解されますが、歯の表面につく歯垢(プラーク)は食べかすではなく、その大部分が細菌の塊です。細菌によって歯ぐきに炎症が起きた状態を「歯肉炎」といい、歯周病の初期段階にあたります。放っておくと炎症が奥へ広がり、歯を支える骨や組織にダメージが蓄積する「歯周炎」へと進みます。
歯周病は、歯と歯ぐきの溝(歯周ポケット)が4ミリ以上に深くなった状態で診断され、患者数が世界で最も多い病気としてギネス世界記録にも認定されています。中高年になるほど罹患率が高まり、歯を失う最大の原因となっています。
歯周病の要因と日ごろのセルフチェック
歯周病の怖さは、初期は痛みが出にくく見過ごされやすい点にあります。「痛くて噛めない」状態になって初めて歯科を訪れる方が多いのですが、そのときにはかなり進行しています。ですから、日ごろから鏡などで歯ぐきをチェックしてみてください。健康な歯ぐきは、薄いピンク色で引き締まり、歯と歯の間のラインがV字型をしています。ここが丸みを帯びてU字に近づいたら、腫れているサインです。歯磨きやフロスで血がにじむ、口臭が気になるといった変化にも注意してください。
歯周病は「細菌」という原因に加え、体の側の要因である「宿主」、そして「環境」の3つの因子が重なり合って進みます。「宿主」の面では、歯石や歯並びの悪さ、歯ぎしりのほか、糖尿病・骨粗しょう症などの全身疾患があると、進行しやすくなります。「環境」では、喫煙やストレス、低栄養が歯周病を悪化させます。心当たりがあれば歯科で相談してみてください。
セルフケアとプロケアの両輪で予防を
セルフチェックはあくまで「気づき」のきっかけですから、診断は専門家に委ねてください。歯科医院では、歯周ポケットの深さや歯の揺れ具合を1本ずつ調べ、レントゲンなどで骨の状態まで詳しく知ることができます。
「歯周病は治らない」と思っている方も多いのですが、原因である細菌を取り除けば、症状は十分に改善します。その基本が、細菌を減らして増えにくくする「プラークコントロール」です。ご自身のセルフケアと、プロによるケアの両輪で進めます。
セルフケアの中心は歯磨きです。1日2回以上、歯間ブラシやデンタルフロスも併用しましょう。いずれも歯周病のリスクを下げるとわかっています。ただし歯石は歯ブラシでは取れないため、プロのケアと組み合わせます。歯科医院では専用の器具で歯石や汚れを取り除き、一人ひとりに合った磨き方も教えてもらえます。継続も重要で、定期的な受診が歯周病リスクを約3割下げるという報告もあります。
治療の効果は、進行度合いによって変わります。初期の歯肉炎なら治せますし、中等度まで進んだ歯周炎も進行を止められます。近年では失われた骨や組織を再生させる治療も進んできました。ただ、末期まで進むと歯を残すのは難しくなります。ぜひ痛くなる前に受診し、早期発見・早期治療を心がけてください。