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労働生産性

 労働者1人当たり、または労働時間当たりの売り上げやもうけなどの「成果」を示す指標で、生産性が高い会社ほど資源や労働力を無駄遣いせず、効率的に価値の高いモノやサービスを生み出している「生産性が高い」会社とみなすことができます。

 モノ(製品)の生産やサービスの提供といった企業活動は、原材料や労働力を「投入」し、新たな価値を「産出」する作業です。企業活動によって新たに付け加えられた価値を「付加価値」といいます。

 付加価値の計算方法には「控除法」と、「加算法」があります。控除法は、売上高から外部から購入した価値を差し引いて付加価値を計算します。

 付加価値=売上高-外部購入価値

 原材料は通常、他社から購入し、自社が新たに価値を付け加えていないからです。付加価値は企業の売上高から売上原価を差し引いた「粗〈ルビ・あら〉利益(売上総利益)」と同じとみなせます。

 一方、加算法は、付加価値は製造過程で積み上げられていくものだという考え方に基づいて、

 付加価値 = 経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 減価償却費 + 金融費用 + 租税公課

 で計算します。人件費など項目別の費用を算出するため、生産性の向上に向けた課題をつかむことができるメリットがあります。経常利益は、売上原価などを差し引いたものなので、他社からの購入分は除かれています。経常利益を計算する際に除かれてしまった付加価値として認められるべき費用(自社の人件費など)を足し戻していく考え方です。

 自動車部品など150万円分の材料を他社から仕入れて車を作り、250万円で売った自動車メーカーは、控除法で計算すると、車1台につき250万円―150万円=100万円の価値を生んでいることになります。

 この車を1万台作れば付加価値の合計は100万円×1万台=100億円となり、従業員500人で作った場合の労働者1人当たりの労働生産性は100億円÷500人=2000万円となります。また、従業員が100時間働いたとすると、時間当たりの労働生産性は100億円÷(500人×100時間)=20万円となります。

 労働生産性を向上させるには、分子となる付加価値を減らさずに分母となる労働量(人数または労働時間)を減らすか、分母となる労働量を増やさずに分子となる付加価値を増やせばいいことになります。付加価値と労働量を両方とも増やしたり減らしたりして、生産性を上げることもできます。

 具体的には、

1、売上高を維持したまま、投入する原材料や労働量を減らす
2、投入する原材料や労働量を維持したまま、労働者の能力向上や値上げによって売上高を増やす
3、不採算部門の売却や人員削減で投入と産出の両方を減らし、全体の産出は増やす
4、事業の拡大などを進めて原材料も労働量も投入を増やし、売上高を増やす

 手段があるとされています。

 生産年齢人口が減って労働量の投入が先細りになると付加価値も減ってしまいますが、働く人の能力向上やイノベーション(技術革新)によって労働生産性が向上すれば、会社は成長を続けることができ、成果を賃上げという形で労働者に分配する原資も確保できます。逆に労働生産性が向上していない状況で無理に賃上げしてもすぐに原資が底をついてしまい、長続きしません。多くの会社が政府の要請に応えて賃上げに前向きな一方で、従業員にDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応やリスキリング(学び直し)を求めているのはこのためです。

OECD加盟国の労働生産性

 日本全体の労働生産性は、日本全体の付加価値の総計である国内総生産(GDP)を日本の就業者数や総労働時間数で割った数値となります。日本生産性本部によると、日本の就業者 1 人当たりの労働生産性(2022年)は8万5329ドル(833万円*当時の為替レート)で、経済協力開発機構(OECD)加盟 38か国の中では 31 位に低迷しています。この数字は米国(16万715ドル/1568万円)の約半分にとどまり、主要 7か国では最低となっています。

 ちなみに労働生産性が最も高かったのはアイルランド(25万5296ドル/2491万円)で、法人税率などを低く抑えてグーグルやアップルを呼び込んだためとみられます。2 位のノルウェーは主要輸出産品の天然ガス・原油の大幅な価格上昇により輸出額が急拡大したためとみられます。

(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)