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石油備蓄放出
米国やイスラエルのイラン攻撃で石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡が事実上封鎖され、石油価格が急上昇しました。幅広い産業で使われているガソリンやナフサなどの石油製品が供給不足になるのを防ぐため、政府は2026年3月16日から石油備蓄の放出を始めました。
中東情勢の悪化を受けて、原油価格は26年3月上旬には一時、1バレル=100ドルを超える水準まで上昇しましたが、備蓄の放出は石油価格の低下ではなく、安定供給の維持を目的としています。
日本の石油備蓄には、<1>国が多くを精製前の原油の状態で保有する「国家備蓄」<2>石油元売りなどの業者が主に石油製品の在庫として保有する「民間備蓄」<3>産油国と協力して日本国内で保有する「産油国共同備蓄」――の3種類があります。26年1月末の備蓄量は計248日分(国家備蓄146日分、民間備蓄96日分、産油国共同備蓄6日分)となっていました。
今回の放出では、まず民間に義務づけている備蓄量を70日分から55日分に短縮して民間備蓄15日分を放出し、3月26日からは国家備蓄の放出も始まりました。1か月(30日)分を随意契約で元売りなどに販売します。産油国共同備蓄も3月中に5日分を放出し、あわせて過去最大の約50日分(約8900万バレル=1420万キロ・リットル)を放出します。
国際エネルギー機関(IEA)に加盟する日本など32の国は、協調して過去最高の4億バレル(約6350万キロ・リットル)の備蓄放出を行うことで合意しています。日本はIEAの協調放出に先行して日本単独で放出を決めました。
日本の石油備蓄の制度は、深刻な石油不足が起きた1973年の第1次石油危機を教訓として75年につくられ、放出は今回が6回目となります。国家備蓄が使われるのは2022年にロシアのウクライナ侵略開始を受けた放出に次いで2回目で、産油国共同備蓄の放出は初めてのことです。今回の放出量は東日本大震災を受けて日本単独で行われた量の1.8倍に達する見込みで、過去最大となります(第2次石油危機での放出は放出量のデータなし)。
日本が輸入する原油の9割超は中東産で、その大部分がホルムズ海峡経由で運ばれています。海峡の事実上の封鎖が長引けば、国内の備蓄はいずれなくなってしまいます。ガソリンについては、政府は補助金を復活させて1リットル=170円を超えないようにする方針ですが、紛争が長期化すれば、補助金の財源も底をつきかねません。政府は中東情勢の安定化に向けた外交努力を急ぐ必要があります。
(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)