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年金改革

 年金改革関連法が成立し、年金制度の見直しが決まりました。厚生年金の加入者を増やして年金財政を安定させるほかに、「働き控え」を防いで労働力の供給を増やす狙いがあります。

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 公的年金には、原則としてすべての国民が加入する「基礎年金(国民年金)」と、サラリーマンが加入する「厚生年金」があり、今回の年金改革は、段階的に「106万円の壁」をなくして厚生年金の対象を拡大する点が一つのポイントです。
 「106万円の壁」とは、年106万円以上働いてしまうと厚生年金などの社会保険料を給与から天引きされるようになり、逆に収入が減ることから労働時間を減らす「働き控え」をしてしまうという問題です。
 今回の見直しで、月額賃金8万8000円(年収で約106万円)以上なら厚生年金に入るという「収入の要件」を法律の公布から3年以内に撤廃し、勤め先の従業員数が51人以上の会社でないと厚生年金には入れなかった「従業員数の要件」も2035年までに段階的に撤廃することにしました。
 これにより、週20時間以上働くパート労働者らは、学生を除いて、厚生年金に加入することになります。パート労働者は週20時間働いた時点で、会社の規模や収入にかかわらず厚生年金と健康保険の保険料を年間約15万円支払わなければならなくなりますが、厚生年金に加入したことで、将来受け取る年金額は増えます。これらの変更で「106万円の壁」が意識されなくなるほか、厚生年金の加入者が約180万人増える見込みのため、年金財政の安定にもつながるとされています。

厚生年金の加入者が拡大する

 また、一定の収入がある高齢者の「在職老齢年金」では、年金支給を減らす基準額が引き上げられます。今は月給と厚生年金を合わせた額が月50万円を超える人は、超えた分の半額が年金支給額から減額されますが、2026年度からは基準額を62万円とします。働く年金受給者は2022年度末の時点で308万人いて、このうち約50万人の年金が減額されていますが、基準額の引き上げによって約20万人が年金の減額対象から外れます。年金を減額されてまで働くのは嫌だという高齢者の「働き控え」を減らそうというわけです。
 年金財政の安定化のための改革では、高所得者の保険料引き上げが決まりました。年金保険料は月収の18.3%分を加入者と勤務先が折半で負担していますが、月収が65万円(実際の月収は63万5000円以上)になると、いくら増えても本人の保険料は月5万9475円でした。2027年9月から段階的に68万円、1万円、75万円以上の収入区分を新設し、所得が多い人の保険料負担を増やします。
 高所得者の保険料は最大で月9150円上がりますが、保険料を多く納める分、将来受給する年金額は増えます。保険料収入が増えるため年金全体の受給水準も高まります。

高所得者の厚生年金保険料引き上げ

 一方、基礎年金の底上げについては、見直しが先送りされました。
 年金の給付額は年金財政を維持するため、「マクロ経済スライド」と呼ばれる減額措置が取られていますが、財政状況が良い厚生年金はあと数年で減額措置が終わる予定なのに対し、財政状況が悪い基礎年金は20年以上減額措置が続き、最悪の場合、給付水準は今より3割も下がってしまうおそれがあります。
 そこで、基礎年金のみを受け取る自営業者ら「第1号被保険者」や、厚生年金の加入期間が短い傾向にある「就職氷河期世代」などが低年金に陥るのを防ぐため、厚生年金の積立金の一部を基礎年金の積立金に回すことで、基礎年金の給付額の目減りを抑えることが検討されていました。

 厚生年金の加入者は基礎年金にも入っており、積立金の一部が基礎年金に回されても、ほとんどの人の給付額は増えます。しかし、基礎年金の積立金の半分を出している国の負担は増えることになり、その財源の手当てがつかないことなどから、底上げをするかしないかは5年後に判断することになりました

(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)