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健考カルテ最新の医療や健康管理の秘訣などについて専門家がわかりやすく解説します。

新たにひろがる治療の選択肢 ~胃がん治療最新情報~

国立がん研究センター
東病院
院長
大津 敦(おおつ・
あつし)先生

 一般的にがんは2人に1人がかかるとされ、身近な存在になっています。特に日本人に多いのが胃がんですが、がんが治る人・がんと共存できる人が増え、亡くなる人は減ってきています。国立がん研究センター東病院・院長の大津敦先生は「胃がんの治療法は近年とても進歩しています。新しい治療法の選択肢が増えていますので、正しい知識を持ちましょう」とアドバイスします。

Q胃がんにかかる人は増えていますか?
A近年、胃がんにかかる人は横ばい
死亡率は低下傾向に

 地域がん登録全国合計がん罹患(りかん)データ(2014年)によると、胃がんにかかった人の数はがん全体の中で大腸に次いで2位、男性で1位、女性では乳房、大腸に次いで3位と報告されていて、これは男性の9人に1人、女性の19人に1人に相当します。高齢化が進むにつれ、胃がんにかかる人は増加傾向でしたが、衛生環境の変化により胃がんの主な原因となるピロリ菌の感染率が若年層で低下しているため、ここ2〜3年は統計上では横ばいです。

 胃がんの死亡率は、男女ともにトップの時期が長く続きましたが、2015年の部位別がん年齢調整死亡率は、男性では肺がんに次ぐ2位に、女性では大腸、肺、乳房に次ぐ4位となっています。早期発見と治療法の進歩によって、胃がんによる死亡率は低下傾向にあります。

*年齢構成の違いを考慮して補正した死亡率

Qどうすれば胃がんの早期発見ができますか?
A内視鏡検査が有効

 胃がんは早期の段階では、症状がほとんどありません。早期発見のためには胃X線検査(バリウム検査)や内視鏡検査を受けることが不可欠です。特殊な胃がんとして、胃壁の中に広がって粘膜の表面にはあらわれない「スキルス胃がん」が全体の約1割を占め、早期発見が困難とされていますが、それ以外の胃がんは内視鏡検査で早期診断が十分可能です。

 自治体が行う胃がん検診の受診率は2007年の32.5%から2016年には43.8%(男性)に上がってきています。検診率の向上によって早期発見が進み、胃がんの約半分はステージ1の早期の段階で見つかっています。

Qがんの進行期によって治療法はどのように変わりますか?
A早期ほど体への負担が少ない

 胃がんは手術が標準的な治療とされており、がんのある部位やステージによって切除方法が異なります。がんが胃の粘膜に限局している場合は、内視鏡による切除が可能です。がんが胃の粘膜下層に達していると外科手術になりますが、腹部に小さい穴をあけて行う腹腔鏡下手術が可能な場合もあります。近年は術後の回復が早く患者さんにとって負担が少ないため、腹腔鏡下手術を行うケースが増えてきています。さらに進行したがんの場合、再発予防のために開腹手術の後に化学療法を行います。更に手術が不可能とされていた進行がんでも、先に抗がん剤でがんを縮小させてから手術ができる場合もあります。

Q進行がんでも有効な薬物治療法はありますか?
A治療法の選択肢が増えています

 胃がんに対する薬物療法は、ここ10~15年で進歩して、切除不能な進行がんや再発がんでも、薬物療法が有効なケースが増えてきました。がん細胞をピンポイントで攻撃し正常細胞への攻撃による副作用を軽減した分子標的薬は、がん細胞の表面にある特定のたんぱく質や遺伝子をターゲットとしていることから、薬が患者さんのがん細胞に効くタイプかどうかを確認し、効果が期待できる場合にだけ投与することが可能です。また、がん細胞が免疫システムにかけるブレーキを解除する薬(免疫チェックポイント阻害薬)も開発され、さまざまながんの治療に使われるようになっています。最新のバイオテクノロジーを駆使した医薬品(バイオ医薬品)の開発によって、治療法の選択肢が広がってきています。そして遺伝子解析の技術も進歩したことで、がんのタイプや患者さんの体質にあった薬剤の選択が可能になってきました。個々の患者さんにあった個別化治療がさらに進んでいくことが期待されています。

Q最新の治療法は誰でも受けられますか?
A医療費を抑える取り組みが進んでいます

 がんの新しい薬が非常に高額であることが話題になり、せっかく治療の選択肢が増えても選べないのではないかと心配する人も少なくないようです。健康保険が適用になっている薬剤であれば高額療養費制度の限度額適用認定証を病院の窓口で提示すれば、自己負担限度額を超える分は支払わなくてよいので、事前に手続きをするといいでしょう。さらに、国民医療費の高騰を防ぐために、先発医薬品と同じ有効成分をもつジェネリック医薬品に加えて、先行バイオ医薬品と同等、同質の品質、安全性、有効性をもち、価格を抑えたバイオシミラー(バイオ後続品)も登場し、少しでも多くの患者さんがアクセスできるような取り組みが進んでいます。

Doctor's Advice

「胃がんの治療法は多方面で進歩しています。定期的な検査を行い、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。がんと診断されても少ない体への負担で適切に対応できる治療が発達していますので、正しい知識をもつことが大切です」

 日本は胃がんの多い国として知られ、胃がんで亡くなる人が少しでも減るようにと早期発見、早期治療を中心にさまざまな取り組みが行われてきました。

 胃がんの原因の半分以上は、ピロリ菌の感染であることがわかっているので、胃がんのリスクを減らすためには、ピロリ菌感染の有無をチェックし、早めに除菌をしておくことをおすすめします。除菌をしても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありませんから、定期的な検診は欠かせません。日本の内視鏡診断技術は高く、また、内視鏡での切除や腹腔鏡手術など体の負担が少ない治療法も進歩しています。恵まれた医療環境を活かすためにも、積極的に検査を受けていただきたいと思います。どんなに治療法が進歩しても、医療機関を受診していただかなくては、新しい治療法を選ぶことができません。定期的な検診を習慣にし、気になる症状があれば、早めに受診するよう心掛けてください。

 インターネットを検索すると、非常に多くの情報が得られますが、中には不正確な情報も少なくありません。国立がん研究センターでは、がんについて患者さんが必要とする情報を提供していますので、ぜひ活用していただければと思います。

国立がんセンターがん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment_option.html

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