広告企画・制作 読売新聞社イノベーション本部
リーダーが語る LEADER
ビジネスとして自然を守る
ネイチャーポジティブの現場
Sponsored by サントリーホールディングス
企業の社会的な責任として取り組みが広がる環境問題への対応。ボランティアではなく、ビジネスの根幹としてとらえる動きがある。サントリーホールディングスは、酒類飲料事業の生命線である「水」の持続可能性を考え、失われた生物の多様性を取り戻す「ネイチャーポジティブ」を進める。その先頭に立ち、全国工場の水源となっている森林を「天然水の森」と位置付けて保全・再生を進めている同社サステナビリティ経営推進本部シニアアドバイザーの山田健氏に話を聞いた。
豊かな土壌で涵養された良質な水
Q天然水の森を始めたのはいつか?
「天然水の森」を始めたのは、2003年の九州熊本工場を稼働するタイミングでした。その少し前から酒類飲料事業における地下水の重要性を調査していたこともあり、事業に欠かせない地下水を守るべく、最初は林野庁さんと、その後、地元自治体さんとも協定を結び、地下水の水源である山の管理を始めました。
熊本県で管理する面積は約420ヘクタール。60年にわたって管理する協定を結びました。20年がたちますが、ようやく我々が管理し始めたころに涵養され始めた地下水が本格的に工場へ届き始めているというイメージです。地下水は、自然の力によって長い年月をかけて育まれています。
山で降った雨は、木々の葉にあたり、しずくとなって地表に落ち、草の葉や落ち葉に受け止められ、少しずつ地中にしみこんでいきます。豊かな土壌には、植物の根がすき間なく張り巡らされており、ミミズなどの土壌動物や微生物が活発に活動して土を耕しています。こうしてスポンジのように隙間が多くなった土が水を地下に誘導し、さらに深い地層へとゆっくりと浸透させていきます。
現在、天然水の森は全国16都府県24か所、1万2000ヘクタールを超える規模に広がっています。JR山手線の内側のおよそ2倍にあたります。
多様な植物、生物が、豊かな土壌を作り、そこで涵養された良質な地下水が、我々のビジネスを支えています。ボランティアでなく、基幹事業だと考えています。
数値目標を掲げて、しっかりと予算を確保して実行していく。
具体的には、2030年に、海外も含めたグループ工場の半数以上で、それぞれの水源となる森林において使用量以上に水を還元できる環境を整備。国内ではすべての工場ごとに実現することを目指しています。あくまで推計にはなりますが、使った分の水を水源となる森が涵養できるようにし、持続性を確保していきます。
Qどうして始めたのでしょうか?
現時点で地下水の質が悪くなったとか、近く悪化する可能性があるということではありません。ただ、将来的に、地下水が悪くなる恐れはある。今から森の多様性を維持していかなければ、手遅れになってしまうという思いが強くありました。
良い水がなければ、ミネラルウォーターやウイスキー、ビールも、なに一つつくることはできません。地下水が悪化すれば、サントリーの事業は、持続していけません。
もっとも、始めた当初は、森と地下水の関係は十分に分かっていませんでした。そこで40人を超える様々な分野の先生方に共同研究をお願いし、どのような整備が地下水のためになるかを解明してきました。その後、ゲットフローズという地下水の流動シミュレーションに出会い、そのモデルに、現地での様々な調査結果を組み込むことで、地下の水の流れを見える化することに成功しつつあります。地形や地質、河川流量や地下水位、湧き水の場所や水質、水齢といった情報です。今でも、日々、研究を重ねています。
生態系を把握し、より多様な森林に誘導
Qどのような活動をしているのでしょうか?
天然水の森で植物や生物の調査をしています。地域ごとの植物、生き物を把握し、失われた生態系をその地域のDNAに近い形で戻していく。それには、どのような木々が生えているのか。どのような鳥や生き物が生息し、どのような状態にあるか知っていなければいけません。
たとえば、オオタカのような猛禽類については生息しているだけでは意味がありません。彼らは強いし寿命が長いので、親鳥が生きていくだけなら、少々荒れた森でも大丈夫です。しかし営巣して子育てするとなると、広々とした環境が健全に保たれている必要があります。子育ての成否を見ることで餌となる生態系が豊富かどうかも感じとることができます。
奥多摩でも、生態系の変化が起きています。シカの存在です。
適正な数のシカは生態系ピラミッドに必要ですが、奥多摩ではこの数年、周辺の森から飢えたシカが移動してきて、森をつくる植物に変化が出ています。かつては、コアジサイやヤマアジサイ、カエデといった草木が豊富にあった場所が、すべて食い荒らされています。地表の植物を食い尽くされると、雨のたびに土壌が流され、雨水が地下に浸透することができなくなります。
多様な植物が生え、そこに微生物が生息し、土を抱えるように根が張り巡らされる環境を保たなければなりません。シカの急増という生態系の変化は、植物の変化を通じ、土壌にも影響をもたらしています。
日々、植物を観察しているのは、森の生態を知り、その生態を守り、失われているものを取り戻すためです。奥多摩では2022年に0.5ヘクタールほどのエリアを複数個所、柵で囲いました。シカの侵入を防ぎ、食害を防ぐことで、一部でも本来の植物を維持できれば、将来鹿が減った時に、鳥や虫がそこから種を運び、森林の再生につながっていく。森を守るためには、生態系の変化を把握していくことが何よりも大事です。
Q今後は?
森の多様性を確保することは、1年や2年でできることではありません。 しかし、手をこまぬいていれば、生態系は崩れ、地下水が悪化していくことは明らかです。
日本は、建築材の確保を目的に、1960年前後から、多くの森林で針葉樹の植樹が行われてきました。しかし、その後、必要な整備が放棄され、荒れ果てたスギ林やヒノキ林が増えています。
ヒノキは、葉が大きく、ヒノキ林の地表は暗くなりがちで、ほかの植物が育ちにくくなります。多様な植物の根がないと、土壌は雨で流されやすくなり、地下水の涵養力は失われていきます。土砂崩れや洪水の一因にもなります。
一度、人の手が入ってしまった森林の生態系を元に戻すのは容易ではありません。しかし、それを放置していては、生態系は崩れていくばかりです。
酒類や飲料を生産するサントリーにとって、水は欠かせない原材料ですが、半導体などでも大量の地下水が必要だと言われているように、製造業も水とは無縁ではありません。
すぐに成果がでるものではありませんが、多くの企業が、ネイチャーポジティブの取り組みに前向きになるよう働きかけていきたいと考えています。
山田 健氏
サントリーホールディングス サステナビリティ経営推進本部シニアアドバイザー。サントリー宣伝部で、酒類や環境などの広告を手掛け、2003年から「天然水の森」の活動を開始。68歳。
読売新聞のプロジェクト「目覚めよJAPAN」が6月27日開催する経済フォーラムでは、カーボンニュートラル時代に向けて、経済成長の潜在力として自然との共生、ネイチャーポジティブを議論します。