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エンプロイアビリティ
働き手個人が持つ「労働市場での価値」から見た就業能力、「雇われる力」のことをいいます。産業構造の変化や技術革新に加えて終身雇用が崩れ、さまざまな就業形態が広がって転職が珍しくなくなると、働き手も自身の市場価値を意識して働く能力を高めていく必要が出てきます。
厚生労働省は2001年に「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書」を公表し、このなかで労働者個人の「雇われる力」を「仕事を進めるのに必要な特定の知識・技能」「協調性や積極性など、仕事を進めるための思考特性や行動特性」「動機、人柄、性格、信念、価値観など、目に見えない個人の属性」という3つの要素に分けています。
3つの要素のうち、3番目の人柄や性格などは容易に変えることはできず、雇う側がいい、悪いと客観的に評価することも適当ではないため、厚労省はエンプロイアビリティの評価基準にすべきではないという見解を示しています。この考え方に従うと、エンプロイアビリティは「知識・技能」や「思考・行動の特性」のように経験や学習を積むことで獲得できる能力ということになります。
具体的にどのような能力を指すのか、厚労省はエンプロイアビリティのチェックシートを公開しています。就職活動期の学生などが自身の強みを見つけて自己PRする時などに活用されているようです。
チェックシートでは、エンプロイアビリティを「就職基礎能力(職業人としての意識)」と「社会人基礎力」に分けています。就職基礎能力には「責任感」「向上心・探求心」「職業意識・勤労観」の3つがあり、社会人基礎力も大きく3つの力に分類され、さらに12の能力に細分化されています。
チェックシートではこれらの項目ごとに設問に答えていくと、それぞれの能力がわかるように作られています。新卒や中途採用の際だけでなく、就業中の従業員の人材評価を行うことで、昇進・昇格や配置転換の判断材料にも使われているようです。
会社は従業員のエンプロイアビリティを高めることで適材適所の配置ができ、労働生産性の向上も期待できます。従業員のリスキリング(学び直し)の一環として研修制度を新設・拡充させたり、キャリア面談に活用したりする会社も増えています。
エンプロイアビリティが高い社員はどの会社でも通用しますから、会社の支援で能力を高めた社員が他社に逃げてしまうというデメリットを指摘する声もあります。しかし、世代交代が進み、能力重視の人事を行う会社には採用を希望する人も増えることも見込めます。日本経済全体で考えても、年功序列の人事体系の中で眠っている有能な人材を活用するには雇用の流動化は避けて通れないとされており、エンプロイアビリティは今後、さらに重視されるようになるでしょう。
(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)