編集委員のキーワード解説 KEYWORD

トランプ関税

 トランプ大統領は米国の産業を保護するために輸入品に課す関税を大幅に引き上げる方針を表明しました。この「トランプ関税」のうち、貿易相手国・地域ごとに上乗せすると発表した関税を、トランプ大統領は「相互関税」と呼んでいます。アメリカの貿易相手国がアメリカ製品に関税を課せば、アメリカも相手国の製品に同じ率の関税を課す、つまり「相互に関税を課す」というのが基本的考え方です。

目覚めよJAPAN Podcast「どう対応する?トランプ関税」

 トランプ大統領は昨年の大統領選で、「米国の労働者と農民を不公正貿易から守る」と宣言し、アメリカ製品を輸入する国が高い関税を課している場合に、アメリカも同じ水準まで関税率を引き上げることができる「トランプ互恵通商法」の制定を公約していました。実際には大統領が持つ関税率を決める権限を使って、大統領令で世界のほぼすべての国からの輸入品に高い関税を課すとしています。
 発表された相互関税は、基本的な考え方のように品目ごとに関税率を比べるのではなく、一部の特定商品を除いて国・地域ごとに関税率を上乗せしています。具体的には、すべての貿易相手国に10%の関税を課したうえで、アメリカの貿易赤字が大きい約60か国に対しては、さらに税率を上乗せしています。自動車、鉄鋼、アルミニウムなど特定の品目は相互関税の対象から外されていますが、これらの品目では相互関税とは別に、すべての国・地域に同率の高い関税が課せられます。

トランプ関税のイメージ

 日本はコメなど一部の農産物を除けば関税は低く、品目別に相互関税が発動されても影響は小さい、という見方もありました。しかし、発表された相互関税は、関税以外の要因でアメリカ製品の輸出を阻む非関税障壁についても、それと同等の関税を課す、として、日本はアメリカ製品に46%の関税を課しているので、その半額の24%の関税を課すとしています。

トランプ政権による相互関税の一覧表

 非関税障壁を関税率に換算することなど不可能なはずですが、トランプ政権は関税、非関税を合わせた障壁を、国・地域ごとに「対米貿易赤字額÷輸入額×100÷2」で算出しているようです。2024年のアメリカの対日貿易赤字額は684億ドル、日本からアメリカへの輸出額は1482億ドルでしたから、
684÷1482×100÷2≒24(%)
とされたわけです。46%が半分にされたのは、「関税率を1%引き上げるごとに貿易赤字額は2%減る」という前提があるためといわれますが、この前提にまったく根拠はありません。一方的な関税引き上げに強く反発した中国とアメリカは報復関税の応酬を繰り広げ、もはや相互関税について合理的な算出根拠など二の次になっています。
 そもそも、相互関税は国際貿易ルールで認められたものではなく、世界貿易機関(WTO)協定に違反しています。しかし、貿易ルールに違反した国を裁くWTOは機能不全に陥っており、現時点で相互関税の発動を避けるには、発動が猶予された90日の間にアメリカとの二国間交渉で合意するしか方策がないのが現状です。

(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)