編集委員のキーワード解説 KEYWORD
ウェルビーイング(well-being)
心身ともに「良好な状態」にあることを意味し、「健康」「幸福」と訳されることもあります。世界保健機関(WHO)憲章の前文は「健康」について、「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にもそして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること(日本WHO協会訳)」としており、これがウェルビーイングの定義として引用されています。
ウェルビーイングの状態を保つ社員の生産性が高く、会社との関係(エンゲージメント)の良好なことが分かってきたため、近年では社員の幸福を企業経営の目標のひとつにする「ウェルビーイング経営」が注目されています。
ウェルビーイングの指標としては、アメリカの心理学者マーティン・セリングマンが考案した人が幸福を感じる5つの要素の頭文字をとった「PERMA」が知られています。アメリカのギャラップ社も個人のウェルビーイングを測るための5要素を定義しています。
ウェルビーイングが注目されるようになった背景には、働き方改革に代表される社会の価値観の変化があります。社会全体が「モノの豊かさ」より「心の豊かさ」を優先し、長時間労働の是正や「同一労働同一賃金」、高齢者や女性の就労促進などが進み、会社は従業員の健康を重視するようになっています。コロナ禍でリモートワークが普及し、自分らしい働き方を考え直す人も増えました。政府は2021年にまとめた「成長戦略実行計画」で、「国民がwell-beingを実感できる社会の実現」を掲げています
野村総合研究所が2023年2月、働き盛り世代の25~54歳の就労者1296人に行ったアンケート調査では、「今の仕事に対する満足度が高い人ほど、ふだんの生活を幸せだと感じている割合が高い」ということです。
仕事で認められたり、やりがいや成長を感じたりする「働きがい」を重視する人は今の仕事への満足度が高く、逆に「会社や仕事より自分や家族を優先したい」といった「働きやすさ」を重視する人は仕事への満足度が低い傾向があるという結果が出ています。
従業員のウェルビーイング向上には、仕事の満足度を高めることが効果的で、仕事の満足度を高めるためには、「働きやすさ」より「働きがい」につながる取り組みが重要になるということがわかります。
(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)