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猛暑インフレ

 猛暑が続くことでモノやサービスの価格が上がることをいいます。2025年6~8月の国内の平均気温は過去30年の平均より2.36度も高く、農作物の生育不良や家畜の食欲低下、海水温の上昇による養殖魚の大量死などが起きました。供給量の減少に加えて猛暑対策が生産コストを押し上げ、価格上昇が目立っています。
 トマト、かぼちゃ、ピーマンなどの夏野菜では、花が落ちたり実が変形したりする高温障害が発生して流通量が減ったため、価格は例年より2~3割程度高くなりました。24年から続くコメの価格高騰も猛暑が一因と言われています。暑いと米粒の中にでんぷんが十分に蓄積されず、白濁など食用に適さないコメの割合が増えてしまうのです。
 家畜では豚がエサを食べずに生育が悪化し、繁殖が不調で頭数も減ったため、豚肉の卸売価格は半世紀ぶりの高値になりました。鶏肉や鶏卵も、昨冬の鳥インフルエンザ流行に猛暑による生産減が加わって高値が続いています。暑いと乳牛の乳の出が悪くなるため、生乳の生産量も減り、価格上昇の懸念があります。水産物では養殖ブリが海水温の上昇による大量死や生育不良で出荷量が減り、価格上昇が目立っています。

 異常気象は世界的な傾向で、影響は輸入食材にも出ています。欧州では干ばつの影響でオリーブの収穫量が減少し、アフリカでは熱波によるカカオ豆の不作が続いています。ブラジルでも干ばつが続き、コーヒー豆の代表的品種であるアラビカ種の収穫量が落ち込み、これらの産品の輸入価格が上昇しました。
 政府の補助金で電気代の上昇は抑えられましたが、エアコン使用が増えたことで世帯当たりの支出は増えています。エアコンなど冷房機器の購入も増え、家計を圧迫しています。熱中症を警戒して外出を控える傾向も強まっているため、支出が減っている項目もありますが、支出増をカバーすることはできないようです。信用調査会社の帝国データバンクは、25年7~8月の東京都内の住民の支出は、猛暑の影響で1世帯あたり月3512円増えたと推計しています。第一生命経済研究所の柏村祐主席研究員によると、4人家族の一般家庭では月平均の電気代が5000円~1万円、食費は8000円~1万5000円それぞれ高くなり、最大で2万5000円家計の負担が増えると試算しています。

 温暖化が進んで夏の猛暑は今後も続くと見られ、農作物では暑さに強い品種への植え替えや漁期の見直しが課題になりそうです。大雨や竜巻などの自然災害も増加が予想され、企業にも火災保険料の値上がりや物流網の複線化などコスト上昇要因が多く、今後も猛暑インフレは続きそうです。一方でコメは二期作の拡大による生産増も見込まれ、猛暑対策グッズなどは新たな市場が期待できます。猛暑を前向きにとらえることも大切です。

(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)