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生活実態調査結果
「目覚めよJAPAN」では、プロジェクトの立ち上げにあたり、株式会社クロス・マーケティングに委託して、2023年10月末に全国の20歳から79歳までの男女1万人を対象にした生活実態調査を行いました。豊かさを実感しているか、暮らしで何を負担に感じているか、働きやすい職場に必要なことは何か、地方創生や気候変動、SDGs(持続可能な社会)への考え方などを多岐にわたって調べています。調査結果から浮かび上がる日本の生活者の現状をリポートします。
なお、調査結果の紹介はわかりやすさを優先し、回答数と回答割合の両方か、回答割合のみ紹介しています。回答割合は小数点以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)
「豊かさを実感できない」が4割
「生活の豊かさを実感している」人は「ややそう感じる」を加えても28%にとどまり、「豊かと感じない」「あまり感じない」をあわせた39%より10ポイント以上も低くなっています。
「豊かさを実感する」要因として、経済と労働が大きいと考えられる。「生活が豊かであると感じない」と回答した人は年代が上がるにつれ増加し、40代がピークとなります。
一方で、「生活が豊かだと感じるシーン」として年代が上がるにつれ多様なシーンで回答数が増加しています。「国や政府に期待すること」も年代が上がるにつれて多くなっています。生活の豊かさや政府への期待の少なさといった満足度は、年代が上昇することによって差が拡大していることがわかります。
経済的な豊かさは、子供の教育や住宅購入などで支出が多い若い世代は得にくいというのが一般的でしたが、最近の調査では40~50歳代の世帯で金融資産の保有額が少ない世帯の増加が著しいという結果が出ています。中・高年層で所得格差が拡大してきていることが、豊かさの実感にも影を落としている可能性があります。
こうした状況が定着すれば、将来、経済的に困窮する高齢者が増加することが危惧されます。新NISAの導入などで個人の投資が注目されていますが、「貯蓄から投資へ」の流れが資産格差を拡大させることがないような資産形成支援策が求められることになりそうです。
【趣味や自分の楽しみに豊かさを実感】
生活の豊かさを実感する場面としては、趣味や自分の楽しみを感じた時(4606人=46%)、経済的に豊かだと感じた時(3930人=39%)、身体的な健康を感じた時(3464人=35%)が上位を占めました。
「趣味」は、道具や練習にお金がかかり、時間的余裕が必要です。「身体的な健康」も、働き続けることや旅行することを念頭に置いた活動的な暮らしをしたいという志向の表れとみられ、ともに経済的な豊かさとかなり連動した志向とみることもできます。余裕のある生活が豊かさの指標を左右し、その決定要素として「経済」と「労働」が大きいことが考えられます。
【食費に負担を感じ、特に負担を感じるのは住宅費】
経済面で負担と感じている出費は、食費(2586人=38%)、水道光熱費(2569人=38%)、保険料(2379人=35%)が上位を占めました。食費と水道光熱費は近年の値上がりを反映しているとみられますが、近年値下げされた通信費・携帯電話の通話料金も回答者の31%にあたる2089人が、なお負担に感じています。
さらに「最も」経済的に負担と感じる出費を聞いたところ、住宅ローンや家賃などの住宅費(1115人=17%)、老後資金(838人=12%)、食費(804人=12%)が上位となりました。
【日用品は「品質より価格」変わらず】
日用品や生活必需品を買う際に大切にしていることも、値段の安さ(4838人=48%)とコストパフォーマンスの高さ(4485人=45%)が上位を占め、「使いやすさ」や「品質」という回答を上回っています。物価高で少しでも安いものを、という消費者の志向は根強く、デフレマインドは払しょくされていないことがうかがえます。
住宅費や老後資金は額が大きく、切り詰めることが難しいため、特に負担感が大きいとみられます。日本銀行は春にも現在のマイナス金利を解除し、住宅ローン金利は今後上昇していくとみられる。金利上昇リスクを踏まえずにローンを組めた時代は終わり、これまで以上に生活資金の将来見通しをしっかり立てることが必要になるでしょう。
【働く上での不満は給料の低さがトップ】
働く上での問題点(困っていること)で最も多かったのは、給料の低さ(3187人=32%)で、2位は人間関係(2409人=24%)、3位は健康への影響(1791人=18%)と続いています。満足な点は人間関係(3394人=34%)、給料(3061人=31%)、休みの取りやすさ(2965人=30%)がトップ3でした。
給料については、高いという満足派と安いという不満派がほぼ拮抗しています。物価高で実質賃金が伸び悩む中、満足と答えた人が多いのは意外な感じもしますが、前述した中高年を中心とした格差の拡大を反映しているのかもしれません。生活の豊かさを実感していない人には給料が低いという不満が高くなっています。物価高は賃金格差を実感させる方向に働きますから、今後、こうした傾向がさらに進むおそれもあります。
一方、休みについては、「取りやすい」(2965人=30%)という満足回答が「取りにくい」(1741人=17%)という不満回答を大きく上回っています。労働環境や私生活との両立についても満足と答えた人が多く、働き方改革や労働に対する価値観の変化が進んでいる表れとみることもできます。
【企業にも国にも最低賃金の引き上げを期待】
日本の企業、国・政府に期待することで、ともに最も多かったのが最低賃金の引き上げ(企業に期待する人が4181人=42%、国・政府に期待する人が3857人=39%)という結果になりました。
企業に対しては、労働環境の整備(3485人)、従業員満足度の上昇(3460人)が同率の35%でこれに続き、福利厚生や待遇改善を求める声が、社会貢献(1231人=12%)や株主などへの利益還元(785人=8%)を大きく上回っています。物価高などで生活が苦しくなっていることを受け、ステークホルダー全体への目配りではなく、社員の方を向いて欲しいという願望が示されていると言えるでしょう。
一方、国・政府に対しては賃金のほかに減税(3545人=36%)や社会保障の充実(3462人=35%)を期待する声も高く、暮らしに直結する経済政策への関心が高いことがうかがえます。国・政府に期待することは年代が上がるにつれて多くなっています。負担と給付のあり方は財源論も含め、今後も大きな議論になりそうです。
企業に待遇改善を期待するには慢性化している人手不足に対する対策が求められます。そのために何が必要か聞いたところ、最も多かったのが長時間労働の改善(3139人=31%)でした。
単純に考えると人手不足の状況では長時間労働をしなければならなくなりますが、それでは人手不足自体は解消しません。生産性の向上といった根本的な解決策を取らないと、人は集まらないと考えている人が多いわけです。また、生活の豊かさを実感している人は実感していない人より、人手不足対策への要望が高くなっています。
7割が日本経済の先行きに不安
日本経済に不安を感じるという回答は「やや不安」を合わせると71%に達し、「不安はない」とする回答の7倍にも達しています。年代が上がるにつれて不安が高くなり、先行きに不安を感じている人は、感じていない人より国・政府への期待が大きいという傾向になりました。
「不安」「やや不安」と答えた7130人にそう感じる理由を自由に答えてもらったところ、「物価」「物価高」「上がる」「円安」などのことばが頻繁にみられました。
約半数が「一都三県以外に住みたい」
人口減や高齢化が進む地方の活性化を進めることは日本経済再生の有効な対策のひとつです。コロナ禍を経てテレワークが普及し、地方に住んでも仕事ができる環境が整いつつあるともいわれています。
居住者、非居住者にかかわらず一都三県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)以外への居住について聞いたところ、46%が「住みたい」「住み続けたい」という意向があることがわかりました。一都三県以外への居住意向がない人(30%)を大きく上回っています。
【「物価が安い」「買い物が不便」】
一都三県以外への居住意向がある人の理由は、自然に囲まれた環境で生活したいから(1460人=32%)、物価が安いから(1292人=28%)、故郷で暮らしたいから(1170人=25%)が上位を占めています。
一方、居住意向がない人の理由は、買い物の不便さを感じるから(727人)、公共交通機関が不足しているから(720人)という回答が、ともに24%でトップに並んでいます。利便性を問題とする2項目が、どちらも年代が上がるにつれて増えているのは当然といえるでしょう。特に、60~70歳代の女性は、「公共交通機関が不足しているから」「買い物の不便さを感じるから」「医療・介護への不安があるから」が他の女性年代と比較して高くなっています。
一都三県の居住者と一都三県以外の居住者のどちらも一都三県以外の居住意向が高く、居住地での差はあまり見られません。逆に一都三県の居住者と一都三県以外の居住者で差が大きいのは「故郷で暮らしたいから」「物価が安いから」「自然に囲まれた環境で生活したいから」となっています。
現在の居住地に住んで良かったことを聞いたところ、買い物に便利(3650人=37%)、交通の便が良い(3268人=33%)、治安が良い(3112人=31%)が上位を占めました。利便性に関する回答が年代が上がるにつれて高くなるのは居住意向の回答と同じです。
【地域活性化のためにも賃上げを】
地域を活性化させるために企業や国、政府に期待することを聞いたところ、最低賃金の引き上げ(3867人=39%)が最も多く、インフラ整備(3394人=34%)、出産・子育て支援の充実(2768人=28%)と続いています。当然ながら、最低賃金の低いエリア居住者ほど、最低賃金の引き上げ要望が高いという結果になりました。また、こうした回答はおおむね、年代が上がるにつれて増えています。
人口減少社会に対応した地方の在り方を考える上で、住民の利便性を重視して重要な施設をまとめる「コンパクトシティ」の議論が高まっていますが、「住んでよかったこと」の上位が買い物や交通の利便性だったこととあわせ、調査結果は地方活性化のカギに利便性の向上があることを浮き彫りにしています。
約7割が「気候変動が暮らしに影響」
気候変動が日々の生活に影響を与えていると感じる人、ややそう感じる人はあわせて59%と、「感じない」「あまり感じない」(計15%)の3倍以上に達しています。
ただ、社会に貢献することを意識しているという回答は「やや意識している」をあわせても29%にとどまっています。社会貢献への意識は若者ほど高いイメージがありますが、調査結果によると、年代が上がるにつれて貢献への意識は上昇しています。
気候変動対策として取り組んでいることでは、エコバックの利用(5547人=56%)、節電(4763人=48%)、節水(4059人=41%)が上位を占めました。年代が上がるにつれて対策に取り組む割合は高くなり、生活の豊かさを実感している人で、気候変動が日々の生活に影響を与えていると感じる方は72%に達し、豊かさを実感していない人より気候変動対策に取り組んでいる割合が高くなっています。
【成長重視派がSDGs重視派を上回る】
日本企業に今後、企業成長とSDGsへの取り組みのどちらを優先してほしいか聞いたところ、「ややそう思う」を加えた企業成長優先派は31%、SDGs優先派は18%でした。商品やサービスの利用や購入、投資の際に気候変動対策やSDGsに積極的な企業を重視している人は「やや重視している」をあわせて25%、重視していない人は「あまり重視していない」をあわせて35%となり、成長重視派が上回るという結果になりました。
年代が上がるにつれて企業の気候変動対策やSDGsへの姿勢を重視するようになり、生活の豊かさを感じている人の方が気候変動やSDGsへの意識が高くなっています。生活を豊かにするには経済活動の活性化が必要ですが、経済活動の活性化は環境や社会にはマイナスになる、と考えがちです。
しかし、気候変動やSDGsは新たな成長のエンジンになり得るといわれています。調査結果を踏まえれば、回り道ではあっても、むしろ経済を活性化させて豊かさを共有した方が気候変動やSDGsにはプラスになるのかもしれません。
「日本に期待が持てる」2割に届かず
これからの日本に「期待を持てる」と「やや期待を持てる」という回答は計16%しかありませんでした。逆に「期待を持てない」と「あまり期待を持てない」という回答は半数近い46%にのぼり、経済以外の分野でも日本の将来に対する期待がしぼんでいることがわかります。
生活の豊かさを実感していない人は、豊かさを実感している人より、日本に期待を持てないと考える傾向があります。
物価高や実質賃金の伸び悩みといった経済課題に加えて、日本は人口減や高齢化、地方の衰退といった構造的な問題を抱えています。調査結果から見えてきたのは、そうした問題の根深さを認識しつつ、暮らしの余裕を失っている生活者の姿でした。将来への不安をなくし、豊かさを実感できるにはどうしたらいいか、日本経済を支える働き手として、消費を担う生活者として、処方箋を見つけるために知恵を出し合うことが必要です。