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トリプル安
米国のイラン攻撃によるホルムズ海峡の事実上の閉鎖が続き、石油不足による世界経済の先行き不安が高まって、金融市場の動揺が続いています。市場では「トリプル安」を心配する声が増えています。
トリプル安とは、株、債券、通貨が同時に売られ、価値がそろって下がることをいいます。債券の価値が下がると、高い金利をつけないと売れなくなります。直近に発行された10年物の国債の債券市場での金利(流通利回り)は長期金利の代表的な指標になっていますから、国債の価値が下がると長期金利は上昇します。
また、通貨は日本の場合は円となります。1ドルと交換できる円が少なくて済むほど円の価値は高くなりますから、円の数字が小さいほど円高、大きいほど円安ということになります。
株、債券、通貨は株式、債券、為替という別の市場で取引されていますが、値動きは無関係ではありません。通常は「片方が下がればもう片方が上がる」というシーソーのような関係にあります。
株価は変動幅が大きくリスクがありますから、株を売って得た資金は安全資産の国債に向かいやすい傾向があります。株価が下がると債券の価値は上がる(長期金利は下がる)ことが多いわけです。
債券が売られると長期金利は上昇し、その国の銀行にお金を預ければお金を大きく増やせます。金利が低い国の通貨は売られ、外国から資金が集まる金利が高い国の通貨は買われやすくなります。債券安は通貨高(日本なら円高)につながるわけです。
逆に通貨安(日本なら円安)になると、割安で外国に輸出しやすくなるため、輸出企業の収益は改善します。日本には自動車産業をはじめ、輸出でもうけている大企業が多いので、円安になると平均株価は上昇しやすくなります。
それぞれの価格はさまざまな要因で決まるため、シーソーはいつも予想通りの動きをするとは限りませんが、株、債券、通貨がそろって下がることは珍しいわけです。ただ、シーソーの動きはその国の中での通常の資金の動きを説明するものです。その国の経済が大きなショックを受けるようなできごとが起きれば、どうなるでしょう。
その国の経済を急減速させかねない大きなできごとが起きれば、株でも債券でも通貨でも暴落するリスクが高まります。シーソーは壊れ、資金は一斉に国外に逃げ、深刻なトリプル安が進む可能性が高まります。日本でのトリプル安が「日本売り」ともいわれるゆえんです。
トリプル安が急激に進むと、政府や中央銀行による為替介入や財政出動でも株安や金利上昇を制御できなくなり、通貨の暴落が猛威なインフレ(ハイパーインフレ)を引き起こして、通貨も紙切れになってしまうこともあり得ます。先進国がここまでいくことはないでしょうが、「ミニトリプル安」はアジア通貨危機などの際に日本でも起きています。
日本の財政持続性に対する疑念やトランプ関税などに加えて、イラン情勢の不安定化は石油の9割以上を中東に頼る日本にとって、新たに生じた大きなリスク要因といえます。グラフで示した通り、米国のイラン攻撃以降、日本の株、国債、円はともに売られやすくなっており、深刻かつ急激なトリプル安は今後も絶対にないとは言い切れません。金融市場の変調には目配りが必要でしょう。
(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)